ほわみ・わーるど

超短編小説会にて短編小説を2013年より書き始めました。
これからも続けていきたいです。

ちょっと衝撃の

2014-06-07 17:23:51 | 創作
カウンターの向こうで主任と中年の女性がにこやかに話している。その女性は年のわりには個性的で、髪の毛を黒人女性のように短く細かく巻いている。

ああこの人は知っている。
ずいぶん前に私のアパートに来たことがある田村さん。
私は独身時代、2年くらい阿佐が谷のアパートに住んでいたことがある。

その頃飲み会があって、帰りが10時ぐらいになると、彼女は「もう遅いからあなたの家に泊まる」と言いだしたのだ。
彼女はすぐに中央線やや奥のほうにある自分の家に電話をかけ、家の人に了承を得た。
独身のお嬢さんなのに家の人もずいぶんと甘いな~とそのとき思った。
きっと一人で夜道を歩かせるより、知り合いの家に泊まったほうが安心だと思ったのか。

彼女は一間しかない私のアパートに来て泊まった。
どんな風にして寝たのかは覚えてないんだけど、
彼女が寝る前に義眼を外したのを覚えている。
その衝撃があったから、彼女が、親しくもない彼女が
私の家に泊まったことをいつまでも覚えているのだ。

後で主任に聞いてみた。
「田村さんと親しいんですか?」
彼女の近況でも聞けると思いきや
主任は「ううん」と言った。
だからその後の田村さんことはよくわからないけれど、
彼女は自由に生きているみたいだ。
2014/06/07 22:42