我が家には、一年に一回 私が学童で働いていた時 慕ってくれていた知的障害のあるAちゃんが遊びにきて2泊していく。
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私が学童の仕事を始めた頃、いた男の子だ4年生だっただろうか?時計と扇風機が好きで良く書かされていた。時折 泣くので“♪涙くんサヨナラ サヨナラ涙くん♪”と歌いながら瓶を持って行き「この瓶にAちゃんの涙を詰めておこうね」と言うとニッコリ笑いだす。
他の人が言っても聞かないのに私が接すると機嫌がなおるのだ。きっと相性も良かったのだろう。「Aちゃんは○○さんでないとダメなのね」と他の指導員は半ば諦めていたっけ。
Aちゃんが休んだ日は、何となく物足りなかった。そんなAちゃんが6年生を卒業する頃、北関東に引っ越すと聞いた。車で2時間半かかる。
丁度 娘の女子大の卒業式の朝 娘に「もうAちゃんに会えなくなるんだ。寂しくなるなぁ」と言うと「お母さん 会っておいでよ。住所教えてたら いつか字が書けるようになったら手紙くれるかもよ」と背中を押してくれた。
卒業式の前に気持ちばかり餞別と住所を書いたメモをAちゃんに渡しに行った。
それから2年経ったある日Aちゃんからハガキが届いたのだ。嬉しくて涙が出る程だった。
その夏 母親がAちゃんを連れて遊びにきた。何と弟が出来ていたのだ。ビックリだった。
夫も娘も可愛がってくれた。それから毎年くる様になった。
Aちゃんが20になった頃 元気だった娘が病に倒れ2ヶ月余りで旅立った。
あの時 娘が背中を押してくれなかったら2度とAちゃんに会うことは、なかっただろう。不思議な縁だ。
息子のマンションも娘が見つけた。息子家族は、そこの地区がとても気に入り今年2月終の住処をそこに建てた。これも娘の遺した縁だ。
Aちゃんは、来月で31歳になるそうだ。思い出の学童に行ってみたが跡形もなく住宅街になっていた。人生は、無常だ。常なるものは、何もない。時と共に全ては流れ変わっていく。
