店主のたわごと

まれ助堂店主、八神まれ助の煩悩吐き出し処。
小次健、やおい、BLが含まれます。意味の分からない方嫌いな方はご遠慮下さい

『DNA』6

2008-08-28 00:33:44 | 小話
それから30分後、俺は口を開けたまま若島津の後ろを凝視していた。
「若島津、いったい……」
「ごめん、日向さん…」
申し訳なさそうに若島津が謝る。
「小次郎ちゃん、チャオv」
にっこりと笑って手を挙げたのは、若島津の姉、香子だった。
「うふふ、貸しを返してもらいにきたわ」
「はぁっ?」
俺が怪訝な声をあげると、香子さんはゆっくりと言い含めるように繰り返した。
「だから、貸しを返してもらいに来たんだってば。さっ、早く小次郎ちゃんちに連れていってよ」
俺はそう言われながらも訳が分からず、若島津と香子さんの顔を交互に見た。若島津が申し訳なさそうに目を逸らす。
「えっ?まさか香子さんも俺んちに泊まるのか?」
若島津の表情から察してまさかと思いながら口にすると、香子さんはさも当然という様に言ってのけた。
「当たり前でしょう。ほかにどこに行けって言うのよ。これから一週間よろしくね。あたしイタリアは初めてだから、面白いところの案内も頼むわねv」
「ええっ!なんで案内まで……」
狼狽えた俺が思わず声をあげると、香子さんはスッと目を細めた。
「言ったでしょ、貸しを返してもらいにきたって。これでも一番簡単そうなのを選んだのよ。それとも何?例えば交際を断るのに、小次郎ちゃんを勝手にあたしの恋人ってことにして、使ってもいいっていうの?」
それで良いのなら、あたしにとってもその方が便利なんだけど。
少し意地の悪い顔でそう言う香子さんの隣で、若島津が焦ったように首を横に振っている。
分かっているさ。俺だってそれだけはごめんだ。俺は深く深くため息をついて、とうとう降参した。
「わかしました…案内させていただきます……」
「ありがとう、よろしくね小次郎ちゃんv」
勝ち誇った彼女は、にっこりと美しい顔で笑ったのだった。



結局のところ俺は練習もあるので、一週間丸々付き合った訳ではなかったが、自由になる時間はほぼ香子さんの為に使うはめになった。
そんな訳で若島津とイチャイチャすることができず(一度実力行使しようとして、半端ない力で蹴り飛ばされた)俺はごちそうを目の前にしながら待てを強いられているような状態だったが、かといって香子さんを恨むわけにもいかず、悶々としながら一週間を過ごしたのだった。
最終日、俺は若島津と一緒に、香子さんを空港まで見送りにいった。
「一週間ありがとう。おかげで楽しいイタリア旅行だったわ。健はもう一日だけ小次郎君の所に置いといてあげる。いい、これに懲りたらあたしに貸しを作るような真似はもうしないのよ。隙を作ってつけ込まれたら、傷付く人間が沢山いることを忘れないで」
にっこりと笑ってはいるが、その瞳が真剣なのを見て、俺は深く頷いた。
「もうしません。次ぎやったらそれこそガツンと香子さんに叱られちまう」
「そうよ。今度は小次郎君の名前使いまくるからね」
今度は本当に笑った香子さんは、時計を見ると荷物を持って立ち上がった。
「そろそろ時間だから行くわ。二人の時間を邪魔してごめんなさいね。でも…」
悪戯っぽそうに瞳が煌めく。
「今までの分を取り戻そうとして、明日健が飛行機に乗れないような事になるのはやめてね」
「香子さん!
「姉さん!」
二人分の悲鳴を背に受けながら、香子さんはコロコロと笑いながら去っていった。どっと脱力感が襲ってくる。
「なんか…疲れたな…」
「ええ……」
二人してぐったりとした面持ちで頷きあう。
俺は久しぶりに正面から若島津を見ながら、今し方去っていった香子さんを思い浮かべた。彼女は若島津によく似ている。顔は勿論だが気質まで。俺の好きな若島津と同じDNAをもつ彼女。
「憎めないよなぁ……」
思わずこぼした俺のつぶやきに、若島津が首を傾げる。
「なんでもない。行こうぜ、時間がなくなっちまう」
俺は立ち上がると若島津を促して空港を後にした。
やっと訪れた愛しい人との時間を噛み締めながら。


**********************************
やっとやっと『DNA』終了です。
8月が終わるまでに終えられて良かった~
日向さんの一人称は思ったよりも書きにくくてなかなか筆が進まなかったっす…

それではここまでお付き合いありがとうございましたv
また少ししたら新しいのを書こうと思いますので、よろしくお願いします
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ぬか喜び…°・( ノД`)・°・

2008-08-23 12:06:08 | 日記
C翼オンリーが2月に開催されると聞き、サイトで日にちを確認してきました。
開催は11日。
あたしは思った。あれ?この日って確か休みと重なってるんじゃ…
やりーっっ!やっとやっとオンリーに参加できる!自分のサークルスペースでみんなと会えるんだっ!やった!やったよーっ!と…
浮き立つ心のまま、手帳で来年の曜日を確認。
…………水曜日…?
あれ?今年月曜だったんだから、来年は火曜日じゃないの????
………………はぅわっ!!今年うるう年じゃん!!曜日2づつずれるんじゃんか!!
そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…○| ̄|_ガックシ
一回喜んだだけに、ショックが大きくてしばらく放心してしまいました(>_<)
参加への道は遠いなぁ…(泣)
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『DNA』5

2008-08-18 00:46:09 | 小話
それからしばらくは、どんな要求をされるのかビクビクしていた俺だったが、何ヶ月か経つうちにすっかりとそれを忘れてしまっていた。
それを思い出したのは、イタリアに戻って新年も明けた頃だった。
Jリーグがオフシーズンになるこの頃、若島津は忙しい合間をぬって、俺に会いにイタリアまで来てくれるのが、ここ数年の恒例になっていた。
この時ばかりは普段会えない時を埋めるように、甘えてくる若島津とイチャイチャできるのが、俺の最大の楽しみだった。
空港で若島津を待ちながら、俺はこれからの行動を考えていた。
まず部屋に帰って荷物を置いたら、近所のトラッティアで飯を食って、食後に軽くアルコールを入れたあいつはきっと機嫌が良くなるだろうから、もしかしたら昼間からイイコトができるかもしれない。
そんな事を思っていると、若島津の乗った飛行機が到着したアナウンスが流れた。
久しぶりの若島津の唇や身体を思い浮かべていた俺は、にやけた顔を慌てて引き締めた。ここは空港で、自分は多少顔の知れた存在なのだ。
若島津は入国の手続きや荷物の受け取りの時間を考えると、あと20分程で出てくるだろう。
俺は浮き立つ心のまま、到着口へと向かったのだった。

**************
酷暑なのに、全く反対の季節に話が飛んでます…
みんな頑張って付いてきて下さい~(*_*)

今年も日向誕に間に合わなかった上に、日向誕話じゃなかったっす…
時間が回っちゃったけど、日向さんおめでとう!
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『DNA』4

2008-08-09 08:06:18 | 小話
俺は予想外の人物の訪れに、かなりまぬけな声を出してしまった。
「おい若島津! まさか借りって…」
『えーっと、ごめん‥ そのまさかです。姉さんに取りに来てもらっちゃいました』
「なにぃ!」
俺は思わず叫んでしまった。よりにもよって、一番借りを作りたくない相手に…
『ごめん、日向さん。他に方法を思いつかなかったんです。姉さんによろしく言っておいてくださいね。じゃまた!』
「あっ、待て!」
若島津の野郎、言いたいことだけ言って、さっさと電話を切りやがった。
「あの野郎~」
「小次郎、まだ電話終わらないの?」
なかなか出てこない俺を、お袋が再度呼びにきた。
「ああ、今行く」
気が進まないながらも、俺は玄関に向かった。
「こんにちは、小次郎ちゃん」
にっこりと若島津そっくりな顔が、奴の何倍も艶やかに笑う。しかも俺の名前をちゃん付けだ。それで彼女が多少なりとも怒っているのが伺えた。
「どうも、香子さん」
俺はバツの悪い思いで頭を下げた。
彼女は血の繋がった身内の中で、唯一俺達の仲を知る人なのだ。けして手放しで容認している訳ではないので、俺としてはこんな形で会うなんて、居心地の悪いことこの上ない。ましてや若島津の所に泊まった時の忘れ物を届けてもらうなど、バツが悪いったらないのだ。
「はい、忘れ物」
香子さんはカバンから俺の携帯を取り出すと、すっと差し出した。
「すいません。わざわざ」
俺は恐縮して頭を下げた。
「あのね小次郎ちゃん。今回はあたしがたまたま取りに行けたからいいけど、気を付けなさいよね。忘れるにしたって、携帯は不味いでしょう。あの子、泣きそうになって電話してきたのよ」
香子さんは俺の顔を見ながら、溜息をついてそう言った。
確かに弟の彼氏の忘れ物を取りに行くためだけに、朝から名古屋~埼玉間をとんぼ返りで往復なんて冗談じゃないだろうと思う。
「もう二度としない様に気を付けます。本当にすいませんでした」
もう一度頭を下げると、香子さんはにんまりと危険な笑顔で笑った。超が付くほどの美人なので、こういった笑い方をされると物凄く怖い。
「あら、そんなに警戒しなくたって大丈夫よ。貸しにしといてあげるけど、そんな無茶な要求はしないから」
その笑顔で言われても、あまり信用できないんですけど…
やっぱり何か要求されるのだと知った俺は、あまりにもでかい借りを作ってしまったことに、今更ながら後悔したのだった。
自業自得かよ、くそっ!

***************
日向さん、姉ちゃんに形無しです(笑)

やっと『DNA』を再開できました〓〓
次回で終わらせたいと思っています。
そしたら次は日向誕ですね!
なんかできるといいなぁ…
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おわりましたv

2008-08-08 00:07:39 | お知らせ
やっと若父原稿が終わりました
寝不足と暑さに打ち勝った気分です!
次回より『DNA』を再開しますね!
ここ数日仕事でも寝不足が続いているので、今日はこれにておやすみなさ~い
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ギザ不味いス

2008-08-01 22:48:19 | お知らせ
まったくもってヤバいことに若父の原稿が終わっていません……
その為『DNA』も続きを書くことができない状態です(爆)
そんな訳で続きをお待ちの方には大変申し訳ないのですが、もうちょっと待ってって下さいね!
コメント (3)
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