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Tシャツとサンダルの候

雪と霧のくじゅう。凍る御池に遊ぶ。



新年初のくじゅうは、牧ノ戸登山口から中岳方向を目指すつもりである。

8時半頃着いた時は、すでに牧ノ戸駐車場は満杯。


路上にも登山者の車が並ぶ有様である。

こんな凍てつく気候にも拘らず、今更ながら人気の高さに驚く。

何とか車を置く場所を確保、登山口へ出発だ。



沓掛山へと続く、コンクリートの登山道。

登山客により踏み固められた雪は、微妙に滑る。

回りを見てみると、この時点で、ほぼ全ての人がアイゼンを装着している。

この程度なら必要ないとは思うが、どうせ御池に着いたなら、アイゼンは必須アイテムだ。


その時に手がかじかんで、装着するのが面倒になるくらいなら、今のうちに着けておくか。




沓掛山。

この山と言えば、殆ど通り道としてしか認識されてない、実に気の毒な山なのだ。

殆どの人が、山頂スルーである。

なんて、私も4回に一回ぐらいしか、山頂まで行かないけどね。



この日九重連山は、ずっとガスの中である。

ザクザクと、アイゼンが凍った地面を踏みしだく音を聴きながら、霧の西千里を行く。


さて、

今回の山歩きの主題は、何と言っても御池である。

凍結した御池を楽しむのが目的だ。

牧ノ戸から登ったほぼ全ての人の思いも一緒だろう。

その後、新年初の九重連山登頂。

その山は、敬意をこめて、九州本土最高点中岳にしたい。

中岳からは白口岳、稲星山と縦走し、神明水を経て久住山へ。

久住山からは、そのまま牧ノ戸までノンストップの予定である。



久住別れ避難小屋。




久住別れを過ぎ中岳方向へ。




御池到着。

見事に完全凍結である。

たくさんの人々が、池面で思い思いに楽しんでいた。

どれ、私も降りてみるかな。


ワーーーイ ♪




どのくらいの厚さになっているのだろう。

少々飛び跳ねたぐらいでは、びくともしない。



助走をつけて、思いっきりヘッドスライディングをしてみたい衝動に駆られる。

だがしかし、

64歳のジジイが、ワーイと叫びながら、一人で氷の上を腹ばいになって滑っている図柄を思い浮かべて欲しい。

みっともないを通り越している。

自制したほうが賢明なのは明らかである。



次回ここに来る時は、歳がばれないように覆面を用意して、池の上に立つつもりである。




正面に見える鞍部から、ここまで御池を横断。

この時期だからこそ出来る、中岳へのショートカットだ。



台状から見下ろす。




中岳。

この一瞬だけガスが取れた。

ここぞとばかりに、かじかむ手で大急ぎでパシャリ。



天狗ヶ城。

今回はこの山はパス。



久住山方向。

さっきまで見えていたのに、再びガスが覆い始めた。



白口岳の後に登る予定の稲星山。

背後の久住高原は分厚い雲の下である。



凍った岩場を登る。




霧氷がお出迎え。







ま、これはスルーして貰うとして・・・

取り合えず、新年初の九重連山中岳登頂である。


そろそろ、アイゼンを外そうかな。

この先、凍結場所は無さそうだし、この程度の積雪なら、外した方が寧ろ歩き易い。



次に目指す白口岳が、ちらっと顔を見せてくれた。

アイゼンを収納したなら、体が冷える前に、とっとと中岳を降りよう。



白口岳分岐を過ぎた辺りから、積雪が深くなってきた。

アイゼン外した途端に、なんてこった。

かと言って、さっき外したアイゼンを再び装着するのも面倒だ。

何度かよろけながらも、そのまま歩く事にした。



白口岳取付き部。

ガレ場を登ると、



白口岳山頂だ。

山頂は強風が吹き荒れている。

寒い。

ここも、休憩なしで降りた方がよさそうだ。

とんぼ返りで引き返す。



白口岳を降り、次の稲星山へ。

ガレ場の登りでは、何度も手を付く程に派手に滑る。

にもかかわらず、面倒くささのあまり、相変わらずアイゼンはザックの中である。


この事が原因で、あの悲劇を生む事に・・・

いや、既にこの時点で、それは起きていたかもしれないが、ここでは触れない。



霧氷に癒されながらガレ場を登る。




山頂が見えてきた。

途端に風が強くなる。

雪などは飛ばされてしまっていた。



山頂付近まで来ると、雪どころか、自分まで飛ばされそうな猛烈な風である。

特に久住山へ続く稜線は強烈だ。


止めた!


久住山はパス。

このまま、東千里まで降りて、池の小屋経由で帰ろっと。



と、その時、パラパラと霰まで降ってきた。

顔が痛い!



霧の先に、池の小屋が見えてきた。

中は休憩する登山者で一杯だ。

何とか一人分のスペースを見つけ、この日初めての休憩兼昼飯である。



『あわてずに食べてね!』 by 桜井玲香


そだね。

もう帰ると決めたし、落ち着いて食べなくちゃね。



ズズズ



暖まったぜ。


そんじゃ、帰ろっと。



星生崎の岩場に立つ人々を見上げ、


「やれやれ、この寒いのに、ご苦労なこった。」


などと、

さっきまで自分がしてきた事を、他人事の様に呟く。

全く呑気なものである。





既に、あの悲劇が起きてしまっているのに、気づきもしないで・・・




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