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通訳クラブ

会議通訳者の理想と現実

2010年フランスの旅 -7-

2010年06月13日 | 通訳者のひとりごと
ちょうど1時間遅れでドル・ドゥ・ブルターニュに到着すると「モン・サン・ミッシェルに行く人は?」と誘導する声がする。小さな駅舎を出ると目の前に大型バスが止まっていた。新しくてきれいだ。これならレンヌから1時間以上乗っても平気かもしれない。乗客は十数人、イタリア語、韓国語、中国語・・・、色々な言葉が車内のあちこちから聞こえてくる。

何気なく左側の座席に座ったのだが、出発してから10分ほどたった頃、左手に広がる田園風景の向こうに遠く、しかりくっきりと浮かび上がる異質なものの存在感に目を奪われた。モン・サン・ミッシェルだ! 思わず窓にかじりつくようにして見入ってしまった。その後も時折見えつ隠れつする目的地に向けてのバスの旅は約30分。ラスト・ストレッチでは正面にどんどんと近づいてくる。そして周囲600メートルの岩山の麓にバスは到着した。


(絶対にクリック!拡大して見てください)

年間3百50万人が訪れるという世界遺産は12世紀にもわたる建造・破壊・修復の歴史が作り出した石の要塞だ。8世紀の初め、大天使ミカエル(=サン・ミッシェル)のお告げを受けたオーベール司教がその建築を始め、以来修道院、城塞、牢獄と用途を変えながら、引き潮の時にしか渡ることの出来ない神秘の島であり続けたが、1879年、とうとう地続きの道路が作られて、いつでも渡れるようになってしまった。




(お告げをなかなか信じないオーベール司教の頭に穴を空ける大天使ミカエルのレリーフ)


(今や大人気の観光地)

そうすると当然それまで島の周りを回っていた海流がせき止められ、どんどんと砂が堆積して環境を変えてしまう。そこでダムと橋とで元の姿を取り戻そうというプロジェクトが2006年から始まった。当初2010年(今年じゃん!)完了を目指していたのがその後2012年に伸び、今はどうやら2015年と言うことになっているらしい。う~ん・・・、延び延び・・・。でも工事中もアクセスは確保されるそうだ。


(工事予定図)

朝早く出て来たのでそろそろお腹も空いている。名物のふわふわオムレツを本家ラ・メール・プーラールで食べようと思うと、列に並んで待たなくてはならないししかも40ユーロ前後もするので、ちょっと坂を上がったところにあるカジュアル版レ・テラス・プーラールまで行ってみた。うまくランチで混み出す前に滑り込み、グラスワインも入れて30ユーロくらい。パリのカフェでのディナーよりは高いが観光地だし仕方がない。「大きい」と聞いていたがスフレのようにふわふわなので恐るるに足らず。


(名物ふわふわオムレツ)

テラス・プーラールのすぐ向かいぐらいにサン・ピエール教会がある。ジャンヌ・ダルクの像が迎える入り口から中に入ると、そこは岩山を掘り下げて作ったこじんまりとした教会で、なんだかとても落ち着く空間だ。



この先の長い階段を上った上にある修道院で修道士達は禁欲的な生活を送っていたわけだが、意外と飽きなかったかも・・・と感じた。あちこち歩いて壁や柱に触れてみたりしたのだが、どの一角を取ってみてもそれを構成する石の形やはまり具合が一つ一つ異なっていて、しかも絶妙な構造強度を実現しているのだ。ひょっとすると毎日のように新しい発見があって、それを神様からの贈り物のように楽しんでいた修道士がいたとしても不思議ではない。

結局4時間くらい急な坂や石段を上ったり下りたりして楽しんだ。パリから日帰りのバスツアーだと昼食時間をのぞくと1時間半くらいしか滞在できないらしいから、私だったら物足りなかったに違いない。帰りのバスに乗る時は早めに並んでおいて、一番後ろの席を確保するのもいいかもしれない。遠ざかってゆくモン・サン・ミッシェルの最後の姿にゆっくりと別れを告げることが出来る。

なんだか来るのに大変な場所、と言うイメージがあったが全くそんなことはなかった。お天気にらみだったので現地で取った列車とバスの予約だが、帰ってきて調べてみたらどうやらネットでも取れるらしい。知り合いが行きたいと言ったら勧めてあげよう。そういえばドイツの鉄道もネットで簡単に予約が出来て、切符は自分のプリンタで印刷したのを持っていけば良かった。いちいち登録して使うたびにユーザーネームとパスワードを要求される日本のシステムよりは、遙かに使いやすかったのを覚えている。

残念ながら出会うことはなかったがここにも猫さん達がいるらしい。ポストカードで満足しておくことにする。(この後はエビアンとおまけが続きます。)


2010年フランスの旅 -6-

2010年06月07日 | 通訳者のひとりごと
翌月曜日、いよいよモン・サン・ミッシェルだ! ところが朝の天気はなんだか冴えない。薄暗い曇り空、でも天気予報は晴れだと言っている・・・。もう知らん!

前日アイスランドからの火山灰の影響で閉鎖されていたイギリスの空港に再開のめどが立つと同時に、オランダで2カ所閉鎖のニュース。でも気流の影響でどうやらパリまでは降りてこないようなので、翌日のジュネーブ行きには問題なさそうだ。飛ばなかったらまた列車の手配がちょっと面倒だと思っていたので一安心。

モンパルナスから7:30のTGVでいざDol de Bretagneへ。一等の車内はビジネス・スーツ姿の乗客が多い。Le Mansの駅で停車が長いな、と思っていたら車内アナウンス(フランス語オンリー)があって乗客がどよめいた。目の前に座ったおじさんも「なんてこった」みたいな表情をしているので尋ねてみると、ぞこぞで事故があって復旧に2時間かかる予定だという。え~~っ?! そんなのってあり?

10:30くらいにドル・ドゥ・ブルターニュに着いてそこからすぐにバスに乗る予定だったのだが、はたしてどうしたものか。座席の窓の外に車掌さん達が集まっているのが見えたので聞きに行ってみた。そうすると、11:30にRennesからモン・サン・ミッシェル行きのバスが出るので、それに乗ると良い、とのアドバイス。せっかくドル経由は良い思いつきだと思っていたのに・・・。

結局2時間はかからず1時間くらいで発車。さっきアドバイスをくれた車掌さんが通りかかったので「やっぱりレンヌ?」と確認してみたら自信満々でそうだ、と答える。ところが! レンヌが近づいてくると再び車内アナウンス。モン・サン・ミッシェルとかドル・ド・ブルターニュとか言っている。目の前のおじさんは英語があまり出来なくて、見かねた通路向かいの女性が教えてくれた。「この列車に接続するためのバスなのでドルで待っているらしいわよ。」 おお! そういうことですか! 

JRの車掌さんだったらきっとみんなが正しい情報を持っていて、もし分からない時は確認してから教えてくれるんだろうが、SNCFではそういう日本の常識が通じない。まあ、仕方がない、ここは異国だ。結果良ければ全て良しとしよう。なんと言ってもこの頃までに、朝出てきた時心配だった雲がほとんど消えていたのだ。 (次はいよいよモン・サン・ミッシェル)

2010年フランスの旅 -5-

2010年06月05日 | 通訳者のひとりごと
日曜日もやはりすばらしい天気に。モンサンミッシェルは今日にすればよかったかしら・・・、と一瞬後悔したが今更仕方がない。気を取り直して市内観光に出ることにした。あっちこっちで乗ったり降りたりすることになりそうだと思い、地下鉄一日乗り放題のモビリスという切符を買って、一昨日あきらめたシテ島へ。ここにはノートルダム寺院とサント・シャペルがある。ノートルダム寺院ではちょうどミサの最中。邪魔をしないようひっそりと見て回ったりフラッシュをたかずに写真を撮ったり。意外なことにお説教はフランス語と英語のバイリンガルだった。




サント・シャペルの前は相変わらず長蛇の列でしかも進みが遅い。でも昨日のベルサイユの列を思えば、もう怖いことはない。意を決して並ぶ。並んで待っている間にガイドブックを開いてこれから見るもののおさらいをしたり、その後の行動を計画したり出来るので、ホテルを出るときまでに周到な計画を立てる必要がない。効率的に時間を使おうと思えば、けっこう無駄なく過ごせるものだ。

進みの遅い長い列の理由は厳しいセキュリティ・チェックだった。でもそのおかげでシャペルの中はそれほど混んでいない。並べられた椅子に座って有名なステンドグラスをゆっくりと鑑賞することが出来る。


(両側に並べられた椅子。向かいのステンドグラスをのんびり眺める。)


(メインのステンドグラス。クリックで拡大します。)


(外から見るとこうなっている。)

マリー・アントワネットが断頭台までの2ヶ月半を過ごしたとされるコンシェルジュリを見て、再びメトロに。


(復元された王妃の独房。本人と監視役つき。)

今度はチュイルリー公園からコンコルド広場を抜けマドレーヌ寺院へ。まるでギリシアの神殿のような教会だが、1764年の着工時にはその用途が決まっていなかったって・・・どうなの? ちなみにマドレーヌとは、最近の研究で実は改心した娼婦ではなくキリストの妻だったと言われているマグダラのマリアのことです。


(天使に囲まれ天に昇るマグダラのマリア像。)

その後メトロでベルシーへ。でもって、スターバックスの前に列をなすパリっ子って、どうなの?


倉庫街を改装したベルシー・ヴィラージュという小さなショッピングストリートには、手作り好きにはたまらない手芸・工作用品が満載のロワジール・エ・クレアシオンというお店がある。作っている時間なんてないことは分かっているのだけれど、あれもこれも欲しくなって・・・・・・とても危険な店だ・・・。(もう少し続く)

2010年フランスの旅 -4-

2010年06月01日 | 通訳者のひとりごと

広い空間にクラシック音楽が流れる中散策していると、なんだか異空間に迷い込んだような気分だ。宮殿から大水路に至るまでですでにほぼ1kmあるらしいが、その間にたくさんの噴水が点在し、4月から10月までは噴水ショーが行われる。この期間のパスポートはそのために7ユーロも高い。どれかは見ないと後で損をした気分になりそうな人は、庭園に入るところにおかれたパンフレットで、どの噴水がどの時間に水を噴き上げるのか確認できる。

(庭園の地図。クリックすると拡大します。とにかく広い!)


(アポロンの馬車の泉水)



グラン・トリアノンはルイ14世の私邸として立てられた離宮で、ピンクの大理石とゴールドの組み合わせが意外にもシックで美しい。何の目的か分からないが新郎新婦姿の二人の写真撮影が行われていて、とてもさまになっていた。本当のカップルだったらとても良い思い出の写真になることだろう。そんな趣のある建物には、後にナポレオン夫妻が暮らした。





(今も公式行事に使われる廷内。クリックで拡大します。)

ルイ15世がポンパドゥール夫人に「ねぇ、ねぇ」とおねだりされて(?)造らせたプティ・トリアノンはルイ16世の即位後にマリー・アントワネットに贈られ、王妃はここに池やら農場やら、水車小屋やら村里やらからなる田園風景を造りあげた。


(これがお庭の中って、すごくないですか?)


いかにも田舎風の建物が点在する一角、トリアノンの自室の窓から見える場所に建てられたのが白い大理石の東屋風の建築物 Temple of Love だ。ヘラクレスの棍棒から弓を切り出そうとするキューピッドの像が置かれているが、これはレプリカだそうな。オリジナルはルーブル美術館にあるらしいのだが、残念なことに覚えがない。



(クリックしてください。ちょっとお気に入りの写真です。)


農場には山羊、ウサギ、鶏などが飼われていて、心なしかこのあたりには子供連れが多い。一匹いじめっ子の山羊がいて、小さな子ヤギに喧嘩を仕掛けているところに、別の山羊が仲裁に入って、代わりに喧嘩の相手をする羽目になっていた。歩き疲れた足を休めてまったりと観劇するプチ・ドラマとしては上出来。



その後宮殿を「はい、閉館のお時間です」と係員さん達に追い出されるまで見学した。「戴冠の間」に飾られたダヴィット作「ナポレオンの戴冠式」も本人が書いたレプリカで、オリジナルはやっぱりルーブル。こちらはちゃんと覚えているし、写真にも撮ってあった。

(ルーブルのオリジナル)


ベルサイユは現在改修の真っ最中。場所によってはビフォー・アフターがはっきりと分かる。(もっと続く)

(クリックすると拡大します。)


2010年フランスの旅 -3-

2010年05月31日 | 通訳者のひとりごと

パリに着いてからもBBCワールドやCNNの天気予報は連日雨だと言い張っている。日曜日は特に大雨だと言うのでモンサンミッシェルは月曜日にしてみた。ところが到着翌々日の土曜日はいきなり快晴となった。しめたとばかりにこの日はベルサイユに出かけることに。

パリ近郊はイル・ド・フランスと呼ばれモンパルナス駅では発着ホームも切符売り場もTGVとは異なる階にある。自動販売機で切符を買ってベルサイユ・シャンティエ駅に向かった。ちなみに地下鉄もそうだが自動販売機の画面には良く探すとユニオンジャックの旗印があって、それを押すと英語の表示に変わるのでフランス語がちんぷんかんぷんでも大丈夫。それに1.9ユーロのような少額でもクレジットカードが使える。

本当はPERのベルサイユ・リブ・ゴーシュ駅の方が宮殿には近いのだが、せっかくなのでモンパルナス駅でいろいろと試してみたかったのだ。たまたま快速に飛び乗ったので途中どの駅にも止まらず15分くらいで着いてしまった。ただ問題はこれからだ。


(ベルサイユ・シャンティエの駅)

インターネットで入場券を買っておけば良かったのだが、何せ天気が心配でどの日にすれば良いのか決められなかったので、様子を見ながら現地調達だと覚悟を決めてきた。しつこいようだがこういうところの観光はお天気で印象が大きく変わるのである。めったにない機会だから多少の出費や不便は我慢する。

シャンティエから歩くことしばし、リブ・ゴーシュの駅前まで来るとツーリストセンターの前に再び長蛇の列。それでも宮殿の切符売り場よりはこちらのほうが早いらしいのであきらめて並ぶことにする。所要時間1時間強、手数料2ユーロを足して27ユーロのパスポート(宮殿、庭園の噴水ショー、トリアノンと呼ばれる二つの離宮すべて込みのチケット)をゲットして、いざベルサイユへ! と角を曲がったところで、あれ? ・・・・・・ここにもツーリストセンターが・・・・・・。列は明らかにさっきのところより短い。こっちのほうが早く買えたのか? 今となっては確かめようがない。

ベルサイユは人気の観光地なのでチケットを買った後も入場に長い列が出来る。午前中は1時間くらいかかるらしい。午後になるとすくのでまずトリアノンのほうを見てから宮殿に入ると良い、というツーリストセンターのお姉さんの助言に従うことに。

宮殿の裏手に回るとそこには壮大な(本当に想像を絶するくらい壮大な)庭園が広がっていた。(まだ続く)

クリックすると拡大します。

2010年フランスの旅 -2-

2010年05月28日 | 通訳者のひとりごと
      
出発前の数日は何故かいろいろと立て込んでしまい、事前に完全な準備が出来ないことが多い。今回もとりあえずホテルと空港からの足だけ確保できれば、あとは現地で何とでもなるとのんきに構えていたせいでもある。空港からはエアポートシャトルを利用してみることにしてインターネットで予約をして行った。

到着したら荷物をピックアップする前に公衆電話からフリーダイヤルの番号に電話をするよう指示するメールが来ていたのでかけてみる。場所を指定され荷物を持ってそこで30分ほど待つが現れない。再び電話をすると「5分で行く」とか言う。さらに待つこと30分、さすがにクレジットカード詐欺ではあるまいかと心配になり始め、4度目の電話をかけているところに私の名前を書いたカードを持ったドライバーが現れた。その後も3箇所で乗客を拾ってようやく市内に向かう。相乗りするからタクシーよりも安いのだが時間が大切な場合には向かない。それに電話の向こうのおじさんも、1時間かかるならそう言って欲しい。分かっていればそれなりの時間の使い方があろうと言うものだ。

ホテルはモンパルナスのガイテ通りにある。部屋が思ったよりも広くてきれいなことに満足しつつ、近所を少し歩いてみることにした。カフェ、レストラン、シアター、怪しげなDVDショップ(中で鑑賞するらしい)などが並ぶ通りはそこそこ賑わっている。長旅で疲れてもいたので、最初に見つけたプチ・マルシェで水やビールなどを仕入れてこの日は終了。

翌日は一日中曇りでさらに夕方雨が降るという残念な天気。予報どおりか、とがっかりしながらまずはモンパルナスの駅でモンサンミッシェル行きの切符を手配することにする。私の買った2冊のガイドブックでは説明されていなかったのだが、フランスの鉄道SNCFではTGVとバスを組み合わせたモンサンミッシェル行きの切符を買うことが出来る。ルートは2種類、TGVでレンヌまで2時間、そこからバスで1時間20分、もしくはTGVでドル・ドゥ・ブルターニュまで3時間、バスで30分。どんなバスか分からなかったので列車の一等のほうが快適に違いないと思い、ドル経由で行くことにした。海外の知らない駅に行くと窓口で切符を買うという何でもないことでも小さな冒険のようで達成感がある。(7月4日からはスケジュールが変わるらしい。)

その後、曇り空をにらみながらメトロでシテ島まで行ったのだが、サント・シャペルの入り口は長蛇の列。それに恐れをなしたのに加え、ここはステンドグラスが有名なので曇りでは感動が少ないかもと自分に言い訳して出直すことに。駅の出口から伸びるフラワーマーケットでプラントやかわいらしいお土産を見ながらをぷらぷらしていたら、結構本格的な雨が降ってきた。潮時かな、と切り上げて帰ることに。

この日は、ホテルの近くで見つけたモノプリ(衣料品や文房具なども扱うスーパーマーケットのチェーン)で部屋のアメニティになかった箱入りのティッシュ、化粧コットン、ちょっとアバンギャルドなストッキングやお土産によさそうな文房具などもゲットして、そこそこ満足。(さらに続く)


カラフルな文房具たち

2010年フランスの旅

2010年05月22日 | 通訳者のひとりごと

海外で会議があるとき、前後に数日間観光を入れることがある。去年は3回の出張のうち、最後のバリ島だけ3日ほど早めに現地に入った。ホテルのスパでマッサージを受けたりプールサイドのパラソルの下で水着でペーパーバックを読んだり、ひたすらだらだらと過ごして大満足だった。

定例の春の会議が今年はフランスのエビアンで行われることになった。最寄の空港はジュネーブだが日本から直行便はない。そこでエールフランスでパリまで飛んで、少し遊んでから現地入りすることにした。

始めてパリを訪れたのは8年ほど前。オルセー美術館で丸一日過ごして、赤い特急タリスに乗ってアムステルダムの知人を訪ね、パリに戻ってさあもう1日美術館めぐりをしようと思ったらCNNで「パリが麻痺しています」のニュース。美術館から公共交通機関から航空会社の一部までゼネスト。フランス語が分からないとこういうことの情報が事前に分からなくて困る。歩いて回れるところだけ観光しても良かったのだが、インターネットで調べると乗るはずのジュネーブ行きのフライトがあおりを食ってキャンセルになっている。それを何とかしなくてはいけなくて、結局ホテルの部屋にこもって過ごすことになった。

2度目は確か4年前だと思う。いろいろな美術館、博物館にスムーズに入れるカルトミュゼというチケットを買ってルーブルやらオランジュリーやら手当たり次第に美術館めぐりをした。メトロも回数券を買って使い方にもすっかり慣れた。そのメトロの車内に “Do you speak English? … Speak Wall Street English!” という英会話のポスターが(破られもせず)貼られていて、しかも明らかに英語を話してくれるパリジャン・パリジェンヌが大幅に増えていて驚いた。

そして3度目となる今回の目的は世界遺産。モンサンミッシェルとベルサイユ宮殿を制覇したい! ところが日本を出る前の天気予報では、滞在期間中ずっと雨の予報。以前ミュンヘンからノイシュバンシュタイン城へのバスツアーに参加した時、ずっと曇りでお城に到着した頃には大雨になり、場内の見学も外からの光が入らないのでなんとも暗い雰囲気で「天気は大事だ」と痛感したことがある。とても残念だが航空券もホテルも予約済み、ええい、ままよ! の気分で出発した。

ところが到着してみると、本当に雨が降ったのは翌日1日だけで、あとはすばらしい快晴になり、私は心の中で快哉を叫びながらいそいそと今日はベルサイユ、明日はモンサンミッシェル・・・と美しい春のフランスを満喫することになったのだ。モンパルナス駅の近くに宿を取ったのも想像以上の大正解だった。 ・・・それにしてもこれほど外れる天気予報に何か意味があるのだろうか? (続く)