この考察文は、自分のサイトに置いてあった旧日和見日記からの再録になります(2014年4月28日の日記です)。
漫画版『スケバン刑事』に関する考察を交えて、宝条とセフィロスの父子考察を行おうと思い書いたものです。
タイトルの意味は、親から子供に伝えられる事について。
FF7の二次創作『天国より野蛮』を書き進めているのですが、そこのメインテーマも、親子の相剋でもあるので、それでスケバン刑事考察もバンバン出来るようになりました。
先日の日記で、サキの愛憎の因果を考察したのですが、これで思ったのはFF7の宝条とセフィロスの父子の愛憎か形にかなり似ている事に気がつきました。
セフィロスは、実父の宝条から『父はガスト博士、母はジェノバ』 と言われて育ちました。
本当は自分とルクレツィアが両親であると教えなかった。
何故なのか…、それは、宝条の抱えたコンプレックスが大きく由来します。
セフィロスは、自分の力が他者よりも優れている事について、大きな違和感を持っていた、それが出発点となり、彼自身の悲劇の引き金を引いてしまった。
宝条は、自分の息子がやがて蛹から蝶になるように、人間ではない何かになる事を強く望んでいた。
それが、息子を幸福にする事だと、本気で信じていた。
だって、他者よりも優れている自分は孤独で全然幸福じゃない。
宝条にとって、自らの頭脳や性格は、彼を孤独にしてたのです。
誰からも理解されない、宝条は、多分人間達が己の弱さから崩壊していく様をずっと見つめながら生きてきたのでしょう。
そしてそれは、自分が愛していた人間ですらそうだった。
セフィロスの母親、ルクレツィア。
恐らく、彼が唯一無二としていた女性。
その彼女すらも、己を見失って自分に身を投げ出す愚かな真似をした。
そんな女が自分の息子の母親なんて、あのプライドの塊のような宝条が言えるわけがありましぇん。
DCの宝条の態度を見ていると、宝条はルクレツィアにちゃんと、選択肢を与えていたのです。
セフィロスに会わせろというルクレツィアに対して、ヴィンセントを見捨てなければ会わせないと迄言い渡している。
母親でありたいなら、女である事を捨てろと、宝条はルクレツィアに対して言い渡した。
これは完全な正論で、ルクレツィアはその言葉に愕然となっていた。
宝条はルクレツィアが誰を愛そうとどうでもいいけど、母親である事を捨てた事は許せなかったのでしょう。
そして、これは宝条がセフィロスの父親としての責任を全うするという決意の表れで、もしルクレツィアがセフィロスの母親として責任を全うするならば、彼女の全てを受け止める覚悟をしてたのだと、自分は考察しました。
だけど、彼女は結局宝条からも、セフィロスの前からも姿を消した。
ジェノバの浸食による自我崩壊と、宝条を傷つけ、咎人にしてしまった事への償いと、ヴィンセントを愛する自分の心に従ったそのために。
宝条はセフィロスに、逃げ場の無い牢獄へと追い立てるような育て方をしたのでしょう。
愛情を与えなければ、愛情に飢えて寂しいと思う事もない。
そこには生か死か、冷徹な判断だけ。
愛情や思いやりという場所から大きく隔絶させられてセフィロスはそれでも、知識から人間の感情を学び、それなりに他者の居る環境にもいたのでしょうから一応は、人間という存在を学んだのでしょう。
そしてその価値観は、大きく宝条のそれに影響されていた。
他者を見下し、その弱さをバカにする価値観も。
そしてその矛先は、宝条にも向けられた。
宝条はその事を全く気にはしなかった、だって息子は人間じゃないから、人間である自分は見下されて当たり前、そんな考えだったのでしょう。
己を孤独に追い立てたこの世界への復讐を。
セフィロスは、宝条がなりたかった自分の理想像。
だけどそれは、宝条の弱さを体現した姿でもあった。
孤独で寂しくて、それ故に他者を破滅に追いやる事しか出来なかった人間の、悲しみの象徴でもあった。
ここで麻宮サキです。
サキもまた、母親から全てを奪われた事で、孤独に追いたてられて生きる事を余儀なくされた。
そんな母親を正当化しなければならない程の孤独とは、どんなものだったのでしょう。
多分、セフィロスが宝条を見下していたのは、サキが母親を正当化したのと同じように宝条を正当化しようとしていたのでしょう。
セフィロスの宝条への呪詛は、強い愛着の裏返し。
だけどそれは裏切られた、ニブルヘイムでその裏切りを知った。
セフィロスはジェノバの化身となり、世界を脅かす。
しかしそれは、宝条にとっては自分の願いが叶った瞬間でもあった。
宝条がセフィロスの命にかけた祈り、それは世界を終わりにする事。
サキの母親は、自分が憎んだサキの命に対して何を祈ったのか。
それは、自分自身の終わりをサキに願ったのだと思いました。
だけど、サキはそれを実行しませんでした。
宝条はシスター・レイでセフィロスに、エネルギーを与えようとした。
ナツはサキに対して、テレビ局で信楽老と対峙した時に、自分のヨーヨーを与えてサキの窮地を救いました。
これは同じ事だったのでしょう。自分を殺しに来いと。
だけど、宝条の命を終わらせたのはクラウド達で、ナツはサキを庇って死んでいった。
サキがナツとの決着に拘ったのは、サキは無意識で、ナツが破滅願望に取りつかれていた事を知っていた(だからナツは、美幸迄殺めてしまった)、だからそれは間違っているとサキは教えたかっただけ。
サキは凄く時間がかかったけど、そこに至りつく迄に彼女の全てはあった。
回りから見たら理解できない、だけど形に出来ない想いは受け継がれる。
親を知ろうと知るまいと、セフィロスが宝条の破滅願望を叶えようとしたように。
親の顔が見てみたいと人は言う、ではあなたの親はどんな親ですか?
そんな親子の考察でした。