その年最後の新しい月の最初の月曜日を迎え、早番の(9時から5時まで)の優子と一緒に出勤した…… . . . 本文を読む
僕は優子の中にいたかった。優子の中にいさえすれば、僕はどこにも行く必要もなく、星川さんにも他の誰にも会わずに済み、余分な思考も意志も概念も観念も持つ必要なかった。優子に含まれ、優子に閉じられていさえすれば、僕には何ひとつ問題が生じない……
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僕は気を取り直して階段を下り、改札を出て北口の西友ストアーに向かった。すでに限界に近づきつつある貧弱な冷蔵庫の中身を、それなりの豊かさに回復するためだ。冷蔵庫の内部が貧弱であることとひとりの寂しさは比例関係にある…… . . . 本文を読む
拍手が鳴り止み、星川さんがスタッフひとりずつに挨拶し、程良い加減で頭を下げていた。深からず浅からず、笑顔を絶やさず、丁寧にカジュアルな言葉で。そして最後に僕の前に立ち「よろしくお願いします」とただひと言言って頭を下げた。そして川本さんにも同じように言う…… . . . 本文を読む
「4月になり東京に戻り、持ち物で売れる物は売り、捨てられるものは捨て、捨てられないものは、彼と姉に託して部屋を引き払い、それまで貯めたお金を全部持って行くことはできなかったので、お金の管理を姉に頼み、必要な時は送金してくれるようにお願いしました……
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僕は、川本さんの「でも、そんな私たちに異変が起こりました」という言葉に、これまで語ったことが、川本さんが話そうとしている“七夕様みないになろうとした”物語の序章であることを知った。星川さんもそう思ったのだろう。僕を見て暗黙の了解を瞳で伝えた…… . . . 本文を読む
午後2時から設定された編集長を交えた打ち合わせは、1時間ほどで終わった。今のところ取り立てて浮かび上がる重大な問題はなかったが、編集長は、バリ島の取材が僕の初めての海外体験になることを知ると頭を抱えた…… . . . 本文を読む