ネットの恋人
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第27話
行き場のない栗山いずみ
権現京二が自分の部屋でネット検索をしていると、突然PM画面が開いた。
めったに人から話しかけられることのない権現は、びっくりして名前を確認する。
robin830:権現君いる?
それは彼が昔からひそかに思いを寄せていた栗山いずみに他ならなかった。
すぐにログで返信する権現。
gongen:おう!今テレビ観てた。
robin830:あ、ごめんね。邪魔しちゃったかな?
gongen:いや別に。Mステ観てたんだけど、今日のゲスト歌手はつまらんし。
robin830:そう。私今テレビ観れない状況だから。。
gongen:ん?どうした?幸村の部屋にいるんじゃないのか?
robin830:・・・違うよ。
gongen:は?じゃどこにいる?
robin830:リビング。
gongen:幸村とチャットでケンカでもしたのか?
robin830:そうじゃないけど・・でもそれに近いかも。
gongen:まずいじゃんか。奴と話しが途絶えたらお前の存在を調べるきっかけが消えるだろ?
robin830:だって彼は今部屋で・・
gongen:???・・お前が部屋にいられないようなことをしてるってことか?
robin830:・・・うん。。
gongen:あぁ・・わかった。なるほどね。。でもさ、それって・・今に始まったことじゃないだろが?
robin830:Σ('◇'*エェッ!?何で?一星は今までにこんなことはしなかったよ!
gongen:そんなはずはない!社会人の男が今まで1度もひとりHしたことないはずがないっ!
robin830:(ノ _ _)ノコケッ!!違うわよっ!何勘違いしてんのよっ!
gongen:(・_・)エッ...?違ったの?あらら、俺はてっきりまた。。
robin830:そんなの何回も見てるわよ!それならまだマシよ!
gongen:見てたんかい。。( ̄ー ̄; じゃあ一体部屋で何が起きてんんだよ?
robin830:・・・一星が女と寝てるのよ。。
gongen: (ノ゜ρ゜)ノ ォォォ・・・それは大胆な!今が真っ最中ってとこか?
robin830:もう知らないっ!
gongen:あー悪い悪い。ちょっとデリカシーに欠けたな俺。でもさ、幸村はお前がいるとわかってて、女連れ込んで来るわけじゃないんだし。。
robin830:わかってたら最低でしょ!
gongen:そうだけどよ。・・・あ、そうだ!いいこと思いついた。
robin830:何よ?
gongen:この前も言ったけど、お前この画面から転送に乗って俺んとこに来てみろよ。
robin830:実験てわけ?
gongen:あぁ。それにどうせ部屋に戻れないし、声も聞こえてきたりして嫌だろ?
robin830:このどスケベ!!
gongen:幸村たちの話し声が聞こえてくるってことだろが!何想像してんだよ!
robin830:あ・・(//▽//)
gongen:とにかく試してみろよ。俺はお前が見えるし、ちゃんと話せるぞ。
robin830:うん。。
こうして行き場のなくなったいずみは権現京二の提案通り、自分の転送テストをしてみることにした。
robin830:じゃこれから転送やってみるね。
gongen:おう!来てみ。
とは言ったものの、権現は散らかった自分の部屋に気づいてハッとした。
『やべっ!片付けてから呼ぶんだった。。』
無造作にバラ撒かれている衣類や雑誌、それに食べ終わったカップめんの空の容器などを慌てて見えない所に押し込める権現。
そして部屋を見渡して簡単なチェックをする。
『よしっ!とりあえずはこれでいいだろ。』
権現が落ち着きを取り戻して再びパソコン側に振り返ると、目の前にはすでに栗山いずみが立っていた。
「うわっ!!もういたっ!」とのけぞって倒れる権現。
「何よ!人をバケモノみたいにっ!」
「いやほんとバケモノかと思った・・」
「ヽ(`⌒´)ノ失礼ねっ!」
権現はゆっくり起き上がって返答する。
「だってさ、お前今日は白装束着てるし。」
「(゜〇゜;)ええっ?何でよ!私、幽霊じゃないよ!」
「自分が死んだことに気づかないのが幽霊なんだ。」
「ちょっとそれマジで言ってるの?」
「いやウソw」
「もうっ!むかつく!」
「まぁまぁ。ちょっと場を和ませようとしただけじゃんか。」
「全然和んでないんですけど?」
「けどよ。お前が幸村の家から出られたことだけでも気が紛れたんじゃないか?」
「え?う、うん。。そりゃまぁ。。」
「で、なんか俺に話したいことがあるからPM飛ばして来たんだろ?」
「そうなんだけど。。」
「幸村の女に復讐する相談か?」
「バカ!そんな卑怯なことしないわよっ!」
「じゃなんだ?」
「えとね・・一星のお母さんのことなんだけど・・何か感じたことある?」
「ん?あぁ、奴のおかんのことねぇ。。年増に興味ないしなぁ。」
「叩くよあんた(⌒-⌒; そんな意味で聞いてないでしょ!」
「そう直球でばっかり話してたら疲れるだろ?」
「話しが横道にそれる方がもっと疲れますっ!」
「あー、そうですかい。わかりましたよーだ。」
「で、どうなの?一星のお母さんについて。」
「んー、あのとき酔っ払ってたからなぁ。幸村の部屋まで案内されただけだけど。。」
「何も変な所はなかった?」
「そういえば・・やっぱ幸村と同じに見えたかな。」
「どういうこと?」
「存在が薄いような気がした。」
「一星もそう見えるわけね?」
「ああ。幸村の存在の薄さは高校時代から変わってなかったな。」
「その薄いってどういう意味なの?目立たないってことじゃないんだよね?」
「全然違う。だから透けて見えるんだ。」
「Σ('◇'*エェッ!?じゃあその・・裸とか、内臓とか見えるわけ?」
「アホかお前は。そんなの気持ち悪くて見たくもないわい!」
「ごめん。。(^_^;)じゃどんなふうに見えるの?」
「透けて体の向こう側が見えるんだ。」
「ふう~ん。それだけ?」
「それだけさ。何か気がつくことあったのか?」
「そうそうそれ。キッチンの床下倉庫にね。何か異様なものがあるような気がするの。」
「腐った野菜とか?」
「ヽ(`⌒´)ノ何でよっ!真剣に話してるのに!」
「だってムロじゃんか、それ。冷蔵庫代わりだろ?あるいはぬか床か。」
「そんな所から光が溢れ出てくるはずないじゃない!」
「光?電気の灯りじゃなくて?」
「それは絶対に違うわ。それにお母さんの反応も呆然としておかしかったの。」
「(・。・) ほー。。それは興味深いな。」
「ね、ね、そう思うでしょ?だから権現君に調べて欲しいの。」
「どうやってだよ?いきなり幸村んち行って『キッチンの床下見せて下さい。』って言うのか?」
「それじゃただのバカじゃない。口実くらい見つけなさいよ。」
「参ったなこりゃ。。」
「やってくれるの?くれないの?」
「あーはいはい。やりますやります。」
「私、普通の暮らしがしたいだけの。誰からも見えなくて話せなくて食べれなくて遊べなくて友達もいなくて・・・あげくの果てには好きな人まで取られちゃって。。」
「お前、幸村が好きなのか?」
「・・・私だって・・私自身の姿形があったら彼とリアルで付き合うわよ。」
「そうか。。」
「絶対かずぽんには負けない!でも今のままじゃ無理なの。みんなに存在をわかってもらえなくちゃ。どんな可能性でも探り当てて元通りの世界に戻りたい。人に見えない存在なんてもうなっぴら!普通の幸せを求めてるだけなのに、それさえも私には許されないのっ?ねぇ?」
「。。。。。」
急にぶち切れたようにいずみが発奮する。ぞんないずみを見て権現は無理もないと思った。
「きっと前のようになるさ。幸村は薄いが、栗山が俺とクラスメイトだったときは薄くなんかなかったんだ。」
「・・それって何を意味するの?」
「推理でしかないが・・・」
「うん。。」
「たぶん栗山が存在したときが本物で、今の幸村がウソだってことだ。」
「じゃどうしてこんなことに。。」
「何かきっかけがあるはずだ。」
「もしそのきっかけが一星の家のキッチンにあるとしたら。。?」
「そして幸村のおかんもそれに何か関わりがあるとしたら。。?」
「お願い権現君。頼りにしてるの。私を救って。お願いだから。。」
「・・・わかった。。」
(続く)
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