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後世に語り伝えたい「八木沢マタギ」 200年の歴史・・・八木沢集落

畏敬と神信仰 連綿と受け継がれたマタギ習俗
史料:火縄銃の背負袋(上小阿仁村有形民俗文化財)

鷹とマタギは何か共通をしている

2025年04月10日 | 八木沢マタギ

          

                             クマタカの親(♀)

クマタカの調査
 調査で最も大切な季節は酷寒の冬、風雪舞う1月から2月ころ、上空を飛翔するタカの行動を稜線から目で追った、長時間雪原に立ち風雪にさらされながらも観察を続けたのはタカにとってこの季節は最も繁殖行動が活発になるからであった。
 クマタカは食物連鎖の頂点に位置する希少な猛禽類で1989年のレッドデータブックで絶滅危惧種とされ、種の保存法「絶滅のおそれのある野生動植物・種の保存に関する法律」では政令指定種、また1993年にできた「種の保存法」でもトキやライチョウ、ヤンバルクイナ等と同じランクで絶滅の危機に瀕している鳥類のリストにはいる。個体の生息する環境は広く自然林が残され、バランスのとれた餌が供給される自然環境が不可欠で採餌できる場所や繁殖に適した場所が必要であることは言うまでもない。

 
子育て・純白のヒナ親を待つ 

           

                           巣に餌を運んだ直前の親(♀)


            

                             巣内に餌のヘビを運ぶ♀



            

                             ヒナに餌をあたえる親(♀)
                    

 子育てを観察していた時だった、突然クマが急斜面を登ってきたのでタカの巣から目をそらしクマを観察しているとクマはボール玉のように体を丸くし柔軟に朽ちた根回りを夢中で餌を探していたのを見て「クマの体は非常に柔らかいのだ・・・」と微笑ましくなった。


太平山地でのクマタカの調査にて

    
              ペリット                       クマタカに捕食された大型の山兎


    
          
           巣立ったヒナの卵殻                         営巣中のタカの観察


 透き通るような空間の中で静かに物音も立てずに営巣中のタカを観察し続けた。ここまでくるのに重いカメラ機材と三脚、テントを背負い急斜面を登り窪地に迷彩テントを設置して子育ての様子を観察するが単独でのタカの調査は多くの危険が伴った。奥地だから危険、低地だから大丈夫とは限らない、むしろ低地ほど最も危険が伴い冷静な判断が常に求められた。
 調査で心掛けた事は種の保存、「して良い事・ダメな事」であった。夏場、テント内は蒸し暑く立ちっぱなしもつらい、警戒心の強いタカはたとえ迷彩テントのなかでもすぐに気がつき一瞬で巣に入り、一瞬で巣から離れるその瞬間を見逃さないように日を追って観察を続けやがてヒナの巣立ちをむかえる。
 感動の一瞬、ヒナが巣立つ一瞬で苦労が感動へと変わった。しかし巣立つヒナには厳しい自然界が待ち構えていた。

                      
【オオタカ】
 タカ科に属する鳥類で中型の種、幼鳥の体毛は褐色をしているが、成鳥になると頭から尾羽にかけた上面が灰色になる。

             

                     ヒナとはいえどども獲物に飛びつく様子はすさまじい


  

                            太平山地でのオオタカ

  

             オオタカのヒナ                           餌をくわえるヒナ

 

【ハヤブサ】
 頭部の羽衣は黒く頬に黒い髭状の斑紋が入り体上面や翼上面の羽衣は青みがかった黒で喉から体下面の羽衣は白く、胸部から体側面にかけて黒褐色の横縞、眼瞼は黄色く、虹彩(こうさい)は暗褐色、嘴の色彩は黒く、基部は青灰色。嘴基部を覆う肉質(蝋膜)は黄色

 
 ヒナの巣立ち 大空へはばたく

          

                               感動 巣立ち

ヒナの巣立ち 感動の一瞬

 標高約二百八十㍍の断崖絶壁のくぼみに作られた巣から、親鳥の後を追うように四羽のヒナが次々と飛び立ったが、そのうちの一羽がすぐに巣にひきかえした。
 その後の観察でもヒナは再び飛ぶことはなかった。 
 
           

                             三羽のヒナが大空を舞う


・クマとの睨み合い
 鷹の調査をしていると何度もクマを見かけた。絶壁に営巣するハヤブサ、崖下にタケノコ(ネマガリタケ)が沢山あって付近に糞や食痕が確認された。付近にクマが絶対にいると警戒していたら案の定、近くのブナの木にクマが登っていて突然、目の前に飛び降り睨み合いになった。大きなクマだった、単独の調査は常に危険が伴った。

  

           

                         サルメンエビネ(猿面海老根)ラン科

・鷹の調査でまれに貴重なラン科の植物をみかけた
 可憐に咲くサルメンエビネは断崖絶壁に営巣する「ハヤブサ」の観察場所付近にひっそりと咲いていた。


【ミサゴ】
 雄雌ほぼ同じ色彩で背中と翼の上面は黒褐色、腹部と翼の下面は白色で顔も白く眼を通って首に達する太い黒褐色の線が走る。後頭部に小さな冠羽があって嘴は黒く脚は青灰色、食性は主に魚類を食べるが爬虫類、鳥類、貝類を食べることもある。

 獲物を見つけると素早く翼を羽ばたかせて空中に静止するホバリング飛行を行った後に急降下し水面近くで脚を伸ばし両足で獲物を捕らえた。

          

                      ミサゴの親(♂)餌の魚をつかまえて巣に降りる瞬間

 
キエビネとアカエビネ ミサゴの営巣地付近に咲き誇る


           

                             キエビネとアカエビネ

 重いカメラ機材を背負い急斜面を登っていくと偶然足元を見たらエビネが咲いているのに驚いた。
「いまごろ咲いているの?しかも、黄色エビネと鮮やかな紅紫色のエビネが同じところに咲いている!!」あまりの美しさに圧倒され、しばし足を止めて愛でた(めでた)、思わず山からのプレゼントだと思った。


秋田県河辺郡河辺町岩見三内のミサゴ
 ミサゴは主に魚類を食べるので「雄物川」の近くで営巣をしていた。

 
           

                                              ミサゴのつがい                                          


           

                               
                             巣材をはこぶ親(♀) 

   
           
                          
                           巣に降りる寸前の親(♂) 


【太平山地 クマゲラの棲息調査】
 半世紀以上が過ぎてしまったが秋田のマタギ史に萩形マタギ集落があったが、現在は廃村になり何もない自然にもどった。この奥地から1000㍍級の山塊に取り憑く秘境、マタギの狩猟地、そこには国の天然記念物「クマゲラ」が棲息していた。

 私は冬、この奥地を単独で歩いていた。


            

                江戸後期から昭和20年代まで八木沢のマタギはこの太平山地で熊狩りをしていた
                    射止めた熊は山の神からの授かり物とし、集落まで運び皆に公平に分け与えた                  
                  

 
  

                            クマゲラの棲息を確認

  


                     
                                 採餌痕


太平山地での貴重な植物


 
 
  岩場にへばりつく ウラジロヨウラク                  厳しい環境で越冬 ハクサンシャクナゲ


              

                         マタギが好きだった「ヤシャビシャク」



タカとマタギは同じ仲間のようだ
 タカは生態系の頂点に位置し狩りは集中して獲物に襲い掛かる、捕らえた獲物を子育て中の巣へと飛び立つ、その様子を観察していると昔のマタギとよく似ていた。マタギとタカは自然界で一定のルールに沿って狩りをするが、その様子はまるで流派の流れをくむようだった。
 マタギは世襲で秘伝を伝授し代々受け継がれてきた文化、大自然のなかで棲息する生き物、特にタカとマタギは狩のしかたに多くの共通点が見られ、感銘をする一面が多く見られた。昔のマタギは「クマは山の神からの授かり物」とされ、必要以外は捕獲しないのが原則でタカもそうだった。
 古来、タカとマタギは兄弟とされ、狩りの術は親から子へと厳然と受け継がれていた。

 古い話になるが嘗て八木沢集落の故老マタギが狩りからもどる途中、衰弱したタカを保護し自宅の金網小屋に入れ肉を食べさせるとたちまち回復して怖くなってしまったと興奮しながら話しをしていた。さらにマタギは回復をしたタカを放鳥してから数か月後、そのタカは数回、マタギの前に姿を見せたと話をしていた、多分、タカはマタギと同じ仲間だと捉えていたと思う。
                                                                               (写真と文:佐藤良美) 

【主な新聞掲載記事】
 平成09年04月06日 ニホンザルとらえた「秋田魁新報社」
 平成09年07月24日 太平山北面でクマゲラ生息確認「秋田魁新報社」
 平成12年04月24日 太平山でイヌワシの写真撮影に成功「秋田魁新報社」
 平成12年12月28日 太平山上空のクマタカ撮影「秋田魁新報社」
 平成13年06月16日 営巣中のミサゴ撮影「秋田魁新報社」
 平成15年08月22日 ミサゴの営巣を観察 巣立ちの瞬間など撮影「秋田魁新報社」
 平成16年08月03日 仁別でミサゴの巣立ちの瞬間撮影に成功「秋田魁新報社」
 平成16年09月08日 ミサゴのひな巣立つ 秋田市濁川「秋田魁新報社」
 平成17年06月19日 仁別でクマタカ営巣地発見「秋田魁新報社」
 平成17年08月09日 クマタカのひな巣立ち「秋田魁新報社
 平成18年07月09日 ハヤブサのひな大空へ 岩見ダム周辺「秋田魁新報社
 平成18年07月25日 秋田市添川でミサゴ 自然界の厳しさカメラにおさめる「秋田魁新報社」
 平成19年08月14日 クマタカ巣立ち 2年ぶりに確認「秋田魁新報社」
 平成20年08月28日 クマタカのひな巣立つ 絶滅危惧種 仁別で会社員確認「秋田魁新報社」
 平成21年05月14日 山菜採りクマにご注意「秋田魁新報社」
 平成21年07月24日 オオタカ2羽巣立つ 仁別で会社員が確認「秋田魁新報社」
 平成21年08月18日 クマタカひな巣立つ 会社員が確認し撮影「秋田魁新報社」
 平成22年07月28日 秋田市濁川 みさごひな巣立つ「秋田魁新報社」
 平成22年08月06日 クマタカ巣立つ 仁別「秋田魁新報社」
 平成23年07月14日 巣立ち間近い?オオタカのひな「朝日新聞 秋田」
 平成25年06月19日 オオタカのひな すくすく育つ 河辺で営巣確認「秋田魁新報社」
 平成25年06月23日 秋田さきがけ 週刊NIE 家族で読もう 注目2「オオタカのひな育つ」(P7)
 平成270814日 秋田)クマタカのひなが巣立つ 秋田の山林から「朝日新聞 秋田総局」
 平成290816日 クマタカ 巣立ちの季節「秋田魁新報社」 
 平成290919日 地方点描 巣立ち「秋田魁新報社」

関連資料
神秘のカゴ山 熾烈を極めた 巨熊とマタギ
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ー後世に語り伝えたい「八木沢マタギ」200年の歴史ー