終の棲家ストーリー

まさか!の還暦家つくり。しんどくならないように、ゆっくり書きとめながら・・・。

相国寺で源氏物語錦織絵巻

2008-05-04 22:14:24 | 美術展
すばらしいものを拝見させていただいた。

相国寺承天閣美術館で開かれている、山口伊太郎遺作展ー源氏物語錦織絵巻ー。

源氏物語絵巻を西陣織の最高の技で再現する、絵の具を糸に変えて、

そんな、単なる修復、復原、再現ではない。

源氏物語絵巻が平面に描いた源氏の世界を、3次元に立ち上がらせた、といっては乱暴だろうか。

山口伊太郎翁は西陣の織匠、分業制の西陣の総監督であられた。

70歳に発起され、37年の月日をかけて、西陣の千年の技の上に最新の秘技を加え、

国宝の絵巻物を原画にして、独自の源氏物語の錦を織り上げる。

織物組織の醍醐味を、と、志高く打ち上げた偉業は、深い文芸的理解と独自の美意識によって、

リアルな説得力のある、源氏物語絵巻以上の絵巻となった。

めくれた簾の奥に見え隠れする姫君の衣装は、織り目が立体的で、着る人の体温や、燻したお香の香りまで漂ってきそう。

薄物の下に着ている織物の組織まで、まるで実写のようで、省略されたものは何一つない。

千年前の、宮中の織り工房の長として、殿上人や姫君の衣装の一点一点、織り組織、色などすべて熟知され、

時には、姫君に衣を選び与える光源氏にも成り代わって、源氏の世界に生きておられたのだろうか。

もう、図録は買わない、との決心は、やすやすと覆された。

源氏の文庫本をかたわらに置いて、図録を挿絵として、わたしも平安の世にしばし遊ぶこととしよう。

天国の翁に感謝をこめて。



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