チエゾウの知恵袋

mixiの日記の方へ移行しました。
(2010.4.5)

私が語りはじめた彼は

2007-07-21 22:18:24 | 読書メモ
装丁の美しさやタイトルの力で本に引き寄せられるので、
あまり内容を吟味せずに、ほいほい読んでいます。

最近、愛人だの不倫だのというテーマが続いていますが
意図的ではないのですよ~

私が語りはじめた彼は
三浦 しをん
新潮社

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タイトルのごとく「彼」の立場からは、語られてはいません。

主人公のプレイボーイ・村上教授のお弟子さん、愛人の夫、教授の息子
などなどさまざまな視点からの独白により、村上教授の
人となりが作られていくそんな1冊です。

一人称、おおくても二人称で進行する男女の色恋モノでは
珍しい手法だなと。

過去に読んだ三浦しをんの作品は、どれもはつらつとした
文体のイメージがあるのでこんなに静かで、かつ心をえぐられるような
激しさはとても新鮮にも感じられました。

ただ、複数の立場から語られる村上教授ですが、
それも彼のほんの断片的な部分にすぎないのだなと感じます。

きっと、普通に不器用でただ一筋に文学を愛する
教授だったのでしょうが、周りの人を不幸にしてしまっては
かなりのワルにしか見えません。

この本が教えてくれた教訓としては、
“目には目を、歯には歯を”

ってとこでしょうか。愛する人を奪った人は、次に愛する人を誰かに
奪われはしないかとビクビクしながら生きていかなければ
ならないのですから。



魂萌え!

2007-07-13 20:05:52 | 読書メモ
明日実家にお忍びで帰るのですが、
台風が~~
夕方までに温帯低気圧に変わってくれたまへー

魂萌え !

毎日新聞社

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図書館でタイミング良く見つかりました。
ダンナさんは酷評だったのですが、私はかなりハマって読みました。

突然ダンナさん(63歳)が亡くなってしまう、
敏子さんのオハナシです。もうこの年齢設定からすごい伏線だなと。

63歳といえば、きっと「第二の人生」と称される定年後の
面白さを味わい始める年齢だと思うのです。

また、ダンナさんのお葬式から物語が始まるのも、すごく
いろいろな想像が働きます。

案の定、その心のざわめきは確かに波乱の幕開けに結び付くのです。
なんと、平凡だったはずのダンナさんに愛人がいたのですから。

長年アメリカに行って家に寄りつかなかった長男と
フリーターを謳歌する長女もハイエナのように遺産を狙っている模様。

どうする!?敏子さん

専業主婦で、世の中のことが右も左も分からなかった敏子さんが
未亡人を楽しみ始めるまでのプロセス、思わず応援したくなります。

よく夫を先に亡くしたご婦人は、その後の人生を一人でも
楽しめると言いますが、まさにその感覚に似ています。

そのためには、今まで波風を立てなかった長男・長女との対峙、
愛人とのオトシマエも待っているのですが。

かなり愛人とのやりとりは壮絶で、亡くなったダンナさんが
愛人に敏子さんのことを「あつは家具の一部だから」と
言っていたことも愛人の口から聞くわけです。

キツイ。。。何で愛人と言えども他人に、「家具な女」と
言われなきゃいけないのか。

長年愛人のポジションにいるということは
それだけの価値しかないと思うんですけどね。
「家具な女」にも「家具な女」だけの価値はきっとあるのよ。

怒って、そんなやりとりから花瓶を割ってしまった
敏子さんの元には、ん千万円という請求書が届くし(笑)
愛人、狂ってる。。

敏子さんが、そんな修羅場を乗り越えて安泰な生活を
手にするまでには、いろいろな人との関わりがあるのです。
それもかなり面白いです。

高校時代からの3人の友人、ダンナさんの蕎麦同好会の皆さん。
デパートで意気投合した佐和子さん。
特に、最後の方でタフになった敏子さんを彷彿させる台詞が出てきます。

雑誌の編集をしていると言っていた佐和子さんが、
敏子さんの波乱の模様をちょっと脚色して載せていたのです。
頭にくるところですが、それを

「敏子は『ぷらーた』を塚本に返した。明日にでも佐和子をとっちめて
やろうと思ってる。が、敏子は変わった自分に驚いていた。
今までだったら友の裏切りと感じていたかもしれない」

とさらりと言ってのけられるようになるのですから。
60過ぎの人生も楽しそうだなと思える1冊でした。







Run!Run!Run!

2007-07-03 23:50:25 | 読書メモ
今流行りのブートキャンプのごとく
私もストイックに肉体改造するために
ピラティスに通い始めました~

慢性的な肩凝りの解消と、だらだら仕事をしないために
早く帰る目標があった方がいいだろうという狙いもあるのですが。

「恥骨を上げてぇ~、はい下げるぅ~」と
「恥骨、恥骨」と連呼する先生のもと週に1度、
インナーマッスルを鍛えております。
自転車北海道1日100キロの旅(今度書きます)では
意外と筋肉痛に悩まされなかったのですが、
インナーマッスルは正直なんですね
運動不足の私に襲いかかる筋肉痛は、月曜日のスクール修了後
なんと木曜日にやってきます。ホント、おばあちゃん。。。
渡辺満里奈のDVD「ピラティス道」のごとくお腹を
ぷるぷるさせずして、あのV字を保てる夏を目指したいと思います。

RUN!RUN!RUN!

文藝春秋

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ということで、今日の1冊はスポーツものです。
桂さんは「県庁の星」の作家さんでもあります。
今年の本屋大賞に「一瞬の風になれ」が選ばれるなど、
何かとホットな陸上競技。
この「Run!Run!Run!」は
以前紹介した「風が強く吹いている」と同様に大学の駅伝部が
舞台となります。
この本の主人公の岡崎優は、やはり「風が~」の主人公・走と同じ
一匹オオカミの孤高のランナーで、仲間と出会うことで・・・と
なる展開までもが似ているなと思ったのですが、かなり深い闇が
広がっています。

なんと、優はDNAを操作されて最強のランナーとして
この世に生を受けていたのです。優の兄・翼も同様に。
この辺が、なんとなくリアリティーに欠け少し興ざめしてしまいます。
しかし、ランナーのメッカ箱根を巡っての優の葛藤、仲間との融和は
美しさを感じます。

上手く言えないのですが、ランナーとしての体はたとえ
サイボーグとして人工的に生み出された体だとしても、
ランナーとしての心は毎日毎日くる日もくる日も
体との対話を繰り返して築かれたものです。
概念は違いますが、デジタルとアナログが融合しているというか。
この本のおもしろさはそこにあります。
なんだか、無性に走りたくなりました