月曜日の午後2時。とある建物の地下階。
私は、ざわざわと落ち着かない様子の人々に紛れながら
分厚くて天井まで届きそうな扉の前に立つ。
しばらくして、扉が開かれると人々は扉が完全に開くのも待たずに
波になって室内へと流れ込んで行く。
私も間をおいてからビロード貼りの室内に入り、あえて最後部座席の後ろに立つ。
そして、marteau(小槌)が振り下ろされる。
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先日、パリの競売所でオークションに参加しました。
前日たまたま訪れた時に、見つけてしまったのです。
それがこれ。
「POCHOIRS JAPONAIS」(日本の型紙)
1925年、パリの芸術書を扱う書店が、日本の型紙を収集しているコレクター達にお願いをして
50ページにわたる「日本の型紙」の図録を発行しました。
繊細な刃物使いに加え、その裏にとめてある糸の支えまで見られます。
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商品番号が近づいてくると、心臓の鼓動が聞こえるくらいの緊張感。
そして
「コンッ!」
っとハンマーが振り下ろされ、このPOCHOIRES JAPONAISは私の手に。
フランスに影響を与えた日本の芸術。
そしてそれを手にして再び影響を与えられる私。
このまま、時間の流れとともに呼応しあっていければ、と。
人生で初めて、自分の為だけに競り落としたこの図録は
なんだか妙に感慨深かった。
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競売所で緊張しながら競ったのと前後して
2007年3月はもう一つ大切な買い物をしたのでした。
それがこちら。
9cmのヒール。
私は生まれて初めて体験する視野と姿勢を手に入れました。
30の誕生日を目前に
この2つのものはなにか象徴的ではありませぬか。