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Mの劇場

読書・アニメ感想のブログ。好きなことを好きなだけ。

『木屋町DARUMA』監督:榊英雄

2015-12-15 00:21:42 | 映画


義理と人情の町、木屋町。
桜の咲く美しい町に、四肢をもがれたヤクザが一人。
仕事は借金の取り立て。
世話役である坂本と共に、今日も家庭のドアを叩く。



以下、ネタバレをとっても含みます。
先に読んでしまった、とおっしゃられても私は責任を持ちません。
まだ見ていない、これから見る予定だ、DVDの発売を待っているという方はご注意ください。

また、この作品はレイトショー枠です。
映画本編はグロ・スカトロ・吐瀉表現を含みます。
この記事にも幾分かは含まれます。
閲覧時にはご注意ください。



四肢をもがれただるまの姿で床を這いずり、
「借金返せるまで俺を養うてや」
とにやり笑い、ゆらゆら揺れる勝浦(遠藤憲一さん)。
もちろんそういう手口であるだけで、それが素ではない。
借金の取り立てが終わった勝浦は無表情で、無駄な動きをしない。
疲れと、そこには諦めもある。
勝浦は文字通り「手も足も出ない」ため、一人では生活していくことができないし、自決することもできないのだ。
地獄のようなリハビリを経て組に戻ってきた彼は、生きることを選んだ。
体を張って借金の取り立てをし、ゴルフクラブで殴られ頭を血だらけにしても、刃物で刺され息絶え絶えになっても、
「まだまだや」
と言い生きようとする。
もうこの生き方しかない、これを続けていくしかない、という諦め。
それが勝浦の唯一すがることができるものだったのかもしれない。

それを、友である古澤(木村祐一さん)がピストルで自決し、更に苦しまずに一発で死んだものだから、たまったもんじゃない。
坂本は信頼していた古澤による陰謀が真実だと分かり涙するが、勝浦は涙も出ない。
ピストルの引き金を引くのは、もちろん手の指だ。
勝浦にはそれすらできないのに、目の前で簡単にそれをやってのける古澤には自己満足しか感じない。

勝浦と坂本(三浦誠己さん)の訪ねた新井家には、高校生になる一人娘・友里(武田梨奈さん)がいる。
まともだった彼女も、父親(寺島進さん)の13億にのぼる借金により人生を狂わされる。
取り立てに来た勝浦による性的な嫌がらせ。
床を這ってくる四肢のない男にスカートの中に顔をすり寄せられ、胸に顔をうずめられ、頬をなめられる、トラウマものである。
結局スカトロ・SM・ヤクセク・乱交何でもありのAV界に身を沈め、薬のキマってしまったハッピー女と化する。
しかし、彼女を救うのは、風俗から足を洗わせることではない。
頭が正常に戻れば薬の禁断症状や勝浦へのトラウマ、恨みへと変わる。
正しいか正しくないかで言えば、勝浦が友里を逃がそうとしたことは正しい。
しかし、それが友里にとっての救いになったかというと、なってはいない。
狂ってしまった友里に、最期は殺されるのである。

心はないのか、と酔っ払った坂本は勝浦に詰め寄る。
勝浦には坂本を払いのける力はない。
だから坂本は勝浦の胸元を叩き、聞く、この中はどうなっているのかと。
ここに心はないのか、心が痛まないのか、と。
勝浦は何も言わない。
坂本の、
「昨日俺が聞いたことの、ちゃんとした答えは、ほしいです」
に対する明確な答えはない。
ただ、ここが勝浦の分岐点だったのかもしれない。
この辺りはDVDが出たら購入してきちんと見たいところだけれど、もしここで坂本が酔わず、愚痴らず、今まで通りでいたなら、勝浦は友里を逃がす選択肢は選ばなかったかもしれない。
いつも通りの生活を続け、排泄物を撒き散らしながら、また生死ギリギリの借金の取り立てをするのかもしれない。
そう考えると坂本のイレギュラーさがすごい。
組に属する人間の中で坂本だけが異質に見える。

最後の場面、私の頭には「掃き溜め」という言葉が浮かんでいた。
川の下流に、勝浦の体を抱きながら死ぬ坂本と、その場でうごめくことしかできず死ぬのを待つ勝浦、大量の落ち葉と拾われないゴミ。
あのカップ麺のゴミは、もう何日も前に川を流れていたはずだ。
上を見上げれば桜が美しく咲く京都・木屋町。
上は美しくても、下を見れば目を背けたくなる汚さで満ちている。
勝浦はあのまま死ぬのだろう、もう助けてくれる坂本も、古澤もいない。
ヤクザである勝浦、しかも四肢のない勝浦は表の世界で生きていくことはできない。
血を吐いた口を川の水ですすげても、坂本を揺り起こすことも、坂本を抱えて治療に向かうことも、彼にはできない。
真崎父(谷口高史さん)に言い放った、
「ちゃんと養うてくれたら(ここはちょっと曖昧)、手足も生えてくるかもしれんで」
の言葉が痛々しい。
古澤と銭湯に浸かる間の、
「(ヤクザができなくなったら)大丸の受付とかか?」
の言葉も痛々しい。
「大丸潰れるわ…」
という古澤の返しもきりきりと胸が痛む。
そういえば、排泄物を拭いて拭いてと債権者たちにせがむ勝浦の姿も、犬のようにお皿に直接口をつけて食事をする勝浦の姿も、全てが痛々しいのだった。

ツイッターでDVD出るかな!?と言っていたら監督直々に反応いただけて、どうやらDVDにはなるみたいなので、買う予定。
そこで友里がセックスの相手をした犬種は再確認したいし、お風呂場で坂本が洗っていた勝浦の臀部も再確認しなくてはいけない…
その場面、スカあるんだけど、仕方ない…
同じだるま映画なら、これもフォロワーさんに教えてもらった、キャタピラーがある、これもよかった。

グロやらスカトロやらに耐性があって、暗い話が好きで、だるまにぐっとくる方にはぜひお勧めしたい。

(終わり)

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