色と香りのハルモニア

カラー&アロマ(色と香りと心のトーン別館)

色が匂う。

2008-09-05 14:35:01 | Weblog
「匂う」とは、良い香りがすることをいいます。
くさい場合は、「臭う」(笑)と書きますので、
あくまで良い香りが、「匂う」です。
でもこの言葉は、例えば「紫が匂うよう…」と、
色彩を表現する際に使うことがあります。
「匂う」を辞書で引いても、
「色が美しく照りはえる」とあり、
「にほふ」は本来、色彩の美しさをいう言葉だったそうです。



先日、「日本文化を彩る香の文化史~四季とともに暮らしを楽しむ~」という講演会に行ってきました。
講師は畑正高さん、あの香老舗 「松栄堂 」の社長で、
五感のバランスの再構築こそが、現代人にとって大切だと考えていらっしゃる方です。
ですので話の内容も、「香」だけではなく「色」にまで広がり、
とても興味深く面白いものでした。

その中でも特に印象深かったのが、「匂う」の語源の話です。
「匂う」とは、にほふ…丹穂生だったそうです。
丹とは赤色、朱色のことですが、
この赤色が地面から穂のように生えている、その様を「にほふ」と表現したそうです。
この赤色は鉱物である硫化水銀、つまり辰砂のこと。
辰砂をネット上で調べてみると、灰白色の石にキラキラと輝く、辰砂の映像が見られました。
これが硫化水銀…?人工の朱である硫化水銀とは色が異なります。




大地に煌めく、赤い辰砂。
まさしく「にほふ」ように赤く美しく、透明な宝石のようです。

この辰砂は、古墳の内壁や石棺の彩色や壁画に使用されていたそうで、
魏志倭人伝にも、倭人は朱で身体に化粧していると、記されています。
古代人にとって赤は、特別な意味を持つ大切な色だったのですね。

日本人は、花や美人を「匂うように美しい」と表現します。
「色香」という言葉からもみられるよう、
色と香りを同時に受け止める、感覚を持っています。
西洋のように嗅覚と視覚を、スッパリと切り離して考えなかったのです。

だからこそ生まれた言葉「にほふ」。
いい言葉だなぁ…と、あらためて思いました。