神楽坂には、
バーがある。
バー「歯車」は、
和風のデザインが絶妙に調和している。
映画「東京タワー」やCM「ウィダーインゼリー」などの製作で有名な「ヌーヴェル・ヴァーグ」がデザインした。
「真っ暗」なバーだ。
並の暗さではない。
ドアを開けて店に入ると、
足元もおぼつかない暗さだ。
目の前に蝋燭の炎が置かれる。
ゆっくりと瞳孔が開き、
目が暗さの慣れてくると、
目の前にバーテンダーの濱本氏の澄んだ顔が見えてくる。
このバーで、
無駄な口を聞く必要はない。
そして、しだいに
その暗さや沈黙は、
むしろ、心地よくなってくる。
ゆっくりと頭や心を整理する時間が流れる。
一杯でもカクテルを頼んでほしい。
魅惑の味が意識に溶け込んでくるのがわかるだろう。
午後の三時からやっているので、
季節によっては、
まだ明るいうちに、酔うことが出来る。
強い酒に身をまかせて、
店を出ると、
まだ日が落ちきっていない。
これから、
食事や酒場に繰り出すのに丁度よい時間だ。
それでも、
酔いの余韻を楽しむために
飯田橋の駅に向かい、
帰りの電車に乗ることにする。
回りだした心の歯車を止めたくはない気がする。
いや、
それでも、誘惑に負けて、
御茶ノ水あたりで、
馴染みの店に向かうことの方が多いかもしれない。
もし、時間が許せば、
近くに銭湯があるので、
そこで湯を浴びて「歯車」に向かうといい。
天国である。
バー「歯車」
東京都新宿区若宮町16塩谷ビル2F
03-5260-8837
最寄り駅 飯田橋
h渡辺浩之