主人公の中年レスラーは、私生活において満ち足りた人間関係を築けなかった孤独な男。
実質的に家族はおらず、財産もなく、体はボロボロ。
そんな彼にとっては、ファンによる絶大な支持と喝采を得られるリング上だけが安息の地だった。
ファンが声援を送るのはあくまでも男の虚像であり、男がスーパーの惣菜売り場でアルバイトしていることなんて誰も知らない。
だが、私生活で失うものが何もなくなった男にとっては、リング上での磨耗のみが自身の存在証明である。
このギャップが切ない。
自身の孤独に向き合い、すったもんだの人生を栄光の二文字で全うしようとした主人公の姿には胸を打たれた。
ミッキー・ロークの好演とドキュメンタリータッチの撮り方で、主人公の生態がリアルに伝わってくる。
淡々としてて抑揚に乏しい印象も受けたが、中途半端なつくりになるよりはいい。
みんな足掻きながら生きてんだよ。
心の安息のために幸せな家庭を築こう。
誇らしい仕事をしよう。