みりおんの連載ネット小説

ラブコメ、奇想天外etc。一応感動作あり(かも?)

笑って泣いて驚いて。スッキリしちゃうかもしれないオリジナル小説のご案内。

私の創作書き物です。
コメディ要素を多く含んでおりますので、気軽に読んで頂けたら幸いです。
タイトルをクリックして下さいませ。
このブログでも読めますけど、順序良く最初から読めるように、
投稿している他サイトに飛んで読めるようになってます。

●ネットの恋人(全67話)

●突然の彼女(全45話)

●突然の彼女・エピソード2(全55話)

●突然の彼女3・ファイナルエピソード(全89話)

●ターニング☆ポイント(全5章)

●キスなんかしないでよ(全76話)

●時のイタズラ(全15話)

●あの日の9回ウラ(全40話)

●童貞じゃいられない(休止中)

●ネガティブな恋(全32話)

☆短編読切

●時代のローテーション

●宇宙人日記

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※尚、作品全ての無断コピー・転載・引用は堅くお断りします。
作品の権利は全て、作者である私(million_hearts、別名ヒロヒトJJ)にあります。

その16 実行犯・世良拓真(せらたくま)

2008年05月19日 23時28分03秒 | G:突然の彼女2
             突然の彼女3・ファイナルエピソード

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                その16
              実行犯・世良拓真

 拓真の行動は素早かった。
 いずみが玄関のドアを開けたと同時に走りこみ、閉まる寸前でドアノブに手をかけた。
 拓真は覆面で顔を覆い、正体を隠している。
 いきなり入って来た覆面の男に、大きく目を見開いて仰天するいずみ。
 拓真は間髪入れず、いずみのみぞおちにパンチを入れる。
「う…!!」
 うずくまったいずみの両手をすぐにつかんで後ろ手で縛り、リビングまで引っ張りこんで床に倒し、とどめに再度、腹部に蹴りを入れた。
「うぐっ!ううぅ…」
 呼吸困難で苦しむいずみ。
「よし!これでしばらく動けないだろ」
 その間、ひなたは床にペタンとへたり込み、恐怖で泣きじゃくっているだけだった。
 拓真もそれは予想済み。幼児なんて自力で逃げられるはずもないから、姉さえいち早く黙らせれば、そのあとはどうにでもなる。
 あまりにガキがうるさければ、その場で始末してやろうとさえ思っていた。
 だが、持って来ていた粘着テープでひなたの口を塞ぐと、それほど騒音にもならなかったので、始末する考えはこの時点では遠のいた。

 リビングとキッチンの境目に、不釣り合いなヨーロッパ調デザインの太い柱が2本、吹き抜けの2階の天井まで伸びていて、いずみとひなたはそのうちの1本に体をくくりつけられた。
「おい、金はどこだ?知ってたら今のうちに言っといた方が身のためだぞ」
 拓真は持参して来た包丁の面の部分で、いずみの頬を2度3度と叩く。恐怖で唇が震えるいずみ。そしてそれは体全身への震えにも繋がった。

とその時、誰かのケータイの着信音が部屋に響いた。拓真が音源の元を目で追うと、リビングのテーブルの上に無造作に置かれている一つのケータイがあった。
「お前のかっ?」
 即効で首を左右に振るいずみ。
「だよな。お前は俺が玄関からここまで引っ張って来たんだからケータイをテーブルに置く暇なんかない。とすると…」
 拓真はそのケータイを手に取り、着信相手も見ずに電源を切った。
「ちくしょうめ…誰か帰って来てやがるな…」
 そう呟いて、このリビングの360度を見渡す。緊張と恐怖で静まり返った異様な空気の中、ある方向からのかすかな物音を拓真は聴き逃さなかった。
「あっちは…浴室か?」
 包丁を持ちながらゆっくりと慎重に目的地まで歩いて行く拓真。
「……ぶっ殺してやる!」


 脱衣室で身動きの取れなくなっていた是枝英之の恐怖はピークに達していた。
 風呂上がりの体にはバスタオルを巻いたままの立ちんぼ状態。
 リビングで何か大変なことが起こっていることはすぐに察知できた。
 せっかく今日はいつもより早く帰って来れたから、先に風呂でも済ませておこうと思ったのが今はこんなザマ。しかも足音は徐々にこっちの方へ近づいて来る。
『強盗なのか…それとも殺人犯なのか…』
 実際は数秒のことなのに、気の遠くなるほど長く感じた時間。まさに生きた心地がしないとはこのこと。
 
 ついに脱衣室の扉が勢いよく開かれた。目の前には包丁を持った覆面の男。
「こ…殺さないでっ!頼むっ!お願いだから殺さないでっ!」
 覆面の拓真を見るや、とっさに口から連呼して出た是枝英之の命乞い。
「手を頭の後ろにまわせ!ちょっとでも手をずらしたら殺す!」
「は…はいっ!」
 背中に包丁を突きつけられながらリビングへ連れて来られる是枝。
 そして柱に縛られているいずみとひなたを確認した。
 いずみたちもまた、是枝の姿を見てあぜんとしていた。いつも帰りの遅い是枝が、まさか先に帰宅して風呂に入っていたとは思ってもみなかったのだ。
 不意に是枝の体に巻いていたバスタオルがハラリと解けて床に落ちる。
 すぐに目を背けるいずみ。それでも是枝はバスタオルを拾おうとしない。見かねた拓真が是枝にどなり散らす。
「バカヤロウ!さっさとタオル拾って隠せ!汚ねぇもん見せんじゃねぇ!」
「す、すいませんっ。ではこの組んだ手を外してもいいでしょうか?」
「俺に同じことを2度言わせるな!死にたいのか?」
「ひ、拾いますっ!拾いますから殺さないで下さいっ!!」
 声もひっくり返るほど慌てふためく是枝。
 威厳のある父親らしい姿など、かけらも見当たらなかった。

 いずみはそんな是枝の姿を目の当たりにして絶望的になった。
 頼りにならない義父。情けないほど哀れな声で命乞いする英之。
 いずみが心の中で必死に叫んでいたのは別な人物の名前。

“卓くん…助けて。。卓くん…戻って来て。。卓くん。。”
                (続く)
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その55 エピローグ

2007年11月18日 22時02分53秒 | G:突然の彼女2
            突然の彼女・エピソード2

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               その55
              (エピローグ)             
             サヨナラ愛しい人

 ●森田卓の視点

 食卓に座ってどれくらい経ったろうか。。
 泣きたい気持ちとウラハラに、なぜか1滴の涙も出ない。
 泣く以上のショックで体全体が硬直してる感じだった。
 でもようやく思考回路が少し回復し始めたようで、ふと置時計に目をやり時間を確認した。

 午後3時20分。。。

 お昼にカップ麺を食べようとしていたときから3時間以上過ぎていた。
「ハハ…ウソみたいな話だよまったく(⌒-⌒;」
 僕は苦笑いをしながら大きなため息をつく。

 次に固まっていた体を意識的に動かしてみた。
 イスから状態を起こしたり、手を曲げたり伸ばしたり。。
 
 …なんで僕はこんなバカみたいなことしてんだろう。。(-_-;)

 僕は立ち上がった。とたんに立ちくらみが襲ってきたけど、それは短い時間でなんとか収まった。
 その後、もう一度ゆりかの文面を読み返してみた。
 いや。。一度というのは間違った表現だ。
 僕は10回も20回もゆりかの書いた手紙を繰り返し読んでいた。

 彼女が決めたことだもの。。やっぱり僕がどうこう言えるわけはない。
 僕がゆりかと一緒にいたら、きっとまた迷惑ばかりかけることになるんだ。
 ゆりかはその都度我慢してきた。辛抱強く僕を支えてきてくれた。
 でもそれに対して僕は彼女に何ひとつお返しと言えることなどしていない。
 頼もしい亭主には程遠く、ゆりかをいつも不安にさせてきた。
 僕はゆりかの笑顔のおかげで、会社で嫌なことがあったときも常に救われてきたけど、逆に当の彼女はストレスを溜め込んできたんだ。
 
 そう…僕は最初からゆりかにはふさわしくなかったんだと思う。
 だいいち、こんな僕がゆりかと結婚できたことが奇蹟。同僚たちの言う通りだ。
 この2年間、ゆりかがいたから幸せな家庭生活を味わえた。
 いずみとも仲良くできて、夢のような2年間を経験できたんだ。
 それに比べてゆりかにとっては不幸な2年だったのかもしれない。
 僕と出会わなければ、もっと一流企業の人や青年実業家と結婚できたのに。。
 裕福な家庭の中で毎日着飾ったり、社交界デビューも夢じゃなかったはず。
 それなのに・・それなのにさっきまでヨリを戻そうなんて考えていた僕はまさにバチアタリものだ。

 僕がこれからゆりかに対してできること。。それは罪を償うことだ。
 ゆりかにバツイチのレッテルを貼ってしまう張本人はこの僕。
 人ひとりの人生を僕は狂わせてしまった。その罪はあまりにも大きい。
 正直、離婚なんて芸能人がよくするものだと思っていた。
 なんという浅はかで愚かな僕だろう。救いようがない。

 よし、決めた!僕はもう一生結婚しない!すべきじゃない!

 僕には幸せになる資格はないし、人を幸せにできる人間ではないのがよくわかった。
 万が一、そんなチャンスが訪れたとしても、再び相手を不幸にしてしまうだろう。
 僕はゆりかと結婚できたことで、一生分の幸せと運を使い果たしたんだ。そうさ、そう考えればいい。
 出家して僧侶になるのもひとつの手かもしれないけど、僕が寺の厳しい修行に耐えられるとは思えない。

 これからはゆりかの幸せを願って過ごそう。
 いずみの養育費もできるだけ援助していこう。
 こう前向きに考えても正直胸が苦しい。胸が締め付けられるほど苦しくてせつない。
 恋愛小説によく書かれる表現だけど、本当のことだったんだと今更ながらわかる。

 きっとゆりかも同じ思いをしての決断だろうと思う。
 そして円満な離婚への道を選んだ。そう望んでいるんだ。。
 感情的に別れたくないのは僕も同じ。憎まれて当然な僕だけれど。。
 
 この書類に印鑑を押せば全てが終わる。
 ゆりかも相当悩んで決めたこと。ためらう時間は僕にはない。
 この作業が終わったら…そう、僕もここを引っ越そう。
 僕ひとりではこの部屋は広すぎる。。

 ふと目の前のカップ麺を見た。麺がスープを吸い込んでなくなっている。
 衝動的にあからさまな苦笑いをする僕。

 あ…そういえばレンジの中にもごはん入れたままだった。。

 3時間も経ったごはんなんて、すでに冷たくなっているだろう。
 全く、こんなときでもドジしかできない僕。情けなくて情けなくて大笑いした。
 何の前触れもなく、大声で涙を流しながら大笑いをするしかなかった。
 さっきまで1滴の涙も出なかったのがウソのように。。

 翌日、僕は出勤途中のポストから、自分の手紙を書類に同封して投函した。
 見上げた空は秋晴れ。僕の心とは裏腹にすがすがしい朝。
 顔にピチャッと何かが落ちてきた。
「あ…」
 指でそれをぬぐってみる。ハトのフンだった。

 ダメだこれじゃ…もっと強い男にならなきゃ…
 運の悪い男から脱却しなきゃ…
 そして何事にも動じない男に生まれ変わらなきゃ!!

 僕は口を真一文字に結んで職場への道を駆け足で進み始めた。

 
●森田卓からゆりかへの返信の手紙より

“書類に判を押しましたので、確認の程よろしくお願いします。
 この2年間、こんな僕をよく亭主として盛り立ててくれたことを心から感謝します。
 ゆりかと夫婦であった夢のような2年間は一生忘れることはありません。
 初めて人前で僕のことを“主人”と呼んでくれたときの感激は今でも忘れません。
 短い間だったけど、僕を選んでくれてありがとう。
 僕と結婚してくれてありがとう。
 僕と一緒に過ごしてくれてありがとう。
 可愛いいずみとたくさん遊ばせてもらってありがとう。
 どうか、二人が新しい人生を幸せに歩んで行けるよう、心から願っています。
 大好きなゆりか。僕の人生でたったひとりの彼女であり、素敵なお嫁さんでした。
 今まで本当に…本当にありがとう。
                  森田卓


 こうして僕の結婚生活が幕を閉じた。
 人は一個人として生きている以上、一生何かしらの物語が生まれては消えている。
 たとえそれが平凡で気にも留めない出来事であろうと、あるいは波乱に満ちた複雑な出来事であろうと。。

 でも平凡で慎ましやかな生活なんて、そう長く続かないものなんだろうか?
 この僕が再び激しく感情を揺さぶられることになるのは、今から1年後の話。
 当然だけど、この時の僕にはまだそんなことなど予期できるはずもなかった。
                     (完) 

 ※これにてこの物語は一旦完結しました。
  たくさんの方々のアクセス、コメント、ご愛読誠にありがとうございました。
  そう遠くない時期に続編、
   『突然の彼女3・ファイナルエピソード』
    をスタートする予定です。

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その54 空虚な独り暮らし

2007年11月15日 23時15分03秒 | G:突然の彼女2
           突然の彼女・エピソード2

 前作エピソード1から読まれる方←はこちらから。
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              その54
            空虚な独り暮らし

 ●森田卓の視点

 カップ麺にお湯を入れた。ゆりかと別居してから毎日こればかり。
 でも今日の銘柄はちょっと違う。期間限定の海鮮黒ゴマとんこつラーメンなのだ。
 コンビニで最後の1個を手に入れたときはささやかな感動があった。
 あとは4分待つだけ。。
 ごはんもレトルトのやつ。レンジでチンして暖めるだけ。
 まるで2年前の独身時代に戻ってしまったような気がする。

 不意に、郵便配達人がポストに郵便物を入れてバイクで走り去る音がした。
 ごはんも今レンジにかけたばかりだし、ラーメンができるまでにはまだ時間もある。
 僕は玄関のポストから3通の郵便物を抜き取って、カップ麺のある食卓の前へと舞い戻った。
 1通は家電店のキャンペーン広告。その次はケータイの請求書。
「請求書なんて見なくていいや…」
 僕はラーメンのフタを空けて一口食べようとした瞬間、請求書の下から3通目の封筒の文字が目に入った。
「ゆりかからだっ!」
 僕は割箸を置いて、真っ先にこの封筒から優先して中を開ける。
 そして取り出した1枚の書類に声を失った。

 ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!! り…離婚届!!

 恐れていたことが現実になった。離婚・・・僕が離婚。。。
 
 頭の中がグルグル回る。自分でも混乱してるのかよくわかる。
 そんな中でも、その下にもう1枚の手書きの便箋があるのに気づいた。紛れもなくゆりかの自筆。

“卓さんへ
 あっという間の2年間でしたね。楽しいこともいっぱいありました。
 いずみとも仲良くしてくれて本当にありがとうございました。
 でもお互いがこれ以上悩み苦しまないためにも、これがベストの形だと思います。
 同封した書類に卓さんのサインをして、封筒に書いている住所に返信して下さい。
                              ゆりか”

 僕は口を半開きにしたまま、その場でしばらく固まった。たぶん30分は1mmも動いてないと思う。
 頭の中が真っ白になって思考能力がゼロになった。
 目の前にある期間限定のカップ麺。運良く買えた最後の1個のささやかな感動など一気に吹っ飛んでしまった。
 僕は、のびてゆくラーメンに手もつけずに、ただ漠然とそれを見つめているだけ。
 もうカップ麺など食べ物ではなく、置物でしかないように見える。

 僕に反論は何もない。ゆりかと別れなきゃならないなんてたまらなく悲しい。
 たまらなくせつない。たまらなく悔しい。たまらなく自分が情けない。
 たまらなく泣きたい。もう…たまらない。。
 僕はゆりかに反論できない。反論できる立場じゃない。
 僕はゆりかにそれだけの決意させるほどの行為をしてしまったんだもの。。
 でもできるなら別れたくない。いや絶対別れたくない。
 思考能力ゼロの今でも、かたくなにそう思っている自分がいた。
 なんとかしたい…なんとかしたい。。なんとかしたい!!
 僕はどうすればいいんだ?一体僕はどうすればいいんだ?

 病的なまでに僕は、同じ言葉を心の中で繰り返すばかりだった。
               (続く)
 ※次回、その55は最終回(エピローグ)になります。

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その53 ゆりかの決意

2007年11月11日 22時19分20秒 | G:突然の彼女2
           突然の彼女・エピソード2

現在連載中その1←はこちらから。
前作エピソード1から読まれる方←はこちらから。
               その53
              ゆりかの決意

●森田ゆりかの視点

 このマンションに移ってから初めての土曜日。
 平日は仕事に追われて卓さんとのことを考えなくて済んだ。
 正直、考えたくもなかった。私の人生、今まで悩みの連続だった。ひとつの悩みから解放されるのにどれほどの長い期間がかかったことか。。。
 だから今回の件にしても、毎日が苦しくてたまらない日々を過ごすなんてこりごりだった。早々に別居を決めたのもそのせい。
 でも、はっきりした結論が出ていない以上、今のままでも中途半端なのは確か。。
 今日は何の予定もない休日。気が思いけれど、この先の私たちのことを本気で考える日にしなくちゃいけないのかもしれない。

 今、私の目の前には1通の封筒がある。
 先日、是枝さんからの連絡で手渡されたもの。
 もう何日も経つのに開ける気にならない。
 それは三木綾乃から私への手紙だった。
 是枝さんの話によると、三木綾乃は私にこの手紙を直接手渡すすべがなくて、どうしたらいいか相談を受けたとのこと。
 卓さんを介して私に手渡すのは不自然。その点、是枝さんは、思い出したくもないあの場面の目撃者。事情を知ってる彼ならなんとかしてくれると思ったそうだ。
 卓さんと三木綾乃のその後については、あえて私は是枝さんに聞かなかった。
 とにかく私は今日、この手紙を読もうと決めた。読めば何らかの結論が出せる気がしたから。。

 以下、三木綾乃からの手紙の内容

“突然の手紙ですみません。私はご主人と同じ部署に勤務する三木綾乃と申します。
 先日は宿泊先の温泉旅館にて、あのような恥ずかしい場面を見られてしまい、どうお返事をすれば良いのかわからなくて、私はかなり混乱していました。
 まずは最初に奥様に謝らなくてはなりません。本当に申し訳ありませんでした。
 奥様があの日、同じ旅館にいると知りながら、私はあんな大胆で非常識な行動をしてしまったことを深く反省しています。

 ただ、私と森田さんがお付き合いを始めてからかれこれ半年近くになります。
 最初は私が森田さんを一方的に好きになりましたが、今では彼も私に思いを寄せてくれていると確信しています。
 なぜなら彼はいつも私を拒んだり嫌がったりしたことなど一度もないからです。

 初めてのデートは忘れもしません、○月×日の日曜日でした。
 森田さんと夕方の待ち合わせで、一緒に個室のある和食屋さんで食事をしました。
 私と森田さんが打ち解けるのにそう時間はかかりませんでした。
 彼は食事中に私に覆いかぶさってきました。
 それを酔ってバランスを崩したせいにして、私を愛してくれたのです。
 ちょうどそのとき、お店の従業員さんが部屋に見えて、恥ずかしい思いをしたことが印象に残っています。
 それを考えると、今回の旅館での一件も似たようなことの繰り返しをしてきたのだと、改めて反省している次第です。

 森田さんは、会社でも私の作ったお弁当を毎日喜んで食べてくれていました。
 奥様のお弁当もその後に食べていたわけですから、森田さんが最近太り気味になったのがおわかりかと思います。

 これからの判断は、全て奥様に委ねます。私の軽弾みな行動で、ご迷惑をおかけしたことについては、心からお詫び申し上げます。
 でもどうか森田さんを叱らないで下さい。不倫とわかっていながら近づいたのは私なんですから。。
 つたない文章ですみません。簡単ではありますが、これにて失礼致します。
               三木綾乃”


 私は呆然としてその場から動けなかった。
 なんて失礼な女!!
 この女は不倫を反省して詫びているんじゃない。
 自分が招いた軽はずみな行動を、人に見られてしまってマズかったと言ってるだけ。
 つまり、バレないようにしていれば問題がなかったと言わんばかり。
 それなのに・・そんな女に卓さんが。。信じられない。
 これって、卓さんと三木綾乃が両思いだってことになるの?
 単に卓さんがお人よしで断りきれないだけじゃなかったの?
 本当に卓さんは三木綾乃を愛していたってこと?それが本当の真実?

 私は再度手紙を読み返した。
 ○月×日の日曜日…
 卓さんがいずみの参観日に行った日…
 そして午後からは得体の知れない謎の女にカップル喫茶に誘われた日…
 でも…でも夕方からは確か、新入社員の歓迎会だったはず。。そのために私は卓さんの要求に応じてお金を渡した。

 “一体どういうこと?卓さんはまだ私に隠し事をしていたの?まだウソをついていたの?”

 私はすぐに思いつくまま、是枝さんに直接電話した。
「ゆりかです。突然すみません。ちょっと確認してもらいたくて…」
「はい、いいですよ。なんでしょう?」
「○月×日って、会社の新入社員の歓迎会があった日なのか、わかりますか?」
「あ~、ちょっと待って下さい。僕のスケジュール帳を見ればわかりますから。」
 私の心臓の鼓動が高鳴った。

 もしも歓迎会があったなら、三木綾乃の話は作り話。とんでもない詐欺師の女。
 でも…もしなかったら。。。

「あ、わかりましたよ。その日に新入社員の歓迎会はありませんでしたね。」
「Σ( ̄□ ̄;・・・!!!」
「そうだ!僕も思い出しましたよ。たしかその日は午後から僕がゆりかさんの家にお邪魔した日じゃないかと思いますが。」
「え、ええ…確かにそうですね。。」
「なら間違いないです。僕はその後まっすぐ帰宅した記憶がありますし。」
「そう…ですか。。忙しいところどうもありがとうございました。」
「ゆりかさ…」
 私はすぐに電話を切って放心状態になった。
 もうこれ以上、誰の言葉も聞きたくなかった。

 ___その数日後
 
 私は卓さん宛てに一通の封筒をポストに投函した。
                (続く)
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その52 円満な別居

2007年11月08日 23時31分59秒 | G:突然の彼女2
           突然の彼女・エピソード2

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               その52
               円満な別居

●森田ゆりかの視点

 通勤にも便利ななマンスリーマンションを見つけた。
 とりあえず明日、いずみと私はここを離れる。
 実家には絶対帰りたくなかった。
 結婚当初から卓さんを好ましく思ってないパパが『ほらみろ、だから言わんこっちゃない!こうなるのはわかってたんだ!』と責められるのは目に見えているから。
 でも私はあのとき、心の底から卓さんと結婚したいと思っていた。ずっと好きでいられると思っていた。正直それは今でも。。。
 
 卓さんが会社の慰安旅行から帰宅したあの夜から今日で1週間。
 そしてそれは夫婦生活の最後の1週間になるのかもしれない。
 でも私たちはこの間、普通の夫婦でいられた。
 普通の人が聞いたらおかしいと思うかもしれないけど、穏やかな1週間だった。
 卓さんもあの日以来、泣いたり謝ったりはしていない。
 でもそれは私が1週間前にそうお願いしたからなんだけど。。

「卓さん、私といずみの住む場所が決まるまでは幸せな家族でいましょう。」
「・・・幸せ?」
「別に私たち、憎み合って別れるんじゃないもの。」
「ゆりかは僕を恨んでないのかい?」
「恨んでなんかないよ。卓さんの性格からして、そういうもんなのかなぁって思ってるだけ。」
「でも…許してもらえないんだよね?だから別居しちゃうんだよね…」
「ごめんね。私の精神が持たなくなっちゃいそうなの。わかって。だから卓さんももう謝らなくていいから。」
「全部僕のせいなんだよね。。」
「ねぇ、もうよしましょ。私、円満別居したいの。悩むのも疲れたわ。だから泣いて別れたくないの。」
「・・うん。わかった。。なんとなく。」


 こうしていよいよこの家から離れる日が来た。
 マンスリーマンションの方は家財道具が大抵揃っているので、私といずみの荷物は最小限にまとめて出ることにした。
「ゆりか、足りないものがあったらいつでも連絡して。すぐに持って行くから。もちろんいつでも取りに来てもいいし。」
「ええ、そうするわ。」
「うんうん、そうしなよ。別に離婚するわけじゃないんだしさ。ただの別居だもんね。ハハ…(^_^;)」
 いかにも苦し紛れな彼の言い分。
「そう…ね。。今すぐにはまだ…ね。」
 正直、私もまだ迷っているし、正式に離婚するかどうかの決断はできないでいる。
 むしろこの1週間、彼の真摯な態度を見ていると、余計に判断を鈍らせた。

 私といずみは玄関の外に出た。卓さんは玄関の中で私たちを見送ろうとしている。
 いずみにはちゃんと説明したつもりだけど、わかってくれたかどうか・・・
 どうか彼女がグレたりしませんように。。
 困ったときの神頼み。でも困ったときにしか頼まないなんて神様に失礼よね。。
 こんなことをふと思いながら空を見上げる。

 曇り空・・・今の私の心境と同じ。。

 そんなとき、突然いずみが私に言った。
「ママ、卓くんとチューはしないの?」
「え?何よいきなり。」
「だって、ケンカしたんじゃないんでしょ?」
「そうだけど・・」
「今日までずっと仲良かったじゃん。ママと卓くん。」
「・・・・」
「大人の事情はよくわからないけど、嫌いじゃないならお別れのチューくらいしなよママ。」
「でも・・」
「卓くんはママが嫌いなの?」
「え?そ、そんなことはないよ。ママのことは…大好きだよ。いずみがママを大好きなように、僕もそれ以上にママが大好きだよ。」
「なんか変なの。それなのに何で別々に暮らすの?」
「…色々あってね。ごめんねいずみ。」
「アタシはママと一緒ならそれでいいけどね。」
「あら(ノ _ _)ノコケッ!!」
「でもね、ちょっぴり寂しいかな。」
「えっ?」
「卓くんのドジにはよくイラッとしたけど、いつも優しくしてくれたもん。」
「アハハ(⌒-⌒;・・」
「学校の参観日に来たときは大嫌いになったけど、今は好きかもw」
「ありがとう。」

 いずみが私の腕を引っ張って卓さんのの元へ寄せようとする。
「じゃあお二人さん、お別れのチューをどうぞ!アタシはあっち向いてるから今のうちにね!」
「もう、いずみったら…」
 私はいずみに目をやってから卓さんの方へ遠慮がちに向き直った。
 その瞬間、いきなり彼に抱き寄せられて唇と唇が重なった。
 反射的に目をつむってしまう私。。抵抗などできなかった。


 その二人の様子を気づかれない距離から双眼鏡で見ている人物がいた。
 彼は憎らしそうにチッと口を鳴らして地面にツバを吐く。
「こりゃまずい。元さやに戻っちまいそうだ。もっとすんなり別れると思ったが…くっそぉ~なかなか思い通りにならないもんだな。」

 そう、このバチ当たりな言葉を口にする男は、紛れもなく卓の同僚であり、仕掛け人でもある『是枝』その人であった。
「でもまぁいい。まだここに切り札があるし( ̄ー ̄)フフ」
 是枝は自分の内ポケットから、1通の封筒をちょっとつまんで目で確認した。
「これをあとでゆりかさんに見せてあげるとしよう。( ̄ー ̄)」
                (続く)
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その51 お互いのために

2007年11月06日 23時52分16秒 | G:突然の彼女2
            突然の彼女・エピソード2

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                その51
              お互いのために

●森田卓の視点

 翌朝、ゆりかはすでにいなかった。
 フロントに尋ねると、7時にはチェックアウトしたことがわかった。
 僕だってすぐに帰りたいのは山々だけど、会社の慰安旅行は別名、研修旅行でもあるため、この日は数箇所、各種工場見学の予定になっている。
 組織の一員である以上、勝手に抜けて帰るわけにはいかない。

 結局、夕方までのスケジュールをこなしたものの、ゆりかのことがたまらなく気になるあまり、どこを見学何したのかも頭の中から飛んでいた。。
 その間、三木さんの遠目視線は感じていたが、僕はそれを無視した。また、彼女の方から話しかけてくることもなかった。

 帰宅は6時ごろ。
 僕は玄関前で躊躇していた。入ろうとしてもすぐには入る勇気がない。
 僕の先走りな妄想が勝手に一人歩きしてゆく。

 ゆりかはショックのあまり帰宅してないんじゃないか?
 それとも荷物をまとめてすでに出て行ってしまったとか?
 だとしたらやっぱり実家に戻ってあの怖いお義父さんに報告するだろう。
 (゜ロ゜; 三 ;゜ロ゜)ヒイイイィィ

 こうしていつまで玄関先にいても仕方ない。
 僕は覚悟を決めてそっと玄関の扉を開けた。
「おかえりなさい。」
 ゆりかが目の前に立っていた。
「うわっ!いたっ!」
「どういう意味?」
「いや、その・・」
 言葉の出ない僕がすぐに思い立ったこと。何よりもそれは土下座することだった。
「ごめんなさいっ。もうしません!絶対しませんっ!本当にごめんなさい!」
 十数秒間の空白の時間。。やがてゆりかが口を開いた。
「とりあえずリビングに来て。少しお話しましょう。」
至っておだやかな口調のゆりか。笑顔のないのは当然だけど、怒りの感情も感じられないのが気になった。
「いずみは?」
「まだ実家。さっきもう一日預かってもらうようにお願いしたから。」
「…そうなんだ。。」

 テーブルを挟んで座った僕とゆりか。
「卓さん、お茶飲む?」
「あ、僕が入れようか?」
「じゃお願い。」
「えっ?」
「入れてくれるんでしょ?お茶」
「あ…うん。。」
 こうもあっさり『じゃお願い』なんて言われたのは初めてだ。
 今までは『私が入れるからゆっくりしてて』とか『いいの?ありがとう』
なんて、優しい返事をくれたもんだけど、今の僕の立場ではこれが当然の結果だろう。

 お中元でもらった高級なお茶を、僕とゆりかは無言で最初の一口をすする。
 少し間があって、ゆりかが第一声を出した。
「卓さん…私、少しここから離れて考えてみようと思ってるの。」
「!!!」
 それはわずかながら予想はしてた言葉だった。
 けれどそれを直接聞いた瞬間、僕の心の奥底にその言葉がズシンと突き刺さった。
「ごめんね。僕が100%悪いよ。それは認めるからさ。」
「・・・・・」
「別にあの子が好きなわけじゃないんだ。僕がいつも一緒にいたいのはゆりかだけなんだよ!だから。。」
「信じたい。信じたいけど、あんな場面を見せられて信じることなんて…」
「だから僕が大バカ者なんだよ。拒否すればいいことなのに、いつも決断する前に人に呑まれてしまうんだ。」
「卓さん…そこなの!そこも私には耐えられないの。」
「え・・?」
「たとえ浮気が本当じゃないとしてもよ、判断が曖昧だと人に疑われても当然でしょ?」
「・・うん。。」
「今まであった卓さんのドジの数々はまだ許せた。でも騙されたり利用されるのは絶対にイヤ!」
「・・・・」
「卓さんは人が良すぎるの。あの写真にしてもまんまと騙されそうになったわ。未だに誰が仕組んだのかわからないけど、なぜターゲットが卓さんなの?」
「それは…僕もわからないけど。。」
「一難去ったと思ったら次はこれ。浮気が事実でもウソでも私が悩むのは同じこと。卓さんといたら色んなことに巻き込まれ過ぎるの!」
「・・・ごめんね。僕のこの優柔不断な性格のせいで。。」
 
 ゆりかはここでお茶の二口目をすすった。
「私、ずっと考えてたの。昨日の夜から泣き明かした朝も…そして今日一日この時間までね。」
「・・・・」
「卓さん、私の方こそごめんね。」
「えっ?」
 なんでゆりかが謝るだろう?僕の不安が更に高まった。
 それは紛れもなく、夫婦生活終焉を意味する最大の不安。。

「人の持って産まれた性格は直るものじゃないわ。私が卓さんにどうこう言うのは間違ってるかもしれないって思ったの。」
「そんなことはないよ。もっと言って…」
「いいえ、私が卓さんの性格をちゃんと把握できなかっただけ。理解してたつもりだけど、それに耐えられなかっただけ。」
「ゆりか…そんなこと言わないでよ。。」
「ごめんね、卓さん。私が至らなくて。。これからはは伸び伸び生活してね。」
「そんなぁ…離れるっても少しの間だけってさっき…」
「私の心の整理がつくまでね。」
「整理がついたら戻って来るんだよね?」
「・・・卓さん、大好きだったよ。。」
 ゆりかの語尾が急に震えて…そしてあっという間に彼女の目から涙が零れ落ちていた。
「ゆりか…そんな過去形な言い方しないでよ。。謝り足りないなら何十回でも何百回でも謝るから。。お願いだから。。」
 僕も気づくと鼻がグチユグチュになりながら泣いていた。
             (続く)
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その50 サイテーな男

2007年11月03日 21時30分47秒 | G:突然の彼女2
             突然の彼女・エピソード2

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                 その50
                サイテーな男

 ●森田卓の視点

 僕はとんでもないことをしてしまった。
 本当にもう取り返しがつかない。
 バレなきゃいいやなんて一度も思ったことないのに…
 こんなことする気なんて全然なかったのに…
 
 僕の心の油断だ。いや、優柔不断な僕の意志の弱さだ。
 はっきりものが言えない僕の性格のせいだ。
 いけないと思うことをはっきり断ることさえできない愚かな僕。
 全て僕が悪い。僕が100%悪いんだ。
 ドジしたときも、いつも反省や後悔ばかりが先に立って、未然に防げないでいる不注意者。
 僕はゆりかを裏切ったことになるんだ。
 しかも彼女を相当傷つけて。。

「あぁ…どうしたらいい?僕はどうしようもない大バカ者だ!」
 僕は頭を抱えてうずくまる。
 そばでしばらく静観していた是枝君がそっと言う。
「森田さん、すぐに奥さんの部屋へ行った方がいいですよ。」
 もっともな意見だけど、行って僕の口から何が言えるだろう?
 呆然と立ち尽くすだけでたぶん何もできない。
 謝ってすむ問題でもない。でも謝らないともっと悪い。

「あぁ~もうっ!!」
 このハプニングで僕の頭は混乱するばかり。判断ができない。
 でも行くしかない。何を言われても謝るだけだ。言い訳は無意味だ。

「奥さんのところに行っちゃうの?」
 不意に三木さんが声を出した。
 ショックな僕にこの無神経な質問はさすがにカチンときた。
「君は僕の家庭に絶対迷惑はかけないって言ったじゃないか!それがなんでだよ!」
「ごめんなさい…大丈夫だと思ったのに。。」
「なにがだいじょうび…」
 興奮のあまりにこんな場面でかんでしまった。( ̄Д ̄;;
「と、とにかくゆりかのところへ行くよ。」
 僕は早足で部屋を出た。


 ゆりかはふとんに顔をうずめて泣いていた。
 体も丸めて泣きじゃくっていた。
 改めて後悔の念が押し寄せる。
 僕はなんてことをしたんだ。。
 僕にとって最大の伴侶のゆりかを泣かせるなんて。。
 僕はサイテーの男だ。

「ごめんねゆりか。。許してくれるとは思ってないけど…本当にごめん。」
「うっうっ・・うっ・・」
 たぶん僕の声は聞こえてるとは思うけど、ゆりかはただ泣いているだけだった。
「言い訳はしないよ。でもあんなことする気は全然なかったんだ。」
「それが言い訳じゃない。」
間髪入れず、ゆりかが突っ込みを入れた。
「そうだね。。ごめん。もう何も言わないよ。」
 僕はゆりかのすすり泣く声だけを黙って聞いていた。

 2、3分程経ったろうか・・
 ゆりかがふとんからほんの少しだけ顔をずらして口を開いた。
「・・・あの女の人が好きなの?」
 僕は速攻で返事をする。
「いいや、好きじゃない。」
「好きでもない人と寝る人だったの?卓さんて。」
「そうじゃないよ。向こうから急に無理矢理。。」
「そんなの断ればいいだけじゃない!抵抗できないほど腕っ節が強い女なの?」
「いや・・そんなことは。。」
「じゃあ好きだってことでしょ?」
「それだけは違う。僕は三木さんに何の感情も持ってないよ。」
「もういい。一人にして。」
「ここにいるよ。ずっと。」
「私がイヤなの。お願い。出て行って!」
「・・・・・うん。。ごめんね。。本当にごめんね。。」
 僕は部屋を出るしかなかった。今はそうするしか。。
             (続く)
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その49 覚悟の上で

2007年10月28日 23時20分24秒 | G:突然の彼女2
           突然の彼女・エピソード2

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              その49
              覚悟の上で

●森田ゆりかの視点

“何!?何なの?この目の前にある光景は!?”

 私の頭の中が真っ白になった。
 呆然と立ち尽くす私。
 
 さっき是枝さんから届いた信じがたいメール。
“今、三木綾乃と森田さんが部屋に一緒にいるようです。その目で確かめますか?ショックを受けるかもしれないので、無理には薦めませんが”
 まさかまさかの事態。私は三木綾乃という女性とはどんな人なのか、遠めからでも一度は確認しておきたいがためにこの旅館に来ただけ。
 
 “それなのに…同じ旅館に私もいるのに、何でこんなことが起きるの?”

 そんな場面なんて見たくもない。でも黙認してこの部屋で1人苦しみもがいてるなんてもっとイヤ!
 私は更なるショックを覚悟で是枝さんに返信した。
“すぐに彼の部屋行きます”

 部屋に近づくに連れて高鳴る胸の鼓動。
 心臓が口から飛び出るくらいという表現の意味がわかる気がした。
 
 部屋の前に着くと、是枝さんがドアの外に立っていた。
「余計なメールだったかもしれませんね。申し訳ありません。」
「いいんですそんなこと。でも是枝さんは卓さんと同室なのになぜこんなことに?」
「いや、僕は部長にマージャンに誘われてたんで、朝まで部屋には戻るつもりはなかったんです。たぶん、三木綾乃もそのことには気づいてたのかもしれません。」
「そう。。」
「僕がちょっとトイレで抜け出して、廊下に出たとき、彼女がこの部屋の方に歩いて行く後姿を見まして、こっそり跡をつけたらやはり。。」
「・・・・」
「僕はゆりかさんに連絡するかどうか悩みました。一旦は部長の元に戻りましたが、気になって仕方ないので、30分くらいしてから口実を作って三木の部屋を尋ねてみたんです。」
「・・・・」
「が、案の定いませんでした。同室の子に聞いても部屋には一度も戻って来てはいないと。。」

 もうここまで聞けば、卓さんと三木綾乃はこの中にいるのに疑いはない。
「僕がドアを開けましょうか?」
「・・・いいえ、私が開けます。」

 こうして私の目に飛び込んで来た光景が今のこの現状。
 地べたの畳に男女二人が重なっている。男は紛れもなく卓さん。
 恥ずかしげもなく、部屋は煌煌と明かりが点いたまま。
 彼は仰向けで、その上に浴衣のほどけた女がまたがり、ドアに背を向け積極的に…
 私は声を出すことさえできないでいる。
 無我夢中なのか、私と是枝さんが入って来ても気づかないバカ女。
 先に気づいたのは卓さん。私を見るや彼の目は大きく見開いて、表情が一瞬にして青ざめた。

「あっ!ゆりか…」

 卓さんはすぐに女を払いのけて起き上がった。
「違うんだよこれは…これはその…」
 説明に困っている卓さんに、払いのけられた女がまた彼の足元にしがみつく。
 その表情には驚きや仰天などみじんも感じられず、ただ彼だけを見ていた。
「ちょっと三木さんてば…」
 彼が口走った言葉で三木綾乃だということが確認された。
 それにしてもなんだろう?この女。
 私がいるのになぜ平気でこんなことを?それともわざと?
 まるで夢遊病者。目がうつろでよどんでいるように見える。

 もうこの場にはいられない。こんなところで説明も聞きたくない。
 私はこの場を駆け抜けるように後にした。
 こみ上げる涙で目がかすむ中、やっとのことで部屋に戻るなり大声で泣いた。
 もうこれは決定的。。

 信じてたのに・・・
 信じてあげたかったのに・・・
            (続く)
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その48 超えた一線 

2007年10月26日 23時20分28秒 | G:突然の彼女2
            突然の彼女・エピソード2

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               その48
              超えた一線?

●森田卓の視点

 戻った部屋のドアを開けると、豆電気のような照明だけが点いていた。
 うす暗くて人の気配は感じられない。
「あ、そっか。まだ是枝君は宴会場かぁ。ヤバイ!部長が万歳三唱する前に僕も戻らなきゃ。」
 僕は部屋を出ようとして振り返った瞬間、いきなり目の前に人が立ちはだかっていた。
「うわっ!\(◎o◎)/」
 僕はびっくりして後ろにしりもちをついてしまった。
「み、三木さんっ!!なんでこんなところに!?」
 彼女はまどろむような目つきで一歩部屋に入り、後手でドアを閉めた。
「三木さん、どうかしたんですか?」
 僕はしりもちをついた態勢のまま質問を投げかける。
 彼女はそれに答えずに、壁のスイッチを押して部屋の明かりを点けた。

「森田さん、このときを待ってました。」
「はぁ?どういうこと?」
 三木さんは浴衣姿で髪はアップにしている。
「お願いです。今夜私を抱いて下さい。」

Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lえええええええええええっ??

「夜を二人だけで迎えられるのはこういうときしかないんです。」
 三木さんはそういうと、アップにしていた髪を下ろした。
「いや、そう言われてもちょっと。。」
 彼女は僕のそんな言葉など聞く耳も持たないようで、しりもちをついている僕の上にいきなり重なってきた。
「ちょっと…困るよ三木さん。酔ってるでしょ?」
「森田さんのぬくもりを感じたいの。。」
「やばいって!是枝君が来たらまずいことになる。」
「あの人は部長たちと徹夜マージャンするから戻らないわ。」
「Σ('◇'*エェッ!?聞いてないよそんなの。」
「森田さんもマージャンできるの?」
「いえ、できません(^_^;)」
「じゃあいいじゃない。これは神様がくれたチャンスよ。」
「僕にはピンチなんだけど( ̄ー ̄; ヒヤリ」
 
 三木さんは僕の上で浴衣を脱ごうとした。
「ダメだよそんなことしちゃ!」
 僕は必死で、ほどけて開いた彼女の浴衣を両手でつかんで胸を閉じようとした。
 それでも三木さんは激しく抵抗するので、思わずつかんだ胸元から真横へ投げ飛ばしてしまった。
 まるで柔道技が見事に決まったような1本勝ち。
「わっ!しまった( ̄Д ̄;;…だ、大丈夫?三木さん?」
 こんなことしちゃったら間違いなく彼女は怒るだろう。
「ちっともやさしくないのね。森田さん。」
 三木さんが起き上がりながら言う。
 ほら来た!さすがに怒るよなやっぱり。。
 でも、申し訳ないことはしたけれど、これで部屋から出て行ってくれるかもしれないし、僕に弁当も作って来なくなるかもしれない。
 だとしたらこれで良かったんじゃないか?うん、そうだよ。良かったんだ!

 と・・・そう思ったのが非常に甘かった。(⌒-⌒;


「私、森田さんのワイルドな一面が見れて嬉しい!」
「((ノ_ω_)ノバタ なんでやねん!」
「私、少し冷たくされる方が好きなの。森田さんが私の理想に更に近くなったわ。」
「んなアホな。。( ̄Д ̄;;」
「心配しないで。私、前にも言ったけど、森田さんの生活に迷惑をかけるつもりなんて全然ないの。」
「そうでもないような。。(⌒-⌒;」
「森田さんの家族の用事がないときに、たまに会ってくれるだけでいいの。」
「でも今日は…三木さんも見たでしょう?僕の奥さん。」
「ええ。キレイで可愛い奥さんね。」
「だから僕はこれからまたそっちに戻るんだ。家族の用事なんだよね。。ここにはそれを是枝君に伝えに来ただけなんだ。」
「是枝さんは戻らないもの。。お願い!もう少しだけここにいて森田さん。」
「そんなこと言ったって。。」
「朝までは長いわ。私が1、2時間くらい森田さんと一緒にいたって、独占したことにはならないわ!」
「すごい言い訳。。( ̄ー ̄; ヒヤリ」
「森田さんは何もしなくていいからそのままじっとしてて。」

  それって…されるがままってことかい?(^□^;A

「それともまた私を投げ飛ばす?レディに対して失礼よ。 (o^-^o) ウフッ」

 会社ではいつも控え目な三木さんの異様な変貌ぶりに、僕は一抹の不安を感じた。
 このまま僕が拒み続けたら、彼女は逆上してしまいそうな勢いだし、またそんな目つきをしている。
 僕はともかく、ゆりかに危害が加わったら大変だ。あるいは三木さん自身が勢い余って自殺さえしかねない。

 ごめんねゆりか。。これは浮気じゃないんだ。決して浮気なんかじゃ。。

 三木さんがまどろむ目でゆっくりと僕に唇を重ねてきた。。
            (続く)
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その47 夫婦の会話 in 旅館

2007年10月22日 10時40分33秒 | G:突然の彼女2
          突然の彼女・エピソード2

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              その47
           夫婦の会話 in 旅館  

 ●森田ゆりかの視点

 ちょっとした騒動が一段落して、ようやく私と卓さんの二人きりの時間になった。
 部屋食を頼んでおいたので、すでにテーブルの上にはお膳が運ばれている。
「卓さん、少しあげるから一緒に食べましょう。」
「僕は宴会で食べたからいいよ。ゆりかのまで食べなくたって…」
「そう、じゃあ飲むのは付き合ってね。」
「うん。それはもちろん。」

 私が食べてる間、卓さんはひたすらビールを飲んでいた。
 アルコールばかり飲んでおつまみを食べないのは体に悪いと思った私は、さっきと同じ一言を口にする。
「少しあげようか?」
 するとまた似たような答え。
「いいよ。ゆりかのだもん。お腹も減ってないし。」
 そう言いながらも卓さんはさっきから料理をチラ見してはビールをあおっている。
 こういうときの彼はやっぱり食べたいのを遠慮しているだけ。
「卓さん、私このお魚苦手なの。食べてくれない?」
「え?でも…」
「私も食べれないから残すともったいないじゃない。」
「…そういうことなら仕方ないし…じゃ僕が食べようかな(´~`*)テヘへ」
「ありがとう。助かるわ。」
 こうしてあげれば卓さんは遠慮というストレスから解放される。

 程よく酔いもまわった頃、卓さんがグラスを置いて私に謝った。
「ゆりか、さっきはごめん。また不審人物に間違われちゃってさ。」
「いいのいいの。もう慣れっこだから。」
「慣れっこ・・・(⌒-⌒;だよね、もう10回くらいあるもんね。。」
 そう、確かにそれくらいはあるかもしれない(^_^;)
 でも卓さんは悪いことをしているわけじゃない。たとえ原因が彼であっても。

 人を責めてもしょうがない。卓さんが謝ったのを期に、私も少し反省したことを彼に伝えた。
「それより、私の方こそ卓さんに悪いことしちゃったって思ってたの。」
「へ?(・_・)どんな?」
「私がさっき卓さんの会社の宴会場に行ったときのことよ。」
「あーあのとき?でも何か悪いことした?」
「私、皆さんの前で失礼なこと言っちゃったでしょ?」
「(?_?)はて?ゆりかが何言ったっけ?」
「もう…また恥ずかしいこと言わせないでよ…(*v.v)」
 この一言にどうやら卓さんは気づいたようだ。
「あーわかった!『今はエッチしません。もっとあとでゆっくりヤリますからって』って言ったこと?」
「そこまでリアルな表現はしてませんっ!!(^□^;A」
「そんなの気にすることないよ。夫婦だもん。」
「そうじゃなくて、あそこにいた会社の人たちって、ほとんど私たちの結婚式にも来てくれた人じゃない。」
「まぁそうだけど。」
「さっきの一言で私の印象が悪いと、卓さんにも迷惑がかかるかなって。。」
「そうかなぁ?」
「そうよ。私がタカビで恥じらいのない女だって解釈されたら。。」
「それはないよ。」
「卓さんが家でも尻に引かれてるって思われないかしら?」
「そんなの勝手に思わせとけばいいじゃん。」
「卓さんがまたからかわれるじゃない。」
「あ・・見てたの?宴会場。」
「ちょっとね。いつも会社でもそうなのかなって思っちゃった。」
「ヘ( ̄ω ̄|||)ヘぎくッ!…まぁ、パシリはやらされてるけどねw」
「やっぱり…」
「いいんだよそれは。僕はこういうキャラだし、結婚する前から同じなんだ。」
「でも…」
「それに理不尽なことにも慣れてるし、僕もよくドジるから同僚に迷惑もかけてるしね。あいこみたいなもんなんだ。」
「そう。。」
 卓さんはケロッと言ってのけた。どうやらストレスを溜め込まないコツを会得してるようで、逆に私は彼を頼もしく思えた瞬間だった。

「あ、そうだ。是枝君に言っておかないと。。」
 卓さんが立ち上がった。
「どうしたの?」
「うん。同僚の是枝君って人と同室なんだ。」
「行っちゃうの?」
「すぐ戻るよ。ゆりかもさっき言ったじゃん。あとでエッチするって。」
「バカ…(*v.v)」
「だから一言報告しておかないとね。」
「うん。じゃあ待ってる。」
 
 こうして卓さんは部屋から出て行った。
 でも、すぐ戻ると言ったわりには30分も時間が経っていた。
 ちょうどその時、少しだけ不安を感じ始めた私のケータイにメールの着信音が。。

   “是枝さんからだ。。一体何?”

 私はメールを開く前から胸騒ぎを感じていた。
           (続く)
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