菊池秀行氏の秀作 ヴァンパイア・ハンター D

今回ご紹介するのは華麗なるゴシックファンタジーの傑作
ヴァンパイア・ハンターD


ヴァンパイア・ハンター D　（YouTube）


物語の舞台は、吸血鬼が地上の覇者として君臨する近未来のパラレルワールド。吸血鬼は「貴族」と称され強大な権力と科学を誇り、人間を「家畜」として支配していた。


しかし吸血鬼の天下は長く続かず原因不明の衰退を始める。一部の吸血鬼たちは地球を捨て新天地を求め宇宙へと去っていってしまった。


しかし地球にわずかに残った吸血鬼たちは、人間の生存を脅かす天敵として現在も変わらず人々に恐れられている。
体を真っ二つに切断しても倒せない不死身の肉体をもつ吸血鬼。


彼らを倒すことができるのは特殊技能を持つ「ヴァンパイア・ハンター」と呼ばれる賞金稼ぎたち。


特にDと呼ばれるハンターは最強のヴァンパイア・ハンターと称されていた。Dは人間と吸血鬼の間に生まれた「ダンピール」と呼ばれる半人半魔の存在だった。


今回、ダンピールのDへ依頼された仕事はある名家の姫君シャーロットの奪還。


シャーロットは残忍な吸血鬼マイエル=リンクに浚われてしまったという…。


しかしマイエル=リンクを狩るのはDだけではない。Dがしくじった場合の保険として同じく手練れのヴァンパイア・ハンター「マーカス兄弟」も雇われていた。


Dとマーカス兄弟。二組のハンターはお互いを牽制しつつ、残忍な吸血鬼と浚われた娘・シャーロットの行方を追う。


マイエル=リンク側もおどろおどろしいモンスターの護衛を雇いハンターたちを迎え撃つ。


マーカス兄弟メンバーのひとり・金髪の少女レイラは、人間でも吸血鬼でもないDの存在に疑問を持ち執拗にDにつきまとう。


そして彼が残酷な吸血鬼のハーフではない事を知る。
Dは人間的な優しさを持ち、一部の人間から強い信頼と尊敬を勝ち得ていた…。


シャーロットを無事発見したD。
家族から奪還の依頼を受けたことをつたえ家に帰るよう説得する。


彼女は自らのぞんでマイエル=リンクについてきたことを打ち明ける。
そして見逃してほしいとDへ命乞いをする。


隠れて会話を聞いていたレイラ。吸血鬼を憎むレイラには人間と吸血鬼の恋愛などとうてい信じる事ができない。


しかしシャーロットのために太陽の下に身をさらす吸血鬼マイエル=リンクの姿を目の当たりにし、吸血鬼を憎むレイラの心に迷いが生じる。


マイエル=リンクとシャーロット。孤立無援の恋人たちが目指すのは大吸血鬼カーミラの居城。


城には宇宙へ脱出できるロケットがあったのだ。二人は誰にも邪魔されない宇宙へ決死の逃避行を夢見ていたのだった。


二人を献身的に助ける大吸血鬼カーミラ。


なぞめいた彼女の思惑。彼女の正体は…。


Dとマーカス兄弟、レイラたちは二人を追い、カーミラの居城へ侵入する。



　原作はジュヴナイル向けに朝日ソノラマから出版された菊池秀行氏のヴァンパイア・ハンターDシリーズ。（2014年現在全40作）
本作品は第三作目にあたり、シリーズ中でとくに人気の高い「D-妖殺行」

　劇場版アニメのキャラクター原案は、原作本のカバーイラスト・挿絵を担当した天野喜孝氏。監督は海外でも高い評価をうける川尻善昭氏。
　1999年～2000年にかけて劇場オリジナルアニメとしてアメリカで公開され、クリエーターたちに大きなインパクトを与えました。
アメリカでの公開タイトルは　Vampire Hunter D: Bloodlust

　アニメに興味の薄い当時のアメリカ一般向けに制作されたため、人間関係やストーリーが原作よりかなりマイルドに改変されています。
しかし重厚な音楽や隅々まで神経の行き届いた美意識の高い演出で、菊池秀行氏の禍々しくも妖艶な「Dの世界観」を十分に堪能できる仕上がりになっています。
　後日日本でも英語のまま公開され一部アニメファンから熱狂的な支持をうけました。後に当時一流の日本の声優陣により吹き替え版が制作されています。

悲しくも絢爛豪華な愛の物語。
お勧めです。