宮城の作家希望

作品など

29、男の名はアシ

2020-10-22 12:01:00 | 小説
アカネ達は夕食の後、森で会った魔法使いアシと旅の話しをしていた。部屋の壁にはアカネの感情に合わせて花々が咲き乱れる。またミャーからは癒しの力が溢れている。更には空間おも包み込む力を感じた。

だからなのか彼の口は軽かった。
『実を言うと、貴女方の事は以前から知っていてお話がしたかったのです』
アカネは『どう思う』と神獣に問いかけた。
『聞いてあげたら、その気なんでしょ』

アシはアカネの笑みを受け語り出した。
彼がナラの王子ジラートの側近で、その王子が今でもグランデシアの王女ローレルロールを亡くなった今でも愛していて新たな婚姻に消極的なのだと。

話しを聞くうちに部屋の花がトゲのある野薔薇に変わった。
『人の心を変える事はしません』
アカネはキッパリと断った。

『しかし、このままだとナラ王はグランデシアに戦争を仕掛けるかもしれません』
ナラの王は王子の心変わりをグランデシア王女のせいだと思っている。

『戦争か面白いね、いっそ滅んでしまえば、、』
神獣は言葉を止めたアカネの感情を感じ。
『分かりました行きましょう』
アカネは応じる返事をしたが部屋の薔薇は一層鋭いトゲに変わっていた。

28、思惑

2020-10-21 13:50:00 | 小説
こちらは時空間で何やらララは難しそうな感情をあらわにしていた。
『さてどうしたものか』
様々な空間が繋がり人や物が流れ込んでいた。
立場上阻止するのが仕事だが心さんには命を救われた過去がある。恩人の意思に背く事はしたくない。
まして今の事態は見た所自然現象に見える、勘ぐれば、これも心さんの計画の内なのかも知れないが。

ララは見逃す事に決めていた。
『その気なら、全てを無に返すことも可能な筈の力を持つ心さんなのだから気が変わらない事を祈るはかりだ』『もしかしたら本当に事態が変わるかも』
言いかけた言葉を飲み込んだ。あたりに気配を探るが何もない様だ。

一方のエレガ達は沈黙の森を抜け街の宿で休んでいた。
エレガは1人外に出て考えていた。
沈黙の森での現象をアカネは魔法が使えない筈なのに色々な物をしかも無意識にだ。
エレガ自身を道を探ろうと魔力を使ったが一向に魔力は動かない。
森を出られたのは旅人と出会ったからだ。

その旅人も同じ宿に泊まってアカネ達と話をしている。黒いローブを纏った魔法使いの様である。

27、狭間と空間と黄泉と

2020-10-20 11:00:00 | 小説
闇の中でエレナレナは途方に暮れていた。
『聖女が亡くなった、体が世界に食われた?一体どうなっているの!』

『私は白銀だ実わ私もこの空間に閉じ込められている君はまだ幸運だよ姿が残っている私は魂だけで姿がない、何の慰めにもならないが』

白銀と名乗った声は知っている事を教えてくれた。
ここが魂の通り道だと言う事を
『聖女も通ったよ、だから私もいずれ出られると思ったのだが未だに出られない、だから必ず出られる保証はない』
白銀はそう言葉を閉じた。

エレナレナは見た。リンゴやケーキが現れて消えた。

再び沈黙の森
歩き疲れリンゴでも食べようと近くの木からリンゴをもぎ取った。
『ミャーも食べる?』
『アタシにも頂戴』

『おい、それどうした』
慌ててエレガが尋ねる、この空間には存在しない筈と言うが、エレガの手にも甘いリンゴの実が、
次の瞬間にはアカネの手にケーキも有った。

『それは』
『だってお腹空いて!』
アカネは申し訳なさそうに謝った。


26、聖女の言葉と沈黙の森

2020-10-19 15:21:00 | 小説
ーー貴女なら出来る自分を信じてーー
それが大聖女様の最後の言葉だった。
誰からも心を閉ざしたエレガに温かな心でそう呼びかけた。だがその姿はエレガ以外には見た者が居ない。

だから、夢かもしれないと思っていたがあの時感じた同じ感覚の温かな心を、この世界に大聖女様が現れた時に感じた。
ただ違いもあった少し冷たい感覚がした。
それでも力強く熱い意志を感じた。

『大聖女様だって誰だい』
神獣がアカネの心に囁いた。
アカネをテレパシーで心さんの事だと答えたが
『聞かない名だね』『巫女なのかい?』
『?』
アカネにも答えられない。

それぞれの世界が違い噛み合わない。
『よく分からないけどアンタ良いヒトだから力になるよアタシも相棒とはぐれて困ってたんだよ良かったよよろしくね』

『先程から魔物に出会っても襲われないのは、このペンダントのお陰なのか?』
エレガはペンダントを見つめて呟いた。
これは店の店主に勧められた物だった。
『あの森に行くならこれが一番』だと

その効果は確かな物であった。
魔力を失わないばかりか魔物にも襲われないと言うオマケ付きである。
『ねえもう一度あのお店に行ってくれない確かめたい事があるから』
アカネはエレガに神獣の言葉を伝え店に戻る事にした。

だが道が分からない。道を戻った筈なのに一向に森の外に出られない。

25、杖の力

2020-10-18 12:54:00 | 小説
エレガ達は海洋国ナラの沈黙の森近くの街で魔力保存用のペンダントを買い身に付け森へと向かった。その頃にはアカネの怒りも収まりアクセサリーに夢中になっていた。

ミャーは今も猫と遊んでいる。猫は精神の状態で姿が半透明なのだが、他の人には見えないらしく誰も不思議に思わない。
アカネの杖が微かに光っている。

周りの植物が少し元気になった。誰も気づかないが。
暫く歩くと森の入り口にーー用の無き者近づくなーーと看板が立っている。
『普通に森ね』アカネは感想を漏らした。
『確かに看板無ければ気付かない』エレガも言う。

『ここで魔石の採掘がされている』
アカネの心に声が響いた。その声は
あの半透明な猫からだった猫がアカネを見ている。
『神獣ともあろう者が罠に掛かって人間に助けられるとは困ったものだね、この姿は目立たない様にね。だから巫女である貴女達しか見えていないよ。それと』

ガサ
何かが茂みの中で動いた。
それは人型のロボットらしきものがこちらに向かって来た。
『近くで採掘してる様だね、警備兵だよ』

エレガは光の壁を作るが崩壊した。
アカネも火球を放ったが消えてしまう。
『ここはそう言う場所なんだよ。だけど貴女の杖は特別製かい使えそうだね、そのペンダントと同化してごらん』

言われるまま同化させると杖は剣の形に変わった。それを突き刺せばロボットは動かなくなった。
茂みの奥では採掘用の機械が岩場から岩石を切り出していた。
ナラではこうして魔石を掘り出しているらしい。

アカネが再び見た時には元の杖に戻っていた。
『大聖女様の力を感じる、この森で使えるとは流石だ』
エレガは感心しまくりで語る。