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翻訳実践・批評ゼミ

翻訳しつつ、翻訳について考える。 ――ゼミ活動記録

書くことは得意ではないので。

2021年05月16日 | ブログ

みなさん、こんばんは。4年の米倉伸哉です。4年生のトップバッターです。
自分にも2周目が回ってくるくらいには、このゼミブログも4年生のみんなで盛り上げていきたいものですが、3年生の佐野さんが投稿された2週間後にこうして投稿文を練っている(というよりは垂れ流している)私が言えることはもはや何もありません。南無。

(20分後)

20分間、何を書いていいのか分からず呆然としていたくらいには、何も思いつくことはないのですが、そうすると、もともと何かを読んだり書いたりすることくらい苦手なことはなかった、ということを思い出しました。

それなのに、それなのに、僕は文化構想学部なんてところに来てしまって、文芸・ジャーナリズム論系なんてところに来てしまって(どちらも第一志望)、毎日、大変だなあ…と思いながら読んだり書いたりしています。毎日授業に出て、演習を3つ取って、読書会にも出て、一度投げ出した第二外国語を一から学び直しているのは、それが楽しいからなのですが、はじめから楽しかったわけではありません。

もともと僕は社会学やジャーナリズム・スタディーズに興味があって大学に入学したので、文学への関心は限りなく0に近い状態でした。とはいえ、関心分野の勉強を真面目にやっていたかと思うと、まったくそういうわけでもなく、サークルや寮の人たちと遊んでばかりいたので、文字数を稼ぐだけのレポートを連発し、二外の成績にはCCCBが並び、2年前期(いちばん堕落していました)には奨学金が消え(今期復活)、授業以外ではほとんど本も読みませんでした(下手に単位だけは取っていたところがさらにダメ)。
授業でも自分の理解が及ばぬ概念に遭遇しては、すぐに投げ出し、「こんなものは自分にはできない」と思っていました。文ジャに進級してからもほとんど演習を取らなかったので、ほかの学生や先生方の考えにじかに触れる機会もないまま、忌避感だけが募りました(悪循環)。

*  *  *

こうして読み書きすることが極度に嫌いになったわけですが、今こうしてゼミの末席を汚し、大学院に行きたいと思えるようになったのには、(いま思えば)さまざまなきっかけがあったのだと思います。
ひとつには、一年生のときに授業を取った伊藤先生や江田先生に詩の魅力をおしえていただいたこと、奥間先生の選択基礎演習で資料調査の面白さを学んだこと、李成市先生の朝鮮史の授業を取ったのを機に韓国文学に興味を持ったことなど…当時おぼえた「ほかのことは苦手だけど、これはなんとなく楽しい」という感覚。そういう感覚は、(それを経験せずに大学を卒業する人がたくさんいることを知った今となっては)とても得がたいものだったのだ気付きました。

もうひとつには、「ワケワカメ…」のまま読んでいた本が一年経ってほかの「ワケワカメ」と繋がったときの衝撃です。柄谷行人という人の『日本近代文学の起源』を、みんな読んでいたという理由で2年生(?)の時に読み、「ワケワカメだなぁ」と思ったわけですが、先生にすすめられて読んだ、サイード『オリエンタリズム』やアンダーソン『想像の共同体』を読んだあと、改めて手に取ったときには、頭をバットで殴られたような衝撃を受けました。「ワケワカメ」同士が繋がってすぐに「わかった!」となるわけでもないですが、「ワケワカメ」の広大な地図の中に、少しだけ自信を持って旗を立てるような感覚が湧きました。

*  *  *

文芸作品(じゃなくてもいいんですが)を読んでいると、その文章の書かれたコンテクストなど完全に飛び越えて、脳裏に焼き付くことばがあります。「私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。」(太宰治『斜陽』)とかとか。僕にとってのそれは、盛岡の歌人・くどうれいんさんの「人生はドラマではないが、シーンは急に来る。」(『うたうおばけ』)です。大学生活の中で得た学びや思い出には、今となっては「ドラマ」として語れてしまうものもありますが、その当時はなんとも思っていなかったものがほとんどです。ただ、ときどき来る「シーン」がきっかけになって人生は進んでいくのかなと思います。

大学生活において、そういう「シーン」にうまく巡り会えたことは、「ほかのことは苦手だけど、これはなんとなく楽しい」という、ぼんやりとした感覚を大切にできたからだと思います。明確に「好き」と思えるもの以外にも、自分の中に余白を用意することは、「シーン」に巡り会うためには必要かもしれません。早稲田大学には、たくさんの蔵書や、親身になって相談に乗ってくれる先生方、想像もつかないくらい勉強している学生たちがいます。私も、残された貴重な時間で、できる限り遊び尽くしたいと思います。

*  *  *

写真は鴨川でシャボン玉を吹いている私です。お納めください。

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