登山③

2008-11-11 00:41:28 | Weblog
歩いてる山道の近くでは水の流れる音が聞こえてた。
細かい岩がある下り道が苦手らしく私より得意げに山道を歩いてたプーさんが岩場で非常に慎重に一歩一歩足を運んでいた。
早く歩かなきゃとは思っていても、足を上手に運べない私とプーさんはどうしてもゆっくり動きざる得なかった。
プー 「時間はないけど、焦って転ぶなよ。焦って転んだらそれこそ遭難より最悪だからね。」
私 「うん。そうだね。」
プー 「とりあえず、ウィダーインゼリーも何個か持ってるし、上に着るものも持ってるから、最悪一泊してこう。道に迷って山で突然一泊するのも悪くないらしいよ。本に書いてあった。」
私 「最悪は泊まろう。でも、日が完全に沈んだら、今よりもっと冷えるよね。持ってる荷物で間にあうのかねぇ・・・今はとりあえず、少しでも見えてるうちは帰ること前提で。」
プー 「そうだね。ま、焦るなってことだよ。」
私 「ってか、多分大丈夫だよ。さっき滝に男の子達いたし、まだなんとかなるよ。」
プー 「そうだねぇー」
数十分無言で一生懸命歩いてた。
背後から人が結構なスピードでやってくる足音が聞こえる。
あ、さっきの滝の所の子達!
信じられないスピードだった。
朝、ゆっくりジョギングしてる人たちと似ていた。
私たちが恐れる岩場にもスピードを落とさず、うさぎみたいにピョンピョン跳ねて、前へと前へと足を出す。
なんじゃこりゃ・・・
ってか、何このレベルの差・・・
だから、彼らは遅い時間に滝へやってきてもパシャパシャと写真を撮りながら、私たちのことも時間のこともさほど気にする必要がなかったのだろうと思い、ものすごく納得した。
あっという間に彼らは前の方面へ進み姿が見えなくなった。
私 「ちょー速くない?」
プー 「忍者BOYだ!忍者BOY!」
忍者BOYっていう単語が可笑しくて笑ったけど、確かに忍者BOYっていうのがなんてぴったりなんだろうと思った。
そして、もう本当に本当に私たちの後ろには誰ももう来ないんだと実感が湧いた。
不安になった。
登る前に地元のおじさんが「こないだ山の人が熊にやられたよ。」って言ったらしい。プーさんが朝のぼってるときに私に言ってた。
熊にやられながらの人生の最後の瞬間なんて考えたこともなかったのに、もしかして私熊にやられて死んじゃうのか!?って考えてしまう。
リュックの熊除けスズはとりあえず鳴っていた。
もしも山に泊まることになったら・・・鈴ずっと鳴らせないし、でも熊には用心しなきゃだし。交代で一人が寝て、もう一人がひたすら鈴を振りながら音鳴らすのかな・・・ってか、うるさくて寝れないじゃん。
ってか、熊なんて・・・
ってか、熊は冬眠してもいいじゃんか。寒いのに動き回るな。
帰ろう。熊に脅えながら山で一泊なんて嫌だ。

周りがどんどん暗くなってくる。
時間は5時前だった。
プー 「なんとか見えてるうちに、泊まるとこ探そうか。」
えぇえ!熊は!ってか、寒い!
ここが真っ暗になったら、真っ暗い世界で気味の悪い川の流れる水の音に、虫だってすっげぇー出てるし!歩きながら見かけたあの足の細長いそこそこデカイ蜘蛛に!気持ちが悪いよ!やだよ!
私 「いや、もうちょっと歩こう!まったく視界が悪くなって、歩けなくなったら泊まる。ギリギリでも見えてるうちは進もう。」
プー 「・・・わかった。」
泊まるもんかい!?
もう、必死で歩いた。
橋が出たりして、かなり動揺したんだけど、橋を渡るのに戸惑って時間とってしまって山で一泊過ごすなんてマジごめんだった。
足をガタガタブルブル震わせながら、なんとか数か所を橋を突破することが出来た。
プー 「よく橋渡れたね。いけるじゃん。」
私 「だって、生命の危機感じてるもん。」
プー 「あはは」
これが時間のあるときなら、私は橋を渡ることに悩み、軽く20分を使い、挙句の果てに「帰りたい!」って泣いてるとこだと思う。
しかし!時間がない。どんどん足元が見にくい。熊が怖い。山が怖い。

前を歩いてるプーさんが足を軽くひねった。それと同時に体のバランスも崩し、転びそうになった。
が、なんとかバランスを保ったようで転ばずに済んだ。
ほっとした。あっぶねぇ~。
私 「プーさん大丈夫?足。」
プー 「あ、うん。大丈夫。前がちょっと見にくい。」
私 「何で?なんとか暗いけど、うっすら見えるよ!?」
プー 「俺、鳥目だから。」
あ、そうだそうだ。
プーさんは暗い中で物が本当に見えないらしい。
あ、山に泊まるしかないかもな。
見えないのに歩いて、転んだら大変だし・・・
プー 「まだ、大丈夫。」
私 「本当!?見えなくなったら言ってね。そしたら泊まろう。」
それから、私は細い道が出るたび、プーさんに声をかけた。

そこの道、めっちゃ細いから、壁伝いに歩いたほうがいいよ!とか
次また、細い道だから気をつけてね!とか

もう、プーさんに対しても、自分に対しても、進むことに対して必死だった。

登山②

2008-11-07 18:15:39 | Weblog
さて、そろそろ帰りますか!
時間はもう昼過ぎの2時を回っていた。上りよりは下りのほうが早いだろうと安易に思っていた。上りだろうが、下りだろうが山道が楽なはずなんてない。私の後ろを歩いてたプーさんが私の前を歩くことになった。私があまりのへっぴり腰で歩くのが遅いせいなのと、私も後ろに人がいると妙なプレッシャーで気ばかりが焦ってくるので変わることにした。
私 「私の前のほう歩いて!後ろにいると落ち着かない。せかされてるみたいで焦る。もしも、私が転んだ時プーさんが前にいたら、取りあえずすべり止めか、道連れくらいにはなるでしょ。」
プー 「おう!そうだね!わかった。」

いつも孤独な味を出してる落ち葉。
山道にはもう孤独さのかけらも感じられないくらい落ち葉がドサっと落ちている。
この落ち葉、冗談にならないくらいよく滑る。
いつもなら、静かに眺めてた落ち葉を土を掘るように足で一生懸命振り払った。
地面の土に足を置き、一安心。落ち葉うざっ!
私が片足で必死で地面を掘るように落ち葉を振り払ってる姿を見てプーさんが言う。
プー 「その仕草何かの動物でみたことある気がする・・・」
でしょうね。
私も昔飼ってたランチくん(猫名)がトイレで猫の砂を足で蹴ってる姿に似てることは気付いてた。
プー 「すっごいへっぴり腰になってるよ。姿勢をまっすぐ保ったほうが下りやすいから。やってみぃ。ほら、こんな風に。」
プーさんが少し小走りのような仕草で下り道を下りていく。
私は周りの様子を見た。歩いてる道の右側は山沿いになっていて左側は急な坂道になっていた。もしも運悪く左側に転んだら、とまらないでコロコロと転がりそうな気がしてならなかった。
私 「ここでこっち(左側)に転んだら、シャレにならないって!もう永遠にコロコロだよ。」
プー 「へっぴり腰のほうが本当危ないよ。本当まっすぐ歩くほうが楽だよ。」
私 「うっ・・・・・・やってみる・・・」
で、結局私がへっぴり腰をやめて小走りしてみた道はちょっと広めの道ばかりで転がる不安感を私が抱かないポイントだけに限った。

どれくらい山道を下っていたのだろう。
目標の百尋の滝がまだ見当たらない・・・
この感じじゃ滝に辿りついたとしてもゆっくり写真を撮ったり、川に手を入れて楽しむなどの時間はいっさいなさそうだ。
足がパンパンに張ってきてるのがわかる。足の底が痛い。足の指がトレッキングシューズの窮屈感に痛いと悲鳴をあげてる。でも、時間がない。空の色がどんどん暗いトーンになってきてる。
私のペースが遅いせいもあり、また何人もの登山客に追い抜かれた。
人の気配がすると急ぐことが出来ない私はなるべく道を譲る。
道を譲るときのまだ人がいるんだという安心感と、追い抜かれてる時間がヤバイって感じとで喜ばしい+あせり感が湧いてた。とうとう、私たちを追い抜いてくれそうな人の気配すらしなくなった。
でも、どこかで派手な水の溢れる音が聞こえる。
足が痛いのを忘れて急いで歩いてみる。
プー 「滝に着いたよ!ちょーすげーーー!見てみ!!!」
おいおい、時間がないんだよ!滝の方に降りるな!山を降りなきゃ暗い山で迷子になっちゃうよ!
滝をみた瞬間、私もものすごい驚きで滝の方向に下りて行った。

うわ・・・・・・・・

何も言葉が出なかった。
目の前に数十メートルはなるんだろうか。
谷から溢れ落ちてくる滝に止まった。
疲れも、時間に対する焦りも止まった。
口をあけ、滝を見上げた。

いかんいかん!時間がないんだ!
見とれてるうちに、私の理性が戻る。
私 「写真撮って早く帰ろう!まだここからもだいぶあるんでしょ。」
プー 「そうだね。」
急いでカメラを取り出して、滝にレンズを向け写真を撮る。
ん~~~~気にいらない角度だけど、仕方がない・・・
プーさんを見るともう滝に惚れぼれで一生懸命写真を撮っていた。
ま、いっか・・・あと数分くらい。
プーさんが写真を撮ってる間私は軍手をはずして、川の水に手を入れた。
冷たくてびっくりしたけど、なんか会いたかった人の手を握れた満足感と感動を覚えた。
プー 「行くか!よっしっ!」
降ろしてたリュックをまた背負い杖を持った。
お!人だ!
どのタイミングできたんだか、まったく気付かなかったが20代くらいの男の子達が3人いた。彼らも滝に向かってパシャパシャと写真を撮っていた。
手に持ってる荷物からして、山に泊まる覚悟はしていない格好だった。
よかった。この人たちが今滝で時間を潰す余裕があるなら、私たちまだ間に合うかも。急ごう!
時間を確認したら、夕方の4時を過ぎてた。
薄くらい山道を精いっぱい私なりに急ぎ足で歩いた。
滝をみたせいか、感動のせいか山道を歩いていた疲労感がだいぶ癒されてる気がした。

登山①

2008-11-04 01:54:05 | Weblog
日曜日に奥多摩にある川苔山に出かけた。
もちろん山だったり、歩くコースはプーさん任せで、私が条件としてつけたのは「滝が見れる山」のみだった。
家にあるガイドブックによると歩く時間は大体6時間半のコースと記載があった。
山道で6時間半はシンドイ気もしたが、出来ないこともない気がした。
よしっ。川苔山へ行こう!!!

朝4時前に起き、近所迷惑なのは覚悟の上、まず洗濯機のボタンを押した。
そして、米を洗って炊飯器の早炊きコースを選択。
急いで、衣類を脱いでお風呂に入った。
風呂から出て、プーさんを起こす。
家を5時には出る覚悟で用意を進めないといけなかった。
今日の山は歩く時間が長い。ガイドブック通り登山時間をこなしたこともないので、もう少し余裕を持って時間を持つようにしたほうがいい気がした。
炊けた米で二人分のおにぎりを作る。おにぎりだけじゃさみしいし、少し歯ごたえのあるものが欲しかったので、冷蔵庫に入っていたたくあんを雑に透明袋に入れて軽く結んだ。
タッパーに入れて持っていくべきか、散々悩んだけど、食べ終わってからタッパーでリュックの中のスペースも取りたくなかったから、おにぎりもサランラップで包み、ジッパー付の袋の中に透明袋のたくあんと一緒にまとめて入れる事にした。
5時前に終わった洗濯物をプーさんを急かし、二人で急いで薄暗い外に干して家を出た。
予定時間より家を出たのが遅くなった。
急がなきゃと早歩きで歩くのだけれども、コンクリート道をゆっくり歩くプーさんが私の早歩きに追いついてこない。
しょうがない・・・ま、余裕を持つ為と思い、やたらと早めに早めに時間を組んだスケジュールだったので、少しくらい予定よりずれたスタートでもいいだろうと思う。
案の定予定より遅い出発になった。
遅い出発な上、青梅駅での奥多摩行きの電車は逃してしまうと30分以上待たなきゃならなかった。
朝食やら、コーヒーやら、トイレやら済ましてるうちに登山開始時間は予定時間を1時間上回る8時40分からの開始になった。

歩き始めて数分立つと、(山は寒いだろう)と思い着こんた服が暑くなってきた。
ひたすら坂道を登ると、足が痛くてあがらない、脈はものすっごい速さで動くわで辛くて仕方がない。コンクリート道は歩くのが遅いくせに山道の坂道はスイスイ登るプーさん。
ってか・・・果たして本当に私はこんなんで6時間半歩けるだろうかと不安がよぎる。
大丈夫。時間に余裕を持ってきてるんだ。一応自分達がガイドの登山時間どおりに歩けるなんて思ってない。歩く気もない。
さすがに8時間はかからないくらいだろう。
8時40分スタートで8時間を見積もると4時40分に終了か。ぎりぎりセーフだな。
ま、そこまでかかることはないだろうけど。
ひぃひぃ言いながら、自分のペースで登りつづけた。
とうとう、汗がポタポタ落ちるようになった。首にかけたタオルが水に一回ぬらして絞ったような感じになっていた。半そででくればよかったと後悔。寒いだろうとばかり思い、たくさん着こなすものしか用意してなく、新しいシャツなんて私は用意しなかった。

山道で時々、平らな道が何箇所かあって、坂道の苦手な私は水を得た魚のように喜んだ。
口数が減り黙々と歩いてたが、相変わらず山の中の景色は大胆な絵のように自由な雰囲気が漂っていて、目につくどの場面も素敵だった。時々立ったまま休憩を取っていると本当に山に登ってよかったなと何度も実感していた。
で、この日は休日で登山客も多かったらしく、遅いペースの私達は何人もの人に抜かれてた。
抜かれてばかりなのも微妙だった。
私 「ねね。今は人に抜かれてばかりだけど、いつか私達がスタスタ歩いて、人を追い抜けれるようになるといいネ!」
とプーさんに言った。

驚いたのは秋田犬が後ろから上ってきたことだった。かっわいい秋田犬だった。よくぞこんな山道歩けるなぁと感心。
もちろん秋田犬とその飼主らしき人にもあっさり抜かれた。
ガイドブックには頂上まで、着くのは歩き初めて3時間半くらいらしいがどこをどうみても頂上らしきものが見当たらない。
私達の登山経験と能力を考慮して、4時間と見積もったが歩いて4時間が過ぎても頂上が見当たらない・・・
プーさんが焦ってきたようだった。
プー 「こんなんじゃ、下るとき暗くなっちゃうよ。もう少し早く歩いて。あまり休まないで。」
ってか、これでいっぱいいっぱい。私にこれ以上の坂道を上る技術なんかありません!
とプーさんに腹が立った。ちょっと私より元気がいいからってなんだよ!みたいな気持ちだった。頂上が見当たらないことは登り道で息苦しくても地味に進んでる私にもイライラの種だった。
降りてくる人が多くなり、すれ違う人にプーさんが頂上まであとどれくらいですか?と聞く。
すれ違う人 「頂上まではあともうちょっとですよ。」
と言われ、二人でほっとする。
あともうちょっとだってぇ♪
で、あともうちょっとと言われ歩いて20分、頂上見当たらない・・・
道間違えたのかなと不安になる。
とうとうプーさんがお腹が空いたとブーブー不満をこぼし始めた。
なんだよーーこのおにぎりは頂上で食べるんだろうが!と思うが座ってゆっくり休みたいのもあり、一人2個ずつ用意したおにぎりを1個ずつだけ食べることにした。おにぎりを食べながら登っていく人たちの姿を見ると、道は間違ってはないようだった。
15分ほど休んでまた登る準備をした。
あともうちょっとだーーーいけっーー!

・・・
頂上はどこだ?
そもそも頂上って本当に存在してるのか!?
食事休憩を済まして歩いてから更に20分。
頂上が見当たらない。
二人でさっきの人頂上まであともうちょっとって確かに言ったよね!?と確認した。
言った言った。
なのに、あともうちょっとといわれて数十分。
頂上らしきものが見当たらない。
私 「あれだ。あれ。あともうちょっとの感覚の違いだ。さっきの人は少なくてもうちらよりも山登り慣れしてそうだったしさ・・・」
プー 「そうだね・・・それより急がなきゃ暗くなってマジで遭難しちゃうよ。」
私 「・・・」
もうちょっとという言葉に勝手に裏切られ、1時間以上が立った頃やっと本物の頂上に到着!休憩ばかりで遅いペースではあったがなんとか頂上に到着。
出発してからすでに5時間が過ぎていた。
思ったより頂上には人が多かったので、なんとなくまだ私達もゆっくりしてもいい気がした。最後に残ったおにぎりを食べ、記念撮影をし、少し座って山を眺めた。