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あさくささくさく

06年2月、浅草にひっこしてきた。

あけのふぇらがも

2010-01-08 03:26:50 | 通行人
東京に向かうスカイマーク008便、3人席の真ん中にすわったわたしの後にやってきたのは、ふわふわジャケットを羽織った茶髪女子(左)と小顔ストレートロングの茶髪に大きな丸いサングラス&白いコートにオープントウのフェラガモ履いた20代半ばのモデルみたいなおねえさん(右)です。ふたりともこぎれいだったけど、この説明の長さとわたしの関心度はぴったり比例していて、わたしはそのぴかぴかキレイな右ねえさんが気になって気になって、窓の外見るそぶりでこそこそ。サングラス越しの顔ってまぶたの状態がわかりにくくて遠慮と好奇心のハザマで苦戦する。しぜん、古い赤ワインみたいな朱色のつやつや靴をおもに見ていた。眠る態勢をととのえるおねえさんはじきにその靴を脱ぐんだけど、じゃっかんハンマートウの足をつつんでるストッキングがなんかもー上等で、これまたどれくらいの時間をかけたのか、わたしはみょうにすてきな肌色ストッキングの足先をじーと見ていた。ここまで書くとわたしはただのへんたいですが、まぁその間に手帳をひらいたり機内誌を読んだり(両側のふたりは何をひらくこともなくひたすら眠りこけ、左ちゃんは思い出したようにポカリを飲み《上空高くなるとペットボトルはあけにくそうだった》食べ残しのじゃがりこのカップに指をつっこんでいた)いったん眠りに落ちてあわてて現にかえってきたりし、寝入ってしまった右ねえさんの、キレイにしか見えない顔はパーツいかんではない、その不思議をしっかりたんのうした。
着陸前に右ねえさんの眠りは背もたれを倒した深い深い淵のなかにあって、きゃびんあてんだんとがいくらオヤスミノトコロシツレイシマスオキャクサマオキャクサマしまいにはぽんぽんとんとんたんたんてんてんたたけどつつけど爆睡。んじゃってんで制服嬢はボタン、わたしが右ねえさんの背もたれに手をやってよいしょと椅子の背を起こしたら、右さんムチウチみたくビクンとしたけど目覚めにはいたらずこんこんと眠っておった。
ガタンと着いた頃にはわたしも満足し、後も見ずたったか降りて京急線にゆられて目指す新橋、の手前、急に乗客の少なくなった車内ではたと目をやれば、斜め前に座っていたのはさっきの右ねえさんであった。あらぐうぜーんとよく見ると、その隣には、これまたモデルにしか見えない装いの甘いマスクの優男。甘いマスクの優男としか表現のしようがないその若いおにいちゃんは、もうわかりやすく右ねえさんに夢中であり、不必要に右ねえさんにさわってはきゃっと手を離し、もう絵に描いたように右ねえさんの一挙手一投足にふわふわ浮かれて幸せそうなのだった。のわりに右ねえさんのテンションはロー、とてもロー。彼氏じゃないのか?車を持たないあっしーくん?空港まで出迎えるって時間も体力も若さがあるうちのたのしさですけど、右ねえさんの表情はいっこうに晴れずシビトのような静けさであった。ビジンっちゃそんなもんかネーと考えていると、ふたりは新橋のひとつ手前で席を立ち、優男はできすぎなくらいにかっこよく彼女の荷物を肩にいくつもしょって颯爽と降りてった、で、右さんはその後ろからあのきれいなフェラガモ足を左一歩、右を一歩と出……?????
右のヒールが忽然となくなっていた。右ねえさんは、そんな、右のヒールがまるごとないなんて話はまるでナイみたいなふうに、左と同じ高さに右足つま先立って、おりてった。飛行機に最後に乗り込んできたくらい急いでいたからああなったのか、それとも足のアクシデントがあったから遅くなったのか、それとも、彼との待ち合わせを電話で打ち合わせているうちに出発の時間が刻々と迫りあわてて駆けてすっころんで――彼女が機上の人だった1時間半に、優男は完璧な身づくろいと待ち合わせに間に合うようにスケジューリングしていたのだなぁどんなにいそがしくても好きな相手には時間を割くもんなぁ幸せな恋人たちだなぁ熱愛時間が済んだらあのふたりはどんなことしゃべるのかなぁなんてあわててほかのいろんなこと考えてみたくらい、見ているわたしは驚いて、でもやっぱりキレイな人はなにしたってキレイだとおもった。わたしも半年くらい前、全力疾走してたら茄子くらいの太さの5センチヒールをぼっきり折っちゃったことある。でもあの靴は黒かったもんな。え?

いろんな人のことを近く大事におもった、長い長い日

2008-09-02 05:20:43 | 通行人
あんですの大奥さんは綺麗で素敵でもはやわたしの憧れで、店のなかに姿があると入ってってなにか買わずにはいられない。から始まった、近く遠くのたくさんの人たちの横顔、記憶。すなわち、あんですの大奥さん、浅草神社の若い女の人3人、お坊さん、駅員さん、隣にすわったおばちゃん、メールを送った人(母、仕事のひと、友だち2人)、売店の売り子さん、ビッグイシューのおじさん、写真のなかの韓国人、小田急のパートの女の人、おまわりさん2人、受付の美人、知り合い、コラチューの人3人、三井住友BKのおねえさん、鳩、アンジェリーナ・ジョリー、マドンナ、ケンカを売る最中の心理学者(ビッグイシューの往復書簡をやってるひと)、いとこ、中国出身の恩人、タクシーの運転手さん。以下、長かった極楽の日のながいながい内訳。

7時半起床。バナナを1本たべて、あたらしい歯ブラシで歯をみがいてでかける。お富士さんに参って、あんですで小倉あんぱん買って、三社さま参って、観音様拝んで地下鉄にのる。きょうはついたちで、時間に余裕があったから運がよかった。三社さまのとこの箱入り猫、若い女のひと3人ににゃんにゃんしていてちょっとうらやましかったけどいいんだ。地下鉄は、出発のベルが鳴ったところを階段駆け下りていったら、駅員さんが運転手さんにちょっとドア閉めるの待ってねって合図しているのが見えて、飛び乗ったらすぐにドアがしまった。こういうとき、始発の駅ってすてきで感謝。地下鉄の中ではメールを打つ。返信しなきゃいけない4人に打った。四谷で用件を済ませて、また地下鉄にのる。新宿だからすぐです。駅ビルでお寿司屋さんの売店に寄る。散々まよってバッテラにした。待ち合わせの時間まで15分くらいあったので、銀行に行こうかまよったけどいっぷくすることにして、駅前の喫煙スポットにでた。なーんだか非常に快適だなーとおもったら、屋外だからきもちよくて、周囲にいるのはみんな喫煙者だから遠慮しなくてよくて、さらに平日の10時台はスペースに余裕があって。これで心身ともにじーつにりらっくすしないほうがおかしい。数分立ちつくした後10歩もいかないところでビッグイシュー売ってたので、アンジェリーナ・ジョリーののった最新号と、ひとつ前のマドンナの号を買、ってまた10歩も行かないところに、緑色のちいさな冊子が落ちてた。

ら、それはハングルが踊る、大韓民国発行のパスポートで、そんな重要そうなものがまるで抗菌剤をちんまりのせた実験中のシャーレのように、半径5メートルほどにヒトを寄せ付けずに孤立してた。孤寝みたいな感じの孤立。わわわと一瞬頭がまっしろになって、おずおず手にとって、思わず周囲をぐるりとみて、交番ない、ヒトに訊かなきゃ、小田急の人に聞いて、なぜかその人にお礼言われて、一層下の交番の場所おしえてもらう。階段おりながらひらいてみたら落とし主は若い男の人で(年齢でも見ておけばよかった)とにかく交番に行ったらおまわりさんが折りたたみ椅子をひらいて座らせてくれた。紙に名前と住所かきこむ。人のパスポートだからいらないだろうけど、まぁ個人情報だから渡せないんだけど、お礼の権利放棄するでいいですよね?って人相のよい安定した感じの若いおまわりさんが言った。女の人だし、拾ったあなたの住所を本人に教えないっていうほうでいいよね?とも言われた。どっちもどっちでもよくて、国際恋愛にはたいへん興味はあるがなにかに追われるような気分で、そのいちいちに署名して、わたしは真空状態の、汚れをしらない善行の人みたいな感じになった。拾った人にレシートみたいなのを渡すんだけどお急ぎだったらこっちでやるけどどうしますか、って、じゃーもうお任せします、っつってぴゅーっと出る。

待ち合わせのビルにたどりついて受付のおねえさんにココはコラチューピャピュダメーメービルですか、と訊いてそうですといわれて、ロビーでおちついてあんぱんをたべた。粒あんのあんぱんのおいしさを知ってまだ1年たらずです。食べ終えて紅茶をぐびぐび飲んで一息ついたところに待ち人到着。パスポートの話をしたら、消費者金融にとびこみましたか、といわれて感心した。社会人たぁどんな話題を振られても軽妙に相槌を打ってなんぼだ。わたしだったら、へぇぇぇぇ!としか声がでなかっただろうな。それからしばらくマスカラやら口紅やらカバンやらをながめて、バッテラをたべに西口を散策。たべに行くというか、食べる場所をさがす途中で銀行に寄ったら、運よく3人待ちで、2分くらいで順序がまわってきて5分以内に用が済んだ。行き着いたのは三井ビルの55広場みたいな名前のフリースペース、これがすばらしく快適なところで、高層ビルの谷間に何本も高い木が蔭をつくってくれて、テーブルとベンチもあって、噴水まであって、天気はいいし、風はきもちいいし、きょうは屋外運のいい日だ。いっぷくして、切手の充実した新宿郵便局に行って、ビルにこもる。とちゅう、誕生日を迎えたいとこに電話してくれるよう母親にメールして、仕事の電話が1本あって、それ以外はずーーーーっと作業する。夜になって、担当の人がご飯をごちそうしてくれた。ナチュラルローソンにつれて行ってくれて、普段は買わないような高いもの選んでください!って言うんです。なのに色気なく海苔巻を選んだわたしに、デザートも選べって言う。ンじゃ遠慮なくパイナップルって言ったら、飲み物も買えって言う。作業場はおいしいコーヒーが飲み放題で、お茶もついでに飲み放題だからイイって言うのに、買ってくれた。わたしが貧乏性なのかね。

けっきょく作業がおわったのは23時58分くらいで、らーらーらー、人生初体験のタクシー券でご帰還。おどろいたー。そんなものくれちゃっていいの。月曜日の夜の場合、新宿浅草間は高速に乗れば10分くらい、というサンプルを得ました。もうちょっと堪能したかったなー!これを極楽といわずしてなんという。6000円くらいだった。今夜は時速80キロくらい出たけど、普段は50キロくらいなんだって高速。タクシーの運転手さん、今夜は夜中の2時半くらいまで仕事だって言うから、へー遅番は何時からですかってきいたら朝7時半くらいだってゆーんだ、のけぞった。さすがに仕事終わったら次の日の夕方くらいまで寝ちゃいますけどねーって、おじさんさっきわたしにおつかれさまです残業ですかーってきいてたけど、おつかれさまはあんただよ!すごいな!
まったくもう、きょうは一日じゅう極楽だったとおもったらもう次の日の朝がきてるぜ。

エロと893と金

2008-06-22 17:05:51 | 通行人
ひいきの肉レストラン、予約した時間に行ったら顔見知りの店員がハッとした顔になる。お店は狭いので下駄箱で起立して待機。すみっこに、白い大きな紙袋がふたつあって、中にはぎっしりと、白いケース入りのビデオテープ。優に50本はあったですぞ。いまどきDVDじゃなくてビデオテープなんてめずらしいねーと話しつつ、ひまつぶしにジャケットを見ようと1本持ち上げてみたら「陵辱…」。あらっ。もう一本、「処女宮…」。あららっ!!! 先客は学生の団体が2組と、2人連れが5組ほどだったので、きっとあの学生グループのどっちかが成年映画研究会なんじゃないかと推論。30分ほどでようやくおっさんふたりがでていき、着席。遅れを取り戻す猛スピードで1クールまわし、ふぃーとインターミッションをおいていると、目の前にいた男2人連れに、店に入ってきた男2人が合流するのが見えた。先発隊ふたりはごくノーマルな軽装、年は30前後くらい。後発隊は、色の黒い激痩せの人(茶髪細眉、藤色のシャツのボタンを乳間まであけた胸元にクロスのペンダント数本、左手首にはパワーストーンの数珠2本、細部のひねり過剰なスーツ)と、氷水を入れたコップみたいにびっしり汗をかいた大太りの人(なんか妙に清潔感がある坊主)。新宿のホストかなーと思ってそれきり、こちらは徒花より肉がすき。うしろにホストっぽい人がいるよ~と話して、第2ラウンドがつがつごくごくがつごく、の最中に連れの動きが止まった。ン?と尋ねると「今うしろで『やっぱそこは演出してないみたいな自然な感じで…』って話してた」。こっそり目を向けると、4人は本をひろげていて、表紙にでっかく“童”“貞”むにゃむにゃ……。にゃっは~。あの紙袋はおにいさんたちのだったのねしかもホストじゃなくて男優。途端に嫌悪感をあらわにする連れに、数多ある店のなかから、わざわざここにやってくるあの人たちも、私たちと同じようにこの肉の味を愛しているのだよ!となぐさめる……なぐさめる? 肉の味?

翌日、浅草界隈の小奇麗な珈琲屋。通された喫煙スペース、隣は893屋3人組。この中で一番上の立場らしいブローカー(ソファ席、オールバック、真っ白いヒモつきスニーカー、貧相)の話を聞く2人(それぞれ1人用チェア、坊主とゴマシオ、健康サンダルとスリッポン、くすみがち)。3億円(最頻出ワード)とか、回収できる~とか、ドのつく胡散臭さがただよってきて目がシバシバする。しかしここの珈琲はおいしいし、こちらはこちらに意識を戻して、前夜、肉レストランの次に行ったバーにいた面白い客についてふたりで復習。あのオイシャンは社長で3億円プレーヤーらしいけど確かにセカンドバッグが印傳だった!とか、その吉本みたいな爆笑オイシャンにつっこむヤマグチさんがこれまたすばらしかった!とか、次第にふたりとも熱をおびてきて、わたしがゲンキいっぱいに放った言葉がやけに響いて、すなわち「やっぱり“金を使うな気を遣え!”ってね!!!」。隣がお金の話の真っ最中だってことをころっとわすれていたぜ。ブローカーが、いきなり声を低くして、ちっっいさな声で短く、わたしに悪態をついたぜ。あーあーあー気遣いが足らんのはわたしでした。どきどきした。気がつかないふりしたけど。現に連れは気づいてなかったけど。ここらへんは893と素人の棲み分けがないからオモシロイよねーって連れはえへへとわらう。

すれちがった人たち

2008-03-02 01:33:17 | 通行人
夜8時前、サラリーマン客の多い本屋で、ランドセルを背負ったちいさな男の子を見かけた。棚を眺めているとBGMが止んだのでもう閉店かとおもえば店内放送、オキャクサマのオヨビダシをモウシアゲマス、ナントカユースケサマのオカアサマ、ナントカユースケサマのオカアサマ、4階でオコサマがオマチでゴザイマス、4階かうんたーまで……あぁあぁゆうすけくんもおかあさまも難儀でしたなとおもった数分後に再度店内放送、オキャクサマのオヨビダシを(中略)ナントカユースケサマ、ナントカユースケサマ、オカアサマがオ探シです、4階まで…って、じっとしとけよゆうすけ。

銀座線のなかで隣り合わせたおばあさんふたり。耳が遠くなってきて、だいたい何を言ってるかはわかるんだけど、はっきりと聞こえないのよね、そうなのよね、周りからは補聴器使えって言われるけど補聴器を使うほどじゃないのよね、そうなのよね、あーなにもかもこれから悪くなるばっかりなんだからイヤになっちゃう~、そうなのよねー……あれ、今ココどこ?まだ三越じゃないわよね、そうよね、まだ三越じゃないわよね、きょろきょろきょろ――きょろきょろきょろきょろきょろきょろ。聞いているこちらがしびれを切らして、三越前ですよと声をかけたら、ふたり揃って椅子から飛び上がりころがるようにして電車から降りてった。わたしやや小さめの声だったから、まだ補聴器がいらないのはたしか。

月末の銀行、おおにぎわい。ロビーで順番待ちしていると、ナハナハで有名な人が入ってきた。まるくて顔がぱっつんぱっつんのイメージだったけど、実際はほっそりしていて、髪が茶色だった。その人が小声でなにか言うたび、応対する行員がころころ笑っていた。だしおしみしないって感じのいいことだ。

にこげちゃん

2008-02-29 03:55:15 | 通行人
背後にすわっていたおんなのこが「かゆーい。かゆーーーい……どうして?」と言った。どうしてだろうね、しばらくそのおんなのこの相手をする(心の中で)。それから5分くらい経って、おんなのこがまた桃の柔毛みたいな声でふぬふぬふぬふぬ、半べそかきつつ「……ねむーい、ねむーい、ねむいよー(泣)」と始めた。コドモ時代ってどうしてあんなに自分をもてあますんだろ。こどもだから望みっつったって、せいぜいかゆいとかねむいとかこのおもちゃもそのおもちゃもあたしのとかおなかすいたとかだからな、大人なら掻くし寝るし分けるし食べるで済むところだけどな。万事においてなかなか思いどおりにコトが進まない不自由さがコドモ時代といえるなら、てってけてってけあそんで具合わるかったぶんを取り返すのもコドモの仕事。な。若さにゃちいとも未練はないが、こんなにちっちゃいうちから望みをくっきりと意識できる、自分の望みがなんであるか、ダイレクトにつかんで振り回すこの子の性分は末たのもしい。たいそうモノわかりのよいコドモであったわたしはそうおもったのであるぞ。ちなみに30分続いたそのねむいねめねめふぬふぬふぬに続いて30分くらいのインターミッションがあり、トリの30分は「あつーい、あつーい、あついよー(ふえええええ)」だった。

都会とチリメンジャコ

2008-01-11 21:21:45 | 通行人
きのう今日と東京駅前のビル32階から、新幹線やかわいい電車の背中を眺めたのだ。わたしのいるビルと平行してソラに走る隣の、ビル28階あたりでは、2日間とも夜7時過ぎにおじさんたちがごりごりと会議をやっていた。青みがかったこげ茶色の部屋に、おなじ色の長方形のテーブル(カドがやたら鋭角にみえる)、そのお誕生席にははげ頭のおじさんとショートカットのおじさんがすわり、辺の長いほうに金太郎飴のように同じように見えるスーツのおじさんたちがずらり、総勢20名ほどの会議で、あとから来たひとが折りたたみ椅子を持って、ワイシャツ姿で遅れて参加していた。あんなにシックな部屋で幾らくらいの金額のハナシをしていたんだろう。シャチョウをやってるあたしの友だちもあと10年くらいしたらあそこにいるだろーとおもう。彼はいま名のしれた渋谷のビルにいるけれど、わたしにとってあそこはあまり清栄な感じがしないのね、なぜかしらね。わたしいつかは渋谷区民になるだろうと思うほど渋谷は好きな街だから、渋谷のせいではない。

行き返りの電車で、1月4日に読み始めた本をひらいたら、1月4日にしてはからずも正月の場面から始まったその本は、80ページめくらいで次なる正月風景をむかえていた。ヒトの時間ってそういうものだと妙に感心してしまった。連絡をとらないうちにヒトの子があっというまに大きくなるように、ヒトの正月はあいだにどんなえらいことがあったとしてもヒトの正月とヒトの正月のあいだにヒトの一年があったのだなぁとおしはかりだけであります。そのあいだに自分が介在した時間があっても、いや自分自身の正月ですら、正月の次に正月が来た、ということじゃないか。一部と一部がそのまま全部じゃないか。けさ、ご飯にチリメンジャコを混ぜながら、おまえたちがんばってくれようたのむようと頼んだのもそんなわけ。ちっこいけど、頭からオシリまで、全身、イノチのカタチまるごと全部ってものに、チカラがないはずがないとおもうわけ。チリメンジャコが箱詰めで届いて、封をあけて、ビニルにびっしりと詰まったチリメンジャコたちにちょっとおののいたわたしは、それをまるごと信じてチカラをいただくことにしたわけ。大小じゃなくて、はしたか全部か。これ、ずっと前におへんろさんを取材した新聞記事で読んだ「一日が一生に相当するらしいってのよ!」という趣旨にも通じて。おさけのもうっと。

朝一番のヒコウキ

2007-10-11 06:58:54 | 通行人
いろんな約束を踏み倒して10月の連休は朝一番のヒコウキで実家に逃げ帰った。ピンクリボン仕様の大きなキティちゃんクッション、とらやのようかん、やげん堀の七味、お土産に埋もれるようにしてタクシーをつかまえたら、運転手さんは遅番だから仕事は朝8時までなんだって言った。明るい人柄と荒れた肌。必ず2メーターはかかる道のりを、1メーターで走ってくれる。

ヒコウキに乗りこむ頃には太陽が昇っていた。離陸のために速度を上げているとき、少し前に飛び立った飛行機がどんどん高度を上げて小さくなっていくのが見えた。地上からは見えないものを見てるんだろなとおもう。離陸してみれば、さっきまでわたしがいた滑走路を次のヒコウキが加速していて、たよりない後輩みたいな気がする。平らな海には船がたくさん走っていた。船の白い軌跡を、雲間からもれた光が点々と照らしていて、舞台のスポットライトみたいだった。大きく蛇行する川が氾濫もせずにゆったりと流れているのは、大勢の男の人たちが汗を流して護岸工事をしたからだなぁと思った。道路を車が流れ出している。富士山のハンサム。

継ぎ接ぎの跡が黒くのこるヒコウキの翼も、眼下にひろがるニンゲンの仕業も、何もかもがカアイラシイのな。努力という努力はすべて褒められたっていいじゃない、がんばってるんだからそれでいいじゃない、普段は見向きもしない精神論がとびでる。朝起きだすひとがいるかと思えば夜明けまで働く人がいて、あかんぼに乳をふくませる母親の隣人は、寝付けないまま朝を迎えた人殺しかもしれない。試行錯誤の積み重ねのなかには成功も失敗もあって、手探りして前進する集団のゆくてには時に戦争があって、不条理なことをと怒る民、命をたいせつにと諭す教師、暴れる権力者も血をたぎらせるパトリオットも、すべての所業がいじらしく思えちゃったらだめですか。幼稚園で見た創世記の絵本のなかで、神さまはニンゲンのことを天から見下ろしていたなぁと思い出したら、ふと神さまはめったなことでは怒らないんじゃないかなぁっておもった。かわいいじゃない?

ぽっかりと気楽そうに浮かぶ雲も、地面と平行に広がってんのな。地球の蓋だな。

ミタメミルメ

2007-10-02 03:30:50 | 通行人
ひとつの状態がありましたら、自分の道筋をもとにその状態を次にどう展開していくかって考えますわな。自分のもってるものがコレとアレとナニで、そこのアノあたりに翳りがあって、ドノあたりに可能性がひそんでいる、とかなんとかかんとか現実とすりあわせて未来を想像するわね。それは、お昼に何たべようかとか滞っている仕事はどうしようかとか、日常のあらゆる瞬間にあって、それをぷちぷち検討してつぶしていってるのですね誰もがいつも。財布の中身と相談して店を決めたり遊びの約束をちょっとずらしてもらったりしてますねわたしはいつも。で、これがうまくいかないことがありますね。ひとつの状態に対して、こーいきましょうと打開策を繰り出したが全っ然有効じゃない。パンチをだしたのにあれ?これちがった?あら?予想外の結末にびっくりしたあとは、じゃ次いってみよーと冷静にジャブだジャブ!って、人間関係ではそうもいかないことってあるじゃないですかぁってゆーかほとんど。自分では握手をもとめるつもりで出した手にチョキだされてうろたえてあわてて平手打ち用にきりかえたってさ、そりゃこちらだって当初の目的を果たせないわあちらだって腹立てるわ、おわってみたら徒労感。こーゆーのひきずるんだよな。たぶんわたし以外の人の多くも。

9月に置いてきたそのひきずりを、とおく10月から眺めておりましたらね、けっきょくわたしが思っていた“状態”というのは、人間関係においては“視界”と名のつくものだったのね。2人いりゃ2つの視界、ベン図にあてはめてみりゃかぶってないとこのほうがおおいっつーの。状態とはこのベン図の全体をさすのであって、で、わたしがにぎりしめていたのはわたしの視界。わたしの視界=世界(とおもいこんでたもの)、その世界の登場人物であった相手もまた自分の視界=世界とおもいこむのはそりゃそうだろう、わたしと相手との視界は違うけれどそれぞれひとつしか持っていなくてお互いの視界同士をつきあわせてチェックなんてできないんだもの。だもんでー、ひとつの状態からはじき出した結論がちがってくるのは当然だとおもったわけ!それぞれ自分の視界からコタエをだすんだから!あらわたしあたりまえのこと言ってるー。でさー“視界”と“世界”のあいだには天と地ほどの違いがあって、そりゃそうだ、“スカイ”だもの。これを誰かにきいてほしくてかきました。おやすみ。

ところで2008年の年賀状はひとあじ違いますよ。21世紀の民間力。わたしは松竹梅春曙とそのほかのシリーズを見て砂糖カシワを見直しました。きれいなシリーズのうちひとつをやるなら他の人でもいいんだろうけど、デザインひとつひとつをとれば、他のプロだって互角の仕事するだろうけど、砂糖さんはいろーんな仕事をやるなかでここでも多彩さ爆発してんなーとおもった。逆に、この7種類のシリーズが見逃してるものってなんだろかーと考えたらおもしろそう。これまで彼を敬遠してたのは人相が理由だったと自覚してたけど再認識した。ヒトを見る目に水とこやしをやります。あと行動力みならいます。

生きていろ

2007-09-30 02:43:21 | 通行人
結局、愛なんだなぁという結論に達した今夜。

ミャンマーで突きつけられた、わたしたちの生。祈るしかないのか、と。ああいうことがなければ、長井さんという命が昇華するかたちを見なければ、わたしたちは考えることもなかったいのちのこと。連れは、彼に限らず命が奪われる現実に対して、強行しても民主主義を入れることを唱えて、わたしは、そのなかの誰かをひっぱってきて外界を知る人をふやすべきだと考えていて、けっきょく前者であれば無理強いの独りよがりかもしれず、後者であればただの傍観だと。あいだをとるのは難しくて、でもきっとそれが正しいはずで、セイジのでかさと、ミンカンのむなしさがうねりうなる。長井さんは、うつくしいものに生まれ変わってくる。彼のために、名もなくたたかう人のために、残されたわたしたちはそう信じて祈るほかになにができるというのか。

NYから手紙。体温のつたわらないe-mailは要らない、そう言っていた人が始めたgmail。人と人とはそうやすやすと切れるものではなく、人と人とはそうやすやすと結ばれているものでもない。そのなかで、とおく、時も空間も離れている人とたがいに手をのばしあっているということが、不思議で、いとおしくて、わたしは地団駄をふむ。生きることはうれしくてくるしい。

しゃむのいこじ

2007-07-11 16:03:01 | 通行人
watch the SHAMU camです。しゃむ、ってシャチのこと?白黒のイルカみたいな、かわいいやつ。24時間その水槽のなかを眺めさしてくれるんだけど、それがいつ見てもかならず反時計回りに、泳いでいるわけ。シャムが。はーそういうもんだったのねーとおもいながら飽きもせず日々ながめているわけなんですが、さっき見たら、あろうことか、いつもとは逆方向すなわち、時計回りにぐるぐるまわっていた。あらーとよくよく目を近づけてまたの接近を待っていると、シャムは、背泳ぎしていた。背泳ぎして、いつもとは反対まわりにおよいでいた。ということは180度回転して、さらに180度ずらしてんだから、シャム自身の体感でいえば、いつもと同じ気分で泳いでるってことよね。しゃむは意固地である。

ひかるぼよぼよたとえば

2007-07-06 03:03:20 | 通行人
今のわたしの手の中にはとうふみたいな、夜店で買う金魚の入ったビニル袋のような、男の尻みたいな、そういうぼよぼよとした輪郭の、でも実質のあるやわらかなものがある。なにかを掬いだした後のように手のひらを上に向けて、小山のようになったぼよぼよを、大事に、両のてのひら、ふたつに分かちもっている。だれかから受けたパスを止めているの。いまやわたしが支えているからあるようなものだけれど、ずっしりひんやり気もちよくて、ずっと持っていたい。手の中のぼよぼよは腐ったところから蒸発しながら静かにゆれている。減りもしないで水気をたたえてひかっている。なにもせず、だれとも会わずに、ずっとこうしていたい。

神経衰弱ができそうな

2007-06-08 01:45:08 | 通行人
朝、バナナミルクセーキを作って飲んで
お昼に美容院に行ったら、冷たいうちにどうぞーって
バナナジュースを勧められる。

お昼に髪を切ってくれた人は磯貝さんで、
夜に初めて会った姓名判断に凝っているおねえさんは磯見さん。

同席した6人のうち、4人がひらがなの名前。

そんな水曜日
銀座和光前から自分ちまで歩いてみたら2時間弱でした。

サラブレッドと能面

2007-03-05 03:41:24 | 通行人
「不都合な真実」をみた。早寝早起しようと思いました。

六本木ヒルズのTOHOシネマで、キャラメルポップコーンがおいしかった。
種のような、ノンポップな粒はコーラで流しこみます。

そのコーラは、わたしが頼んだダイエットコークなのか、
連れが頼んだレギュラーのコカコーラなのか最後まで判別不能。
店員の言葉を聞き逃してわからなくなりました。

ふたりで交互に一口ずつ飲んでもわからなかったので
識別してくれるかも!と店員のところに行ったら
右と左はお渡ししたときのままですか?
右と左はお渡ししたときのままですか?

いやそれがわからないんです…と情けなさそうに答えたけど、
店員は毎回声をかぶせてきて、否応なく
だったらこっちが普通のでこっちがダイエットコークです。
とくり返し言う。途中からコーラはどうでもよくなって、
その店員に大注目。23歳くらいの女の子、美人でもないが、表情も、ない!

言い訳すると、コーラの区別を聞き落としたのも
この人ホントに笑わないなぁとおもって、わたしはこっそり
誘い水的スマイルを送っていて、それにまったく反応しない上、
アタシ、何かにすぐつられるような軟弱な人間じゃないの!てな様子なのだった。
彼女、何かイヤなことあったのかネー。連れとそう話しておりました。

アル・ゴアエイガはぴったり想像どおりのフィルムだったので
キャラメルポップコーンたべつつ、どっちかわからないコーラ飲みつつ
(途中で2回、コーラを連れと交換したが識別できないので、結局、あの子は同じものを入れて私達を試したのかもしれない、と話し合った)
その店員のことを考えてた。
お客が驚いちゃうような能面的表情までのストーリー設定。

バイト情報誌をぱらぱら見る→六本木ヒルズ、か→映画見られるかな→ヒルズでバイトなの。とか言っちゃったりして→てか、バイトしたら、そうなるんだ!→エントリ→面接→初日→お客さんやっぱりお洒落なヒト多いし!イヤ~私もおしゃれさんになっちゃう!?なっちゃう!?→1週間→(寝坊して飛び出して、電車の中で化粧はできない性分なのでスッピンで出勤。地味にへこむ)→半月→(体調の悪い日に限って忙しいやら、芸能人と接近戦やら、イチャつくカップルが多いやら)→1ヶ月→(ここにいる人間の大半が遊び目的で、自分は仕事をしているんだということがやたら気になる)→3ヶ月→(お客全員がアホに見える)。

流行最先端の街、という看板につられてバイト先を決めた彼女の責任。ということにした。

で、実際の彼女がどうであれ、サービス業であの高度な表情はなかなか珍しい
ので、アル・サラブレッド・ゴア映画より高得点です。1800円は高いけど。

ご飯だなー。

2007-02-06 21:39:26 | 通行人
アンデルセンでバゲットを1本買う。

店員が長い紙袋にいれてくれる。さらに紙の手提げ袋に入れようとするので
そのままでいいとズダブクロにつき刺して帰ってきたら、
保存用のうすいビニル袋まで省かれていることが判明。袋止めだけくれちゃって!ギラリ。

長いバゲットをトレイにのせると危なっかしい。
ただでさえ混み合う店のなかで、ダウンジャケットやらマフラーやらで着膨れた客がレジまで列をなして、そのわきをすり抜けながら物色する客はもれなく、トレイにいくつも、メロンパンメロンパン、チョコオレンジが練りこんであるの、クリームの乗ってるの、甘いの、甘いの、甘いの。めくらめっぽう、のせている。
「以上6点お買上げで~」なんて声が聞こえてきて、ほとほと感心してしまった。
そら太るわ。
家族のぶん?そら家族全員ふとりますー。まずそうな血。ブクブク。

多少お金があったところで、こんなふうにパン屋さんで大人買いするくらいなのかなー。
とおもったら、甘さまで想像してしまってゲンナリ。
予定を変更して、今夜も気合をいれて飯を炊いた。
あと少しで風邪が治るというところまできて、ようやく
常備薬の存在をおもいだした。もう峠は越えた。

経歴、なー。

2007-01-25 20:08:34 | 通行人
絵描きさんの取材。作品よりも先に、写真を見せてくれた。

海外に行ったときの写真、政治家やおエライさんと一緒に映った写真、出版記念パーティーで金屏風をバックにした写真、名誉職に任命されたときの写真、20枚くらい。
途中で「握手しているシーンとスーツ姿の人たちがやけに多いなー」と感じて、
なるほどコレは「足跡」ではなくて「経歴」なのだ、と納得した。

「経歴」は、住んだ街と年齢、旅したところを教えてもらえればいい。
物心ついた頃にはどんな風景を見ていたのか、20代をどこで過ごしたのか、って
時間と空間を区切ることで、質問が生まれる。
聞き手は自分のライフステージを基点に、話し手のひたる追憶をぴょんぴょん覗き見る。

自分も知っている場所の話なら、その視界をおもいだそうとするし
まだ来ていない老境なら一所懸命に想像する。
時間と空間のデータは、一番上等な鍵です。

話し手も、聞き手も、闇雲に相手を信じられたら、うまくいったも同然。
過去を数字に預け、点状に浮かぶ地理を生かす。過去を伝えるときは、そんな覚悟が必要な気がする。

むなしいのは「学歴」と「受賞歴」。
外野がそこをポイントにほめそやすのを聞くとひんやりする
(本人が誇りに思っておけば十分でしょう!
3人称が必要な経歴(「ペケペケ協会がチョンチョン賞を授与した」
なんて、
だれの実感も入りこめなくて物語の要素ゼロ。

それより、
賞金をもらって、コトが思わぬほうへ展開していった、
海外留学でジブンの軸が一転した――そんな話は身を乗り出してきく。
大河小説を主人公のクチから聞くように聞くよ。

賞をいただけるなんて、とってもスゴイこと。
でも賞を頂いて大喜びしたあとは、賞状はお仏壇にでも上げとけばいい。
ジブンの未来を信じて、名誉は置いてきたほうがいい。
未来につながる賞金は取っておくのがいいさ~。

ちなみに先述の絵描きさんの作品は、とっても素敵だった。