数日前の話になります。
今回もBrooklyn Heightsを散策しました。
このストリートを進むと(トップの写真)、やがてこの風景が目の前に現れるというのは…

何度経験してもわくわくするものです。
こんな景色のいいところなのに、信じられないくらいに静かなのがいいのです。
世界貿易センタービルがあったころは、こういう眺めでした。

ここから少し入ったHicks streetには有名なPlymouth Churchがあります。

この中庭の像については、Paul Austerの小説に取り上げられていたのが印象に残っていて、このブログでも書いたことが何度かあると思いますが、

この像の人物ははHenry Ward Beecher。
19世紀、ここの教会の牧師として奴隷解放を訴えました。この角度からはわかりにくいですが、Beecherの左側には、助けを求める奴隷たちの像があります。
こちら↓

そして、恥ずかしながら最近知ったのですが、このHenry Ward Beecherの姉はHarriet Beecher Stoweで、日本ではUNCLE TOM'S CABINの作者として知られるストウ夫人だったのですね。
弟にあたるHenry Ward Beecherは牧師でもあり、リベラルなオピニオン・リーダーでもありました。奴隷解放を訴えるばかりでなく、アイルランド人移民は受け入れられていた一方で、中国人の移民を制限しようとする動きがあったことに強く異議を唱えるなど、あらゆる偏見を問題視しました。
宗教者でありながら、Darwinの進化論も肯定しました。とにかく、このPlymouth Churchは彼の考えに共鳴する人たちが自然に集い、当時のリベラル派のひとつの拠点にもなっていました。
彼の説教には詩人のWalt Whitmanも熱心に耳を傾けたといわれています。
ところが、最近知った彼のもう一つの面というのは…このHenry Ward Beecherという人は、恋愛も自由であるべきだと考えていたようで、人妻との不倫スキャンダルでも世間の注目を集めました。また、今でいうところの「薬物使用」が問題になったこともあるそうで、19世紀、それもプロテスタントの牧師の振る舞いとしてはかなり衝撃的だったのではないでしょうか…
しかし…60年代のカウンター・カルチャーの担い手たちの走り(?)と考えられないでもありません。
1887年に、74歳で病死しましたが、当時のBrooklynは市をあげて(当時はNew Yorkの一部ではなかった)彼の死を悼みました。

向こうに見えるのはBrooklyn Bridge