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マサの雑記帳

海、山、庭、音楽、物語、歴史、温泉、経営、たまに税について。

タイリクバラタナゴ

2016-01-16 17:17:05 | 日記
 あまり知られていないが、茨城県は農業生産額において
北海道に次いで全国2位である。一大消費地に近接した
供給基地という面もあろう。
 西日本で10年過ごして戻ってみると
派手な観光地や食材に乏しいが、米、野菜、魚、水、
まずまず豊かで「まあ、いがっぺ」と内部充足している人が多い
ように感じる。
 結果、対外的なアピールが弱く、都道府県ランク最下位、というのは
周知のとおりである。

 小さな世界で充足できたらどんなにいいだろう。
龍安寺の裏手に手水鉢があり「吾唯足知」と彫ってあり、
水戸光圀が寄進したものと言われている。
 茨城には彼が晩年を過ごした、西山荘という山荘がある。

 思うに茨城県人は、中央に近いために情報は入ってくるのだが
案外に食・住が豊かなので、スタイルを世情に合わせようという経済的動機に乏しい。
しかし同時に、時流との齟齬は認識し分析はするので、合わせなきゃという
葛藤から、以下のような典型表現が生まれたのではなかろうか。
 水戸の三ぽい、という。
理屈っぽい
怒りっぽい
骨っぽい
 幕末の水戸藩士の、桜田門外の変や、天狗党の乱、いずれも
大きな目で見れば、有為の人材を失った短慮、と言わざるを得ない。

 私の小さな世界は、家から2分の里山と田、その傍を流れる小川である。
幼少時には田であったが現在は耕作放棄された湿地。
打ち捨てられたような、芦と水と林に囲まれたその世界は静かで、夕日が美しい。
散歩の度にカワセミも見ることができる。

 その小川で今日初めてタナゴを釣った。
子供のころは大きい魚が釣りたかったのだが
長じてみれば、小さな魚が愛おしく感じる。

 タナゴはドブガイ(地域ではカラスガイ、バカガイと呼んでいる)
に産卵をする。この二枚貝は、その名に似ず、
そこそこ水質がよいところでないと生きられないそうだ。
 塾で知り合いの他校生に長靴姿を目撃され
「(釣りキチ)三平」とあだ名されたほどに
釣りをしていた私も、子供のころは釣ったことがなかった。
 新発見である。

 しかし、その私の小さな世界のど真ん中を道路が走るという。

 車に煩わされない、年寄りの良い散歩道であった。
私は、私の小さな世界で、子供にミミズの取り方を教え、
それを餌に雑魚釣りの手ほどきをした。
夏はとっておきのクヌギの木をパトロールし、シマシマの蚊に刺され、
夜はホタルを探し、毛虫に刺される。私が幼かったころのように。
そんなささやかな体験の遺産さえ、残してやれない国がいいのか?国土交通省。
世界遺産の登録がそんな大事なことか?過去の死者が残した遺産を残し続けるのは
登録の事実じゃない。そこに価値を見出す生者の感受性が継続することではないのか?

 だから、今日、環境が改善した証を釣り上げたのに悲しい。
小さな世界はなぜに常に犯されるのか。

 かつて、東京人の民度の高さに感銘を受けた世田谷の羽根木公園。
高い意識に基づいたプレイパーク。
私の小さな世界を、あのようなものに、したかった。
無念である。