5分で分かった気になる、11月のアキバ事情:11月のアキバは、GeForce GTX 580カードや3TバイトHDDといった大物パーツが次々と登場して賑わっていたが、月末には老舗店舗の廃業という衝撃も待っていた。
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先月登場したAMDの次世代GPU「Radeon HD 6800」シリーズに引き続き、NVIDIAからも新GPUが登場した。12月10日に発売されたのは、最上位GPU「GeForce GTX 580」を搭載したグラフィックスカードで、複数のパーツベンダーのモデルが一斉に店頭に並んだ。価格は5万円前後から6万5000円だ。
GeForce GTX 580は、400ファミリーと同じ製造プロセスを採用しており、従来の最上位だったGTX 480よりも「性能が1~2割増しになって、消費電力は下がっています」(フェイス秋葉原本店)という。「劇的な技術や性能アップはありませんが、価格もそこまで高くないので良心的なラインアップだと思いますよ。発熱の低下も手伝って、リファレンスのファンも静かになっていますから。いわば“GTX 485”のようなこなれたGPUといえます」(同)と、ショップの反応は上々だ。
その優秀さから、発売当初は入手困難な状況が続くと予想された。TSUKUMO eX.は「GeForceで最強というのは間違いないですから、ハイスペック志向のユーザーに売れています。各社のカードが一斉に入荷しましたが、それぞれの数は少ないので、すぐに売り切れると思われます。再入荷は12月に入ってからでしょうね」と話していた。
しかし、発売直後の好調ぶりは半月を待たずに落ち着きをみせ、月末時点でもメーカーにこだわらなければ、アキバを回って複数のモデルが検討できるという状況になっている。T-ZONE.PC DIY SHOPは「意外と伸びなかったですね。まあ、FF14発売前にハイエンド系カードがたくさん出たので、そこでニーズがある程度満たされた感はあります。とはいえ、悪いGPUではないので、今後も安定した需要があるとは思います」と語った。
●HDDは3Tバイトの時代に突入!
GeForce GTX 580と同時期に話題を集めたのは、ウエスタンデジタルから登場した3TバイトのSATA HDD「WD Caviar Green WD30EZRS」だ。2009年2月に2TバイトHDDが登場して以来、初めてHDDの最大容量を更新。8000円以下の2TバイトHDDが好調に売れるなか、2万3000円から2万7000円の価格で登場し、まずまずの売れ行きをみせている。
ただし、3TバイトHDDの容量をフルに利用するには、Windows 7/VistaでGPTディスクに設定する必要がある。Windows XP以前はGPTに非対応なので、XPマシンからはLAN上で見えないボリュームとなってしまう。また、GPTディスクをブートドライブにするには、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)に対応したマザーボードが必須という条件も加わる。GPTに設定しない場合は、どのOSであれ、従来方式の限界値である2.19Tバイトまでしか認識されない。
そうした難易度の高さもコアな自作ユーザーを刺激したようで、ツートップ秋葉原本店は「自ら人柱になってチャレンジしようという方が率先して買われていきました。確かに、近い将来誰もがぶつかる可能性があるので、“人柱”のしがいがあるのかもしれません」と人気の理由を推測していた。
ウエスタンデジタルも障壁を少しでも下げるべく、月末に専用コントローラー搭載のPCI Expressカードを付属した「WD30EZRSDTL」を投入している。もとのWD30EZRSが半月で2~3000円値を下げたこともあり、初登場時から2万6000円以下で出回った。
一方、日立GSTからも月半ばに3TバイトHDD「Deskstar 7K3000 HDS723030ALA640」が登場した。SATA 3.0に対応したドライブで、独自フォーマットにより、2.19Tバイトまでながら出荷時の状態でもWindows XPで利用できるといった特徴を備える。価格は2万1000円前後から2万5000円のあいだで、こちらもコアな自作層を中心に売れているそうだ。
●コンテンツ入りHDDやBDXL対応のBDドライブなど、ドライブ類の進化系がお目見え
3TバイトHDD以外にも、11月はドライブ類の新製品に目玉が多かった。変り種として注目されたのは、後半に登場したバッファローの2つの外付けHDDだ。1Tバイトの据え置きモデル「HD-PCT500U2/HPX6」と500Gバイトのポータブルタイプ「HD-LB1.0TU2/HPX6」で、価格はともに1万3000円弱。
2モデルとも、50Gバイトの容量を使って『ハリー・ホッター』シリーズ6作のSD映像を収納しており、PCでライセンス認証を済ますと視聴できるようになる。TSUKUMO eX.は「動画コンテンツ入りのHDDというのは将来性を感じますね。私としてはガンダム全シリーズを収録したモデルが出たらうれしいです。権利関係がクリアできたら、絶対ヒットすると思うんですよ」と商品自体とその戦略に期待を寄せていた。
これと同じタイミングで、バッファローからは3~4層メディアに対応する次世代Blu-ray Disc規格「BDXL」に対応したドライブも登場している。その1週間後には、パイオニアからもBDXL対応の「BDR-206MBK」が3万円以下の価格でデビューし、話題を呼んだ。BDXL対応レコーダーはシャープやパナソニックから夏以降にリリースされているが、PC向けの単体ドライブではこれらが初めてだ。なお、BDXLメディアは3層式の1回書き込みメディアがすでに5000円弱で出回っている。容量は100Gバイトだ。フェイス秋葉原本店は「1クール分のドラマを無圧縮で1枚にまとめられるので、欲しい人には待望のドライブといえるでしょう。ただ、大容量HDDの低価格化が著しいので、一般受けはまだ先かなと思います」と話していた。
SSDはPCI Express接続の高速モデルが注目を集めた。月半ばからドスパラ秋葉原本店で受注を受け付けているのは、PhotoFastのPCI Express x8型SSD「GM-PowerDrive-LSI PCIe SSD」。転送速度はリード最大1400Mバイト/秒、ライト最大1500Mバイト/秒で、ラインアップは14万8000円の240Gバイトモデルと、22万6000円の480Gバイトモデル、37万5000円の960Gバイトモデルの3種類となる。
さらに月後半には、OCZのPCI Express x4接続SSDの新シリーズ「RevoDrive X2」も登場した。100Gバイトと160Gバイト、240Gバイトの3種類が出回っており、240Gバイトモデルはリード最大740Mバイト/秒、ライト最大720Mバイト/秒を実現している。価格は順に5万5000円弱、6万5000円弱、8万円弱だ。
ドスパラ秋葉原本店は「昨年PCI Express接続のSSDが登場したときは、完成度の低さもあってキワモノ的な位置づけで見られていましたが、1年かけてノウハウが磨かれて、現行モデルは実用的な選択肢として人気を得ていますね。とくにOCZのモデルは比較的購入しやすい価格帯なので、一般的な浸透度も高いと思います。PhotoFastはハイエンドを目指す人向けですね」と語る。
●11周年を迎えたT-ZONE.PC DIY SHOPに突然の幕……
11月は電気街全体に大きな変化もあった。街の顔ともいえるJR秋葉原駅電気街口の駅ビルは、2006年末にアキハバラデパートが閉店してから工事が続いていたが、11月19日、新たな駅ビル内施設「アトレ秋葉原1」がオープンした。アキハバラデパートのような「いかにもアキバ」といった風合いでなく、男女ともに楽しめるような店舗が多く入っており、秋葉原駅昭和通り口のようなクセのないカラーで街を彩っている。
そんなはなやかな駅前の変化とは対照的に、PCパーツショップ密集エリアでは、11周年を迎えたばかりの老舗ショップ「T-ZONE.PC DIY SHOP」が月末に突然閉店するという出来事があった。同店を運営する企業はT-ZONEストラテジィだが、その親会社のMAGねっとホールディングスが11月29日に同社の事業をすべて廃止すると発表。その翌日の30日以降、店舗のシャッターは降りたままで、同系列のオンラインショップもトップページに閉店の案内が掲げられている。
MAGねっとホールディングスによると、現在の自作PC市場の状況で一店舗経営するのが困難になったというのが撤退の理由だ。自作PCパーツのブームが落ちつき、ライバル店との過当競争が頻発する状況になると、大量入荷によるスケールメリットが得られにくい小規模経営の店舗に不利な状況になる。差別化のために他店にない品物を扱うにも、売り場のスペースに余裕がない。そうした厳しさと展望のなさが要因というわけだ。
実際、10月以降は「資本が足りなくなって仕入れができなくなっていると小耳に挟みました」(あるPCパーツショップ)と、苦しい台所事情に関するウワザが街に流れていたという。その一方で、「親会社に税務調査が入って6億円近い追徴税金が発生したんですよ。それで企業の体力が失われて、煽りを食ったともいえますよね」(別のショップ)との声も聞かれ、ライバル店のスタッフからはT-ZONEを同情するコメントが多く寄せられていた。
T-ZONE.PC DIY SHOPの資産は、ドスパラを運営するサードウェーブに譲渡される。その条件が確定するのは12月以内の予定で、年明けからは新たなPCパーツショップとして生まれ変わる計画が進められるという。仮称は「ドスパラ PCパーツ館」だ。
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先月登場したAMDの次世代GPU「Radeon HD 6800」シリーズに引き続き、NVIDIAからも新GPUが登場した。12月10日に発売されたのは、最上位GPU「GeForce GTX 580」を搭載したグラフィックスカードで、複数のパーツベンダーのモデルが一斉に店頭に並んだ。価格は5万円前後から6万5000円だ。
GeForce GTX 580は、400ファミリーと同じ製造プロセスを採用しており、従来の最上位だったGTX 480よりも「性能が1~2割増しになって、消費電力は下がっています」(フェイス秋葉原本店)という。「劇的な技術や性能アップはありませんが、価格もそこまで高くないので良心的なラインアップだと思いますよ。発熱の低下も手伝って、リファレンスのファンも静かになっていますから。いわば“GTX 485”のようなこなれたGPUといえます」(同)と、ショップの反応は上々だ。
その優秀さから、発売当初は入手困難な状況が続くと予想された。TSUKUMO eX.は「GeForceで最強というのは間違いないですから、ハイスペック志向のユーザーに売れています。各社のカードが一斉に入荷しましたが、それぞれの数は少ないので、すぐに売り切れると思われます。再入荷は12月に入ってからでしょうね」と話していた。
しかし、発売直後の好調ぶりは半月を待たずに落ち着きをみせ、月末時点でもメーカーにこだわらなければ、アキバを回って複数のモデルが検討できるという状況になっている。T-ZONE.PC DIY SHOPは「意外と伸びなかったですね。まあ、FF14発売前にハイエンド系カードがたくさん出たので、そこでニーズがある程度満たされた感はあります。とはいえ、悪いGPUではないので、今後も安定した需要があるとは思います」と語った。
●HDDは3Tバイトの時代に突入!
GeForce GTX 580と同時期に話題を集めたのは、ウエスタンデジタルから登場した3TバイトのSATA HDD「WD Caviar Green WD30EZRS」だ。2009年2月に2TバイトHDDが登場して以来、初めてHDDの最大容量を更新。8000円以下の2TバイトHDDが好調に売れるなか、2万3000円から2万7000円の価格で登場し、まずまずの売れ行きをみせている。
ただし、3TバイトHDDの容量をフルに利用するには、Windows 7/VistaでGPTディスクに設定する必要がある。Windows XP以前はGPTに非対応なので、XPマシンからはLAN上で見えないボリュームとなってしまう。また、GPTディスクをブートドライブにするには、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)に対応したマザーボードが必須という条件も加わる。GPTに設定しない場合は、どのOSであれ、従来方式の限界値である2.19Tバイトまでしか認識されない。
そうした難易度の高さもコアな自作ユーザーを刺激したようで、ツートップ秋葉原本店は「自ら人柱になってチャレンジしようという方が率先して買われていきました。確かに、近い将来誰もがぶつかる可能性があるので、“人柱”のしがいがあるのかもしれません」と人気の理由を推測していた。
ウエスタンデジタルも障壁を少しでも下げるべく、月末に専用コントローラー搭載のPCI Expressカードを付属した「WD30EZRSDTL」を投入している。もとのWD30EZRSが半月で2~3000円値を下げたこともあり、初登場時から2万6000円以下で出回った。
一方、日立GSTからも月半ばに3TバイトHDD「Deskstar 7K3000 HDS723030ALA640」が登場した。SATA 3.0に対応したドライブで、独自フォーマットにより、2.19Tバイトまでながら出荷時の状態でもWindows XPで利用できるといった特徴を備える。価格は2万1000円前後から2万5000円のあいだで、こちらもコアな自作層を中心に売れているそうだ。
●コンテンツ入りHDDやBDXL対応のBDドライブなど、ドライブ類の進化系がお目見え
3TバイトHDD以外にも、11月はドライブ類の新製品に目玉が多かった。変り種として注目されたのは、後半に登場したバッファローの2つの外付けHDDだ。1Tバイトの据え置きモデル「HD-PCT500U2/HPX6」と500Gバイトのポータブルタイプ「HD-LB1.0TU2/HPX6」で、価格はともに1万3000円弱。
2モデルとも、50Gバイトの容量を使って『ハリー・ホッター』シリーズ6作のSD映像を収納しており、PCでライセンス認証を済ますと視聴できるようになる。TSUKUMO eX.は「動画コンテンツ入りのHDDというのは将来性を感じますね。私としてはガンダム全シリーズを収録したモデルが出たらうれしいです。権利関係がクリアできたら、絶対ヒットすると思うんですよ」と商品自体とその戦略に期待を寄せていた。
これと同じタイミングで、バッファローからは3~4層メディアに対応する次世代Blu-ray Disc規格「BDXL」に対応したドライブも登場している。その1週間後には、パイオニアからもBDXL対応の「BDR-206MBK」が3万円以下の価格でデビューし、話題を呼んだ。BDXL対応レコーダーはシャープやパナソニックから夏以降にリリースされているが、PC向けの単体ドライブではこれらが初めてだ。なお、BDXLメディアは3層式の1回書き込みメディアがすでに5000円弱で出回っている。容量は100Gバイトだ。フェイス秋葉原本店は「1クール分のドラマを無圧縮で1枚にまとめられるので、欲しい人には待望のドライブといえるでしょう。ただ、大容量HDDの低価格化が著しいので、一般受けはまだ先かなと思います」と話していた。
SSDはPCI Express接続の高速モデルが注目を集めた。月半ばからドスパラ秋葉原本店で受注を受け付けているのは、PhotoFastのPCI Express x8型SSD「GM-PowerDrive-LSI PCIe SSD」。転送速度はリード最大1400Mバイト/秒、ライト最大1500Mバイト/秒で、ラインアップは14万8000円の240Gバイトモデルと、22万6000円の480Gバイトモデル、37万5000円の960Gバイトモデルの3種類となる。
さらに月後半には、OCZのPCI Express x4接続SSDの新シリーズ「RevoDrive X2」も登場した。100Gバイトと160Gバイト、240Gバイトの3種類が出回っており、240Gバイトモデルはリード最大740Mバイト/秒、ライト最大720Mバイト/秒を実現している。価格は順に5万5000円弱、6万5000円弱、8万円弱だ。
ドスパラ秋葉原本店は「昨年PCI Express接続のSSDが登場したときは、完成度の低さもあってキワモノ的な位置づけで見られていましたが、1年かけてノウハウが磨かれて、現行モデルは実用的な選択肢として人気を得ていますね。とくにOCZのモデルは比較的購入しやすい価格帯なので、一般的な浸透度も高いと思います。PhotoFastはハイエンドを目指す人向けですね」と語る。
●11周年を迎えたT-ZONE.PC DIY SHOPに突然の幕……
11月は電気街全体に大きな変化もあった。街の顔ともいえるJR秋葉原駅電気街口の駅ビルは、2006年末にアキハバラデパートが閉店してから工事が続いていたが、11月19日、新たな駅ビル内施設「アトレ秋葉原1」がオープンした。アキハバラデパートのような「いかにもアキバ」といった風合いでなく、男女ともに楽しめるような店舗が多く入っており、秋葉原駅昭和通り口のようなクセのないカラーで街を彩っている。
そんなはなやかな駅前の変化とは対照的に、PCパーツショップ密集エリアでは、11周年を迎えたばかりの老舗ショップ「T-ZONE.PC DIY SHOP」が月末に突然閉店するという出来事があった。同店を運営する企業はT-ZONEストラテジィだが、その親会社のMAGねっとホールディングスが11月29日に同社の事業をすべて廃止すると発表。その翌日の30日以降、店舗のシャッターは降りたままで、同系列のオンラインショップもトップページに閉店の案内が掲げられている。
MAGねっとホールディングスによると、現在の自作PC市場の状況で一店舗経営するのが困難になったというのが撤退の理由だ。自作PCパーツのブームが落ちつき、ライバル店との過当競争が頻発する状況になると、大量入荷によるスケールメリットが得られにくい小規模経営の店舗に不利な状況になる。差別化のために他店にない品物を扱うにも、売り場のスペースに余裕がない。そうした厳しさと展望のなさが要因というわけだ。
実際、10月以降は「資本が足りなくなって仕入れができなくなっていると小耳に挟みました」(あるPCパーツショップ)と、苦しい台所事情に関するウワザが街に流れていたという。その一方で、「親会社に税務調査が入って6億円近い追徴税金が発生したんですよ。それで企業の体力が失われて、煽りを食ったともいえますよね」(別のショップ)との声も聞かれ、ライバル店のスタッフからはT-ZONEを同情するコメントが多く寄せられていた。
T-ZONE.PC DIY SHOPの資産は、ドスパラを運営するサードウェーブに譲渡される。その条件が確定するのは12月以内の予定で、年明けからは新たなPCパーツショップとして生まれ変わる計画が進められるという。仮称は「ドスパラ PCパーツ館」だ。
【関連記事】
「この未来はアリじゃないですか?」――“ハリポタ”入り外付けHDDが登場
「この“人柱”は大勢の役に立ちそう」――3TバイトHDDが登場!
「前兆はあった。でも……」T・ZONEの廃業に周辺ショップは落胆
アキバのショップの反応は:「もう1つも消えて欲しくないのに」――BLESS閉店で
“ツクモショック”で消えたアキバ電気街の楽観視