ねぐら(進化する弁護士ブログ)

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その都度、興味のあるネタを書いて行きます。最近は、投資話が熱いです。。

第一審の国選弁護人が、控訴審でふたたび国選弁護人に選任される方法

2016-11-30 | 刑事弁護とか
以下、東京のお話です。

とある刑事のガチ否認事件で、有罪にされてしまい、当然控訴した後で、同じ国選弁護人が控訴審でも選任されるかという問題。

刑事弁護に詳しい知人から、「半々くらい。係属した高裁の部によっても異なる。否認事件で、上申書を出してもダメだったケースを実際に知っている」という事前情報だけは得ていた。

また別のスジからは、「裁判員などの重大事件であれば、再任してもらえる可能性が大きい」とのこと。

本当のところ、どうなんでしょうね。

私としては、控訴審弁護人として引き続き活動することはやぶさかではないが、ガチ否認のプレッシャーがきついので、依頼者が希望すればやってみるか・・・という程度で、

(しかし、控訴審で熱心ないい弁護士に出会えればよいが、刑事弁護に不熱心な、とくに控訴審や上告審などはどうせ勝てないと見切りをつけて、てきとうに流す弁護人もいないではないので・・・そういう人に当たってしまったら悲劇だから、やっぱり私がやるべきなんだろうな)・・・と内心思いつつ、

高裁に上申書を出してみたところ、無事、国選弁護人として再任されたので、何かの参考になればと思い、ここに記録しておきます。


スケジュールはちなみにこんな感じ。


■控訴申立及び上申書を提出        平成28年10月11日

■法テラスにも再任希望の報告書提出          同月12日

■拘置所にいる被告人の元に、
 弁護人選任の希望調査票が届いたので、提出する    同月20日ころ


(・・・しばし時が流れる・・・)


■高裁からの国選弁護人候補者指名通知依頼書が法テラスに届く 11月28日

■法テラスから再任OKの連絡あり               同月29日

■めでたく再任される                     同月29日


なお、法テラス霞が関の親切な職員さんに聞いたところ、再任されなかった場合は、ちゃんと知らせてくれるので、知らないうちに自分が落選して違うだれかが弁護人になっている、ということはないそうです。


高裁に提出した上申の内容ですが、特別なことは何も書いておらず、ごく簡単なもので通りました。

上申の趣旨
 当職は、上記被告人の第一審事件(※事件番号××××)について、国選弁護人として選任された弁護士ですが、控訴審においても引き続き国選弁護人として選任されたく、ここに上申します。

上申の理由
 本件は裁判員裁判対象事件であり、××××という点が主な争点であるところ(否認事件)、このように重大かつ困難な事件について、控訴審の段階で新たに選任されたばかりの弁護人に対し、被告人が一から事情を説明し、相互に信頼関係を築かねばならないとすれば、十分な防御ができず、充実した審理ができないおそれがあります。
 また、被告人は××××(外国人)であるところ、日本語が不自由であるため、コミュニケーションをとるため通訳を介する必要があり、この点からも、なじみのない弁護人及び通訳人との間で相互理解を得るまでに時間がかかるおそれがあります。
そのため、被告人は、本件の事情をよく知っている当職が、控訴審においても国選弁護人として選任されることを強く望んでおります。
そこで、前記の通り、上申する次第です。
以上


(※だいたいこんな感じ。実際に出したものとまったく同じではないです。念のため。
ちなみに、通訳さんも同じ人が選任されたので、非常に良かったと思っています。)


しかし、控訴趣意書提出期限、平成29年1月11日というのは、なかなかタイトなスケジュールですね。(苦笑)

保釈保証書発行事業のこと

2013-06-05 | 刑事弁護とか
さて、もうすぐ僕が担当している被疑者が起訴されるかもしれないので、これから保釈の準備だ。


・・・ところで、この6月から「全弁協」が運用を開始することになっている「保釈保証書発行事業」についてだけど、当初、僕は大反対の立場だった。

難しい理屈は抜きにして、理由はただ一つ。

当初案によれば、被告人の弁護人、親族その他の関係者(被告人自身は除く)が「保証委託者」となって申し込みを行い、万が一、被告人が逃げるなどして「没収」があった場合には、全弁協が保証金を裁判所に納付したうえで、保証委託者に求償する、
・・・という、おそろしい制度設計になっていたからである。
(※2011年1月20日付「保釈保証制度に関する提言」日弁連 より)


これって、ようするに、逃げちまった被告人の代わりに、弁護人個人がお金を払いなさい、という意味だよね?

はっきり言う。

あり得ない。


現場の第一線でそれなりに熱心に活動している刑事弁護人だからこそ、僕はそう思う。


刑事の被告人になるような人たちは、ほぼ例外なく“弱い”者たちである。

弁護人との信頼関係や、だれかに何かしてもらったことへの恩義や、家族への責任・・・など人として大切なはずのモノよりも、「おれは逃げたい」という一時の欲求の方が勝ってしまうくらい心の弱い連中である。
(そういう弱さが、犯罪の遠因になっていることも多い)


弁護人が保証委託者になるという当初案は、ようは「絶対に保証人になってはいけない」タイプの人たちの保証人になることを強いられるという点で、非常に問題が大きいと感じていたのである。


この点、被告人の配偶者や親兄弟が保証委託者になれるから心配いらない、あるいは、弁護士には保証委託者になることを断る自由があるから強いられることにはならない、という人がもしいたら、刑事弁護を分かっていない。

国選の刑事事件では、家族にも友人にも見捨てられ、頼れるのはもはや担当の弁護人しかいない、という哀れな被告人に、しばしば遭遇する。

こういう人が、「先生、保釈保証書発行事業でお願いします」と言って来たとして(いまどき情報社会なので、被告人は余計なことを色々と知っているのが普通)、弁護人さえその気になれば保釈による身柄解放が実現できるというシチュエーションで、はたして断れるだろか?
(弁護士自身の良心の問題もさることながら、最善の弁護活動に努めるべし、という弁護士職務基本規定46条との関係は?)

断るとしたら、何と説明すればいいのだろうか?・・・そういうやっかいな問題があり、事実上、強いられることになりかねない、ということである。


さて、「自由と正義2013年5月号」の97頁を見ると、「弁護人は保証委託者にはなれない」という一文が明記されているので、当初案から変更があり、僕が危惧していた点については、改善が図られたものと理解できる。

(たぶん、僕と同じような問題意識で当初案を批判した弁護士が大勢いたはずである)


僕としては、いちばんの懸念事項はクリアできたことになるが、今後、この制度をどれくらい活用するかは、慎重に判断していこうと思います。

(自由と正義98頁には、各地の裁判所・検察庁の理解を得るのはこれからだ、みたいな記述があるが、大丈夫なのかね??)

「こんなやつ本当は弁護したくない」

2013-05-23 | 刑事弁護とか
僕は、刑事弁護はかなり一生懸命やる方だと思うが、その理由の一つには、「法廷で尋問をしたり、弁論をするような仕事が好きだから」というのがある。

法廷で良い尋問、良い弁論をするためには、その前提として被告人や被告人の家族との信頼関係が強固にあった方がいいに決まってるので、法廷に行くまでの活動(捜査段階の弁護活動や、起訴後・第一回公判期日前の弁護活動)にも自然と力を入れることになる。


他方で、僕は刑事弁護を熱心にやるタイプの弁護士にたまに見られる「人権派」ではない。

どっちかというと、ふつーの市民の感覚に近いタイプだと思う。(たとえば、死刑廃止論者ではないなど)

内心忸怩たる思いで、“犯罪者”の弁護をしていることもある、というのが正直なところだ。



以下、「こんなやつ本当は弁護したくない」と内心思うことが多い犯罪類型ワースト3。


★第3位 性犯罪の常習者
もちろんここに詳しく書くことはできないが、中にモンスターみたいなやつがいる。「反省して、しっかり更生したい」って、口で言うのは立派だが、被害者の女の子は、マジで死んでほしいとしか思ってないということに早く気づけ。真の更生があり得るとすれば、それからだ。


★第2位 一部の外国人犯罪
外国人にも、日本人と同等な適正手続が保障されるべきことは、当然である。しかし、最初から「犯罪を行う目的」で、わざわざ本邦にやってくる大馬鹿者については、なんでこんなやつに国民の税金で国選弁護をつけ(※以下省略)


★第1位 「かあさん助けて詐欺」に代表される殊更に弱者を狙った詐欺
言うまでもなく、卑劣すぎる。最低である。
(・・・・ネーミングの是非はともかくとして)


もちろん、上記のような事件でも、決して手を抜いたりはしないので念のため。

しかし、「5年後」に同じ情熱で刑事弁護を続けているかは、正直分からないなあ・・・と思ったりもする今日この頃である。

署名押印拒否のお話

2013-04-26 | 刑事弁護とか
※以下、話の核心部分以外は、事案をぼやかして(変えて)あります。


・・・とある刑事事件。登場人物は、Xさん、A、B。三人で共同して、財物を窃取したという、ありふれた事案。


先に逮捕されたA・Bが、第一回公判期日において、「Xが主犯格である」旨を供述。(もちろん、同じことが書いてある捜査段階の供述調書もぜんぶ証拠採用される)


その後、Xさんが逮捕・勾留された。(僕は被疑者国選担当弁護士として出動)


Xさんは、事件への関与そのものをかたくなに否認。


「Xが主犯格である」という証拠は、A・Bの供述以外に存在しなさそうである。(このことは、最後の方で起訴をあきらめた担当検事に聞いて確認)


他方で、事件当日のXさんのアリバイを示すことも難しそうである。(なんせ、ご本人が覚えてない)


なお、“共犯者”であるA・Bは、公判廷において、「真摯な反省」が認められて、今回に限って執行猶予。


さて、Xさんの運命は??


◇ ◇ ◇ ◇


こんなとき、僕は勾留されている被疑者に対して、「供述録取書への署名押印100パーセント拒否」を指導する。


「黙秘権行使」ではなく、「署名押印拒否」を指導するのは、(被疑者の性格にもよるが)取調官にさまざまに問いかけられる状況下において、ずーーっと黙っているというのは、ふつうはそんなに簡単なことではないからである。


だから、取調官と雑談ぐらいしてもいいよ、でも署名押印はぜんぶ拒否。弁護人からも言っておくから、最初に宣言しちゃいましょう、というスタンスでやる。


このとき大事なのは、「自白調書への署名押印拒否」ではなく、「100パーセント拒否」である。


それは、自分に不利なことが書いてある調書のときは拒否して、それ以外は署名押印する、なんて器用なことは、まず無理だからである。


(経験上、「納得がいかないときは署名押印しないでください」という程度の“ゆるい”アドバイスのときは、たいていの被疑者は、妥協してサインしてしまう)


また、被疑者の言い分がそのまま記載されているように見えたとしても、余罪についての微妙な言い回しとか、ニュアンスにおいて不利益な記載が紛れ込んでいる、というのは、よくあることである。(そういう調書を作るのが非常にうまい検察官もいる)


だから、100パーセント拒否。シンプルで実行しやすい方針を立てる。


検察官は怒るかもしれないが(大抵けんかになる)、「法律上の権利だから」と、場合によっては刑訴法の該当条文を拡大コピーして差し入れをする。


もちろん、方針を貫くためには、弁護人と被疑者との信頼関係があることが大前提である。


したがって、接見の回数はやや多めになる。(週3回とか)


こうした方針だと、確実に勾留延長されるし、接見禁止はついたままだし、起訴されて裁判になった場合には長引く(関係者を一からぜんぶ尋問しなければならないので)という欠点がある。(保釈もたぶん認められないだろう)


それはご理解いただいたうえで、「本当にやってないなら」人生をかけて、一緒に闘おう、と僕は言う。


(その覚悟と気迫が検察官に伝わることで、かえっていい結果になる、と僕は考える)


もちろん、勾留・勾留延長に対する準抗告、勾留理由開示請求などは、適宜まぜ込んでいく。(準抗告は認められれば最高だが、ダメでも一定の意味はあると考える)


◇ ◇ ◇ ◇


さて、X氏であるが、“共犯者”の証言しか有罪の証拠がない上に、被疑者本人の調書を一つも作らせなかった結果、ゴールデンウィーク突入前に釈放されましたとさ。


(僕も休めるし、めでたいことである)


※毎回こんなことをしてるわけではないので念のため。どっちかというと、「(僕は味方だからどこまでも信じるけど)その否認は、検察官・裁判官には通用しないから、実はやったなら、早く自白した方がいいよ」・・・という方向のアドバイスを必要とする被疑者が多数である。

続・おじいちゃんの弁護士

2013-02-01 | 刑事弁護とか
あるとき、被疑者国選の新件を受任し、受任した日の夕方に警察署へ接見に行った。

すでに勾留延長がされており、20日間の満期が明後日に迫っている、という状況での弁護人選任だった。

こういう変なタイミングで弁護人を付けるということは、ひょっとすると変な人なのかな?

・・・・と覚悟を決めて面会してみる。

ところが出て来たのは、意外とふつーの男性である。

もちろん、犯罪で捕まってしまうような人なので、善良なる市民と比べれば異常なのであるが、平均的な被疑者・被告人と比べて、格別変な人というわけではなかった。

で、一通り話を聞いたところで、「どうしてすぐに国選の弁護人を呼ばなかったの?」と尋ねてみる。

すると、答えはこうだ。

「(前科があるのだが)以前に裁判を受けたとき、国選の弁護人はなにもしてくれなかった。接見にも●回来ただけだった。情状証人である家族との打合せもなかった。国選弁護人を呼んでも意味がないという認識である。(もちろん、私選で弁護士をつけるほどの資力はない)最後の取り調べの時に、検事さんに勧められて、やっぱり起訴後のことも不安なので、呼ぶことにした」

なんという弁護士?と聞いてみると、

「×××××」

なんか聞いたことある名前。

事務所にかえってから調べてみると、
いつぞやのおじいさん弁護士であることが判明。


うーん、他人のことをとやかく言うつもりもないが、それならわざわざ国選弁護を引き受けなくてもいいんじゃないの、と思う。

採算度外視して(とまでは言わないが報酬の多寡にこだわらず)熱心に刑事弁護をやる若手なら、今どき掃いて捨てるほどいるのにね。

僕としては、こういう被疑者・被告人のときは、燃える。

それじゃ、国選でもすげー一生懸命やる(刑事弁護に可能な範囲でそれなりの結果も出す)弁護士がいるってことを教えてやろう!・・・と。


お爺ちゃんの弁護士

2012-09-17 | 刑事弁護とか
とある国選事件でご一緒させて頂いた(共同被告人A、Bそれぞれの弁護人に選任された)年配弁護士の弁護活動がある意味「すごかった」件。

・被疑者・被告人段階を通じて、●回しか警察署に接見に行ってない。

・検察官請求証拠については、閲覧くらいはしてるんだろうけど、謄写はゼロ。

・被告人質問は、ぶっつけ本番。全部アドリブ。(それでも一応の形にはなっていて、被告人の「反省」を引き出しているところはさすが)

・弁論要旨の中身を準備していない。公判期日が開かれている間に、その場で起案。(まあ、確かに弁論要旨をあらかじめ作って裁判所に提出しなければならないという法はない)


・・・事実関係にほぼ争いのない事案で僕の依頼者には執行猶予がついたから良しとする。

が、こっちは、検事調書の内容について、細かいことだが納得のいかない記載があり、部分的に「不同意」や「信用性を争う」とやらざるを得なかったので、無条件に「全部同意」の共同被告人側と、弁論を分離されてしまうのではないかと冷や冷やしたものである。

(僕の依頼者にとっては、素直に反省していれば、ほぼ執行猶予がつくことが予想できた事案なので、弁論分離⇒次回期日指定などとやられたら、身柄拘束がいたずらに長引くだけで何一つ良いことがない)


軽いカルチャーショックを受けたが、若手が真似をしてはならないことは言うまでもないだろう。

初、裁判員裁判

2011-03-04 | 刑事弁護とか
ついに来た!

今回はスキルの高い兄弁といっしょ(僕は二人目の弁護人)なので、心強い限りですが、刑事弁護に情熱のある人間としては、やはりテンションが上がる。

事務員さんには、「えーまた忙しくなる」(僕が接見などで事務所を留守にすることが多くなって困るのは彼女たちなので)と言われてしまいましたが@@@


とある事情により、一部無罪を争える事案なので、これは燃えます。


追記:結局、事情により、「無罪」を争えるネタではなかった・・・。