ようやく観ることができました。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
原作はアプトン・シンクレアが1928年に発表した小説OIL!
シンクレアはこの時代を象徴するmuckrakers(暴露作家)と呼ばれるライターの一人でした。1906年に発表したTHE JUNGLEが最も有名。これは、リトアニアからの移民の家族が働く食肉工場の過酷な環境、またソーセージを製造する不衛生極まりない現状を暴き、アメリカ社会に大きな衝撃を与えました。ジャック・ロンドンはこの作品を「移民労働者のアンクル・トムの小屋」と称したと言われます。最近は日本でもよく耳にする「アメリカの食肉検査法」は、この小説をきっかけにできたのです。
南北戦争後のアメリカは全土に産業主義が広まります。そして、人々は万物の尺度を金に求め、物欲が人々を支配するようになっていきました。庶民は物質的な繁栄を歓迎したものの、実際には貧富の差が広がるばかり。しまいには、汚職も横行し、無法な個人主義が幅を利かすようになってきます。神との契約に則り、信仰と勤勉をもって幸福を追求するというアメリカの理想は影をひそめてしまいます。
そんな中、20世紀初頭のこの時期、大衆雑誌は挙って記者たちに政治や大企業の不正を暴露させたわけです。そんなmuckrakersの中で一番有名だったのが、このアプトン・シンクレアでした。彼は人間の本性は「善」であり、社会は必ず是正できると信じていました。ただ、彼の小説は「優れたプロパガンダ」として捉えられているけれど、文学としての評価は低いようですね。
ま、私自身、この時期のアメリカの文学作品はとても好きなので、いきなりこの映画の「周辺的なこと」を長々と書いてしまいましたが、以前に担当の先生が「この時代の作品は…まず、日本語訳のテクストは手に入りませんし、実際、アメリカ人でも殆ど読んでいませんよ」なんて仰せられたのですが~…でも、こうやって映画や舞台ではよく取り上げられていますけどネ~それというのも、実際、21世紀を迎えた今になっても、私たちはまだ彼らが提起した問題の「答」を見出していない…
そして、グローバル化によって、これはもはや「アメリカ」だけでの問題ではなくなり、今や、世界中の人たちが同様の問題意識を分かち合い、自問し続けているということの表れなのでは…
で、ここから映画の話に行こうかと思いましたが、時間がなくなってしまいました(!)
今日はイントロダクションだけで終わります。to be continued
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