渡辺浩之のブログ:魂のストラテジー

この世界に漂い、けれども、決して流されないために

第二の零戦:ルネサスの破綻と世界市場への予感

2012年05月23日 10時44分01秒 | ビジネス


半導体大手のルネサスが、
経営に行き詰っています。

この3月は乗り切ったが、
6月には資金が底を尽くでしょう。
遅くても、年内、年度内には、
経営は行き詰ると見られています。

急遽、全社員の16%のリストラと500億円の資本増強を決め、
銀行の説得に努めています。

ルネサスの借入金は、
短期の1年物が主なので、
銀行を納得させれば、目先は何とかなります。

ですが、主力のシステムLSI事業は、
そのビジネスモデルが崩れ、
このままでは、赤字を垂れ流す状態が続くでしょう。

経産省の主導で、
日立と三菱が合併したのが、2003年。
NECが統合したのが2010年。

システムLSIで世界的にトップシェアを上げていた会社は、
日本国内でしかマーケティングが強くない
設計と生産の垂直統合が、コスト競争力を低下させた
などの理由で、時代の流れに押されていきました。

2010年のNEC統合時点で、
資金繰りの悪化は歴然で、
多量の人員をリストラしました。

これに追い打ちをかけたのが、
2011年の震災で、独占していた車載用LSIの供給ストップでした。
特に、トヨタのハイブリッド車向けのLSIは、
トヨタの経営に大打撃を与えました。

自動車各社は、
ルネサス以外からのLSI調達に乗り出し、
ドル箱の車載用システムLSIでの採算が悪化。
お荷物のデジタル家電用LSIは、赤字のまま。

このままでは、どう考えても、上手くいきはずがありません。

では、原因は何だったのでしょうか?

それは、3つ。
(1)LSI事業は、設計と生産の水平分業に移行し、コスト競争力を強めたこと
   生産は、TSMCなどの巨大メーカーが行うので、最先端のプロセスが安く使えます。
(2)日本の家電メーカーが大きく落ち込み、お客がいなくなったこと
(3)設計はもちろん、工場のラインも独自性を極度に高めたので、設計やラインの統廃合ができず、
   合併の意味がないこと

システムLSI事業は、まるで、第二次世界大戦を戦った零戦のようです。

当初は、DRAM事業に替わるLSI事業として脚光を浴びましたが、
ここのカスタマイズ化が暴走し、
技術や生産の共通化や標準化ができず、
作るのに手間ばかりかかり、
価格は下げ止まりで、
コスト競争力で汎用品に負けているのです。

特に、世界市場におけるマーケティング力の低下は著しく、
日本でしか売れない営業部隊と、
過去しか知らない経営者は、
高い技術力を無駄に消費するだけになっています。

いずれ、ルネサスの高い設計力や生産技術は、
外国企業の草刈り場になるでしょう。

経産省は、相変わらず、富士通やPanasonicとの合併を通じ、
何とか打開しようとしていますが、
焼石に水です。

両者ともに、経営に行き詰っているからです。

4万人以上の社員が、職を失うということは、
世界市場へ多くの人材が吸収されていくことを意味します。

これからの3年間、どんな時代が私たちを待っているのでしょうか?



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