[夜の蜘蛛] と [朝の蜘蛛]

亡き祖母の教えは忠実に守っている。


・子供の歯が抜けた時は、
　下の歯は屋根の上へ、
　上の歯は縁の下へ。
・新しい靴は午後に玄関に
　下ろしてはイカン。

下の歯が抜けたら新しい歯が
グイグイ上へ生える様に。
上の歯が抜けたら新しい歯が
グイグイ下へ生える様に。
新しい靴を午後に下ろすのは
通夜など死者の為だからだそうだ。

等々、色々な教えを理由も添えて、
教えてくれた祖母。
しかし、数々の教えの中で、
理由を聞き忘れてしまった物がある

・夜の蜘蛛は殺せ
　朝の蜘蛛は殺すな。

夜の蜘蛛は泥棒で、
朝の蜘蛛には神様が宿っている。
という事だったケド…。
…なんで？

時折、自室に忍び込んだ小蜘蛛を
優しくティッシュで包んで
庭にポイと逃がしてあげるのだが、
夜と朝で扱いが違い過ぎるので、

『トイレの電気が付いたぞ!!
　気を付けろ、物音をたてるな。
　やすろに殺られるぞ。
　日の出まで後３時間隠れ通すんだ』
『メーデー!!メーデー!!
　高橋がやられました!!』
『たたた、高橋～！！』

夜な夜な物陰から
そんな声が聞こえそうで、
おちおちトイレにも行けません。