ほわみ・わーるど

超短編小説会にて短編小説を2013年より書き始めました。
これからも続けていきたいです。

プルプル地獄

2020-02-19 09:38:06 | 創作
俺はずいぶんと悪いことをしたもんだ。

ゲンゴウ爺さんちの畑の瓜ををおいしそうなとこみんな食べてしまったし、
うるせい子供を見つけると、ひねり石投げてやったし
庄屋の娘のお腹が大きいとき、ふざけて坂道で押しちまったら、
お腹の子が産まれちまって、そのまま死んじまって、庄屋の娘もおおあざ作った。

村の中の嫌われ者で、最後は冬の晩にゲンダイ酒屋の新しい酒盗んで酔いつぶれて、
夜の道に寝転んで、その後おっちんじゃったさ。

それからはご想像の通り、地獄行きだわね。

地獄っていうのはひどいところやな。
地獄の門のところには、おっそろしい顔の閻魔様がいるし、俺みたい奴は
根性が悪いからって、血の池地獄やら、釜茹で地獄、針地獄、肥溜め地獄とつぎつぎ押し込まれ、
最後にやってきたのがこのプルプル地獄だわね。

プルプル地獄ってとこはまわりがプルプルしたものに囲まれていて、
真っ暗で身動きが取れない。ひものようなモノでつながれていて、しゃべることもできない。
まわりがプルプルしていて、何も考えることができない。
だけど、じぶんはちっぽけで何もできない虫けらのような気がしてくる。
だけど、もしここから出ていくことができるなら、
今度はまっとうなものになって、まっとうな人生を・・・

      (2020年超短編小説会祭り投稿作品)

恋、それともストーカー

2020-02-19 09:31:16 | 創作
カフェの窓際のテーブルの上のスマホがプルプルなる。
もしかして、とルルは思う。
もしかしてトニーからの電話かもしれない。

いやきっとお父さんが私の帰りが遅いのを心配してかけてきているにちがいない。
父は20歳の娘がまだ小学生であるかのように心配なのだ。
元号だって令和に変わったというのに、昭和生まれの父の頭を新しいものに変えることはできない。

トニーが好きだ。
トニーに「また会いたいな」とこの間ラインしたら、
「いつでも、会えるよ。そのうち連絡するよ」
って返ってきた。
トニーはいつでもそうだ。誰に対しても優しく、そつのない男だ。
イケメンではないのに、女の子を引き付けてしまう。

勝ち目のない試合に臨むボクサーの様に、首を捻り、スマホを手に取った。
これからどうしよう。トニーの住む現代的なデザインのマンションの周りを歩いて、歩いて歩きまわろうか。
恋とストーカ―の区別がルルにはわからない。
   (2020年超短編小説会祭り投稿作品)