毎日が遺言

消えゆくローカル言語

 晩ご飯の時、ばあさん(母親のことです)の友だちであるご近所のおばさんが、電話の詐欺に引っかかりそうになった話をしていた。
 「お宅の息子さんがワイセツな行為をしてしまい、今、相手の弁護士が来て事情を聞いているんですが…」という、あれ。
 「もうずいぶん耳にしていなかったけど、また復活の兆しがあるのか」なんて話していたんだけど、ばあさんの友だちがそれを信じてしまってたんだそうな。
 幸い、電話はそのおばさんが「ウチの息子はそんなことをする男ではありませんっ」ときつく言ったらすぐに切れてしまったらしいんだけど、電話が切れてから、そのおばさん、息子が大変なことをしでかしたとしょげかえっていたらしい。
 結局すぐに嘘の電話だとわかって事なきを得たんだけど、そのときのしょげているようすを、ウチのばあさんがこう表現したのだ。
 「あの人なぁ、そりゃもう『ヘルに塩』やで」
 皆さん、おわかりだろうか?
 通常、こういう場合のたとえとしては「青菜に塩」というのだが、「ヘルに塩」。どうです?意味がわからんでしょう?ほっほっほ
 「ヘル」とは「ヒル」のこと。
 「ヒル」、知ってます? 水田でピロピロ泳いでは血を吸う虫。カサブタみたいな色をした、細短いきしめんの切れ端のような虫であります。かつて裸足で田植えをしているころは、足を食われて痛がゆい思いをしたものだ。
 こいつに食われた傷跡には塩をすり込んでおく。なんでも、ヒルに直接塩をかけると死ぬらしい。
 この「ヒル」のことを、このあたりの年配の方々は「ヘル」と呼ぶのである。訛り、ですな。
 「ヘルに塩」は、「塩をかけるとしゅ~んとなってしまうようす」で、しょげかえっているようすのたとえとして使ったようだ。
 これを聞いていた妻は、何のことかわからなかった様子。
 そりゃそうだなぁ、こんな言葉を使う人は、私たちが結婚したころにはもうあまりいなかったし、妻が田植えをするようになってからはヒルもあんまり見なくなったし。
 時が経てば言葉は失われてゆくものでありますな。

コメント一覧

みらパパ
http://yaplog.jp/mirapapa/
ヘレンボ{びっくり} 面白いですなぁ{ルンルン}{笑}
ヒルに塩が行くかどうかは、私は知らないのですが、母がそう申しておりました。
私はヒルに食われたのはたった一回しか記憶がありません。
今は田植え靴を履いているので食われることはないのですよ。
ヒルも見なくなりましたしねぇ。
オレオレ詐欺まがいのああいう電話は、ウチにもかかってきたことがあるんですよ。
でも、そういう情報を知っていたので、家族が上手く対処してくれました。
情報は大切ですね。
ヌノチャン
{YES}よく 祖母が ヘレンボ と 言ってました あh!と思いだしました ヒルもナメクジと一緒なんですねぇ 塩で溶けるなんて でも ナメクジも最近見たことない{バイバイ}です カタツムリも。。。見てないなぁ?!
お母様 すご~い ポンと 良いタイミングの 一言 恐れ入ります(●^o^●)
我が家でも 昔 義母が 福井の家で 変な電話が 掛ってきて 今の おれおれ詐欺の前進かな?「俺やけど 最近 腹が調子悪くて 10日ぐらい出ないのに 嫁が ほったらかしや」 で 母は「ちゃんと 気張れって」 1時間くらい会話したらしく 私に『 なんで ヌノ旦那の 面倒みない!』 と 怒って電話してきました 旦那が電話に出て『息子の声もわからんか?』と 大笑いになりました{汗}
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