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四国の電子工作オタク

生まれも育ちも四国の生粋の田舎人が書く、電子工作のあれこれ

アナログエンジニア

2020年08月07日 | 日記
今日は少し趣向を変えて。回路そのものの話ではありません。

新型コロナウィルスによる社会的影響(所謂コロナ禍)が始まって久しいですが、小中高校ではもう通常授業が始まって、少し短い夏休みが始まったらしいとも聞きます。一方でどういうわけか大学はまだほとんどが通常授業を再開しておらず、いまだに遠隔授業が行われています。私の大学も例外ではなく、研究室には行けるようになりましたが、申請制になっています。見方を変えれば、これはすなわち自分が自分に投資する時間が増えたということでもあります。

私の所属する研究室は主に通信工学に関する研究を行っていて、私自身は通信のハードウェアに関する研究をしています。しかし私の周りでは、ハードウェアについて学んだり研究したりすることを嫌う人が非常に多いです。というのも「理解しにくいから」「電磁気学や電気・電子回路が難しいから」「これからはディジタルの時代だから」という理由だそうです。逆に僕はアナログ電子回路や通信技術を学びたくて大学に来た人間なので、喜んでハードウェアの研究をすることにしました。

前述のとおり、通信系ハードウェアの研究を行う際に必要不可欠なのが「アナログ電子回路」「電磁気学」「電気回路」「電磁波工学」「通信工学」の5つです(場合によってディジタル電子回路も含めうる)。このなかでも特に電気回路とアナログ電子回路は「理論を現実に適用して利用する」という点において電子工学という学問の本質を表してる分野であると考えます。電磁気学などの基礎理論を基にして、これらをしっかりと、そして楽しく有意義に学べば、電磁気学や電磁波工学で難解な数式は、一気に現実世界のものとなって目の前に現れ、私たちの生活を豊かにします。一方で現実は理論のようにうまくいかないことが多く、数式だけでは表現できないことも多くあります。アナログ回路でいえば、現実のオペアンプと理想オペアンプの違いや、トランジスタが実際は熱を持つために、それによってhパラメータが変動するので適当な熱結合が必要なことなどがそれに当たります。この辺りの「理論と現実の違い」が生む教科書的な説明が恐らくハードウェアや電気・電子回路が難しいと感じる由縁になっているのでしょうが、これを学ぶことこそが工学の本質ではないのでしょうか?

このことを切実に問うているのが「アナログエンジニア」というブログです。
このブログは岡山努先生(以下先生)が書かれていました。残念ながら2012年に亡くなられています。先生は東京大学を卒業されてから長年アナログエンジニアとして勤務された経験があり、その知識と経験、教養の深さは、わずかなブログの文章からでも十分に読み取れるほどのもので、私が個人的に最も尊敬する技術者の一人です。

先生は多くの著書を出版されており、アナログ回路技術者を目指す身としていつか読みたいと思っていましたが、多くの著書が廃盤となっていて入手ができず、ほとんど諦めていました。しかし最近研究室に行くようになって、実験室所蔵の本棚の整理を任されたときに、多くの先生の本が所蔵されていることに気づきました。私は喜んでこれらの本を持って帰りました。まだあまり読めてはいませんが、演習問題の内容が、普通の教科書のそれとは全然違います。先生の書く著書は「いかにして理論上の知識を現実問題に引っ張り出すか」に主眼を置いており、それゆえに演習問題も単なる座学ではなかなか理解できないパラメータまで含まれています。また学び終わったらブログに書きたいと思います。

外出できないストレスが溜まる昨今ですが、自分に投資する時間を得たと思えば随分といい時間です(研究は忙しいですが...)。先生の本にたくさん出合えたことも何かの縁と思って、時間が取れる今こそ読み込みたいと思っています。ハードウェアの面白さは、ひとえに先生の本の難しさにその本質があると思うのです。

LC並列共振回路の計算プログラム(Python)

2020年07月07日 | 日記
お久しぶりです。いろいろ忙しくてブログがお久しぶりになってしまいました。
今日は共振回路の共振周波数を求めるプログラムを作ったので紹介しようと思います。共振回路の共振周波数って、計算するの意外と面倒ですから、プログラムにやらせてしまおうという算段です。

今回はPythonでつくってみました。Cで作ってもいいのですが、この程度の計算をさせるのなら、Pythonで作った方がずっと楽です。といいながらも、CもPythonも初心者レベルなので、偉そうなことはいえないのですが。

プログラムのソースコードはこちらに載せておきます。

ひとつめのソースコードは純粋に共振周波数を求めるプログラムです。式はみなさん良く知っている
f = 1/(2π√LC)
です。ただし、このプログラムではLとCが理想的な特性を持つ場合の共振周波数を出すので、コンデンサやコイルの自己共振が考慮されていない点はご了承ください。

2つ目のソースコードは、コイルの直列抵抗成分rを考慮して、共振時のインピーダンスを求めるプログラムです。並列共振回路は、LとCが完全に理想特性の場合には、共振時に合成インピーダンスが無限大になります。しかし実際にはそんなことはなく、コイルの直列抵抗成分などの要素から、数kΩから数MΩ程度で頭打ちになります。LC並列共振回路の出力に何らかの回路を接続するとき、共振回路の出力インピーダンスがこの値になるので、割と重要な計算です。

共振回路って勉強しても良くわからないことが多いんですが、実際に実験するととても面白い回路です。機材がある方は、是非ともこのプログラムで計算した数値が本当に合っているのかどうか確かめてみてください。

※ソースコードはGoogle Colaboratoryでの動作を確認済みです。

四国の電子部品店

2020年05月04日 | 日記
 はじめまして。新型コロナウィルスの影響で大学に行けず暇なので、これを機に思い切ってブログを始めることにしました。よろしくお願いします。

 さて、記念すべき第一回のブログネタは何にしようかと悩んだ結果、電子工作ができるのは電子部品屋さんあってのことなので、四国の電子部品店について書くことにしました。自分は小学2年のころから四国地方で電子工作をやっていますので、ある程度の店舗知識はあるだろうということで、紹介させていただきます。

 まず、電子部品屋さんを調べるときに指標になる「エレキット取扱店」の一覧をリンクで載せておきます。参考にしてください。


 
 まずは香川から。
 高松の中央公園前にある、老舗の電子部品屋さんです。もともとはアマチュア無線をメインに扱うお店であったらしく、現在でも無線機やアンテナ、ケーブル類を多く取り揃えています。
 そして肝心の電子部品ですが、おそらく四国の電子部品屋のなかでは最も通信関係の電子部品が充実しています。ダイオードやトランジスタは総じて高周波対応品が多い印象があり、現在ではほとんど見かけないゲルマニウム素子のものも在庫があります。しかも値段も高いわけではなく、1個数十円から数百円くらいで買えます。自分が行っていた頃(3年前)は、OA90,1N34Aといった、ほとんど手に入らないようなダイオードまでそろっていました。また、珍しい三洋製ワンチップラジオICのLA1050や(記憶が正しければ)バーアンテナも売っていました。電子工作(とくにアナログ電子回路)の入門といえばラジオというのは今も昔も変わらないと思うので、こういう風に自作の手助けをしてくれる電子部品屋さんは貴重です。
 また、昔ながらの部品のみならず、近年の電子工作の定番となってきたマイコンも取り揃えており、小さい店舗ながら、ここだけで大抵のものはそろいます。

 香川県は、自分が知る限りでは電化センター1店舗のみしか電子部品店がありません。


 
 次に、愛媛。
  • 富田電子
 自分は今愛媛県に住んでいますので、富田電子さんにはよくお世話になっています。このお店には、モノづくりを生業とするプロフェッショナルがよく来店している印象があります。
 店内は決して広いとは言えませんが、ここに来れば電子部品は一通りそろいます。コネクタ類やコード類、ソケット類の取り揃えが豊富です。また、抵抗やコンデンサも大容量、高耐圧品を取り揃えており、半導体素子も極めて種類が豊富です。一方、ラジオ・無線関係、特にコイルやバリコンの種類があまり多くなく、例えばスーパーヘテロダインのラジオを作ろうと思ってもパーツがそろわない感じです。そうはいっても、ラジオ・無線関係以外のパーツは十分そろっていて、松山市内では唯一の、貴重な電子部品屋さんです。
 実は愛媛県には新居浜市にもうひとつ電子部品屋さんがあるのですが、自分はまだ行ったことが無いので触れないでおきます。機会があれば行って、ブログにしようと思っています。


 
 次に、筆者の出身地、徳島県です。
 徳島県は、県外の人からすれば田舎のイメージが強く、電子部品屋なんて無いんじゃないかとさえ思う方が結構いると思います(笑)。しかし実際は逆で、四国内では最も電子部品屋が多いのが徳島県なのです。自分が知る限りでは3店舗なのですが、エレキット取扱店の一覧を見たところ、なんと5店舗もあります。徳島県は、いろいろとオタクやマニアに恵まれた土地なのです。

  • エレパーツコーワ
 いい意味で癖の強いお店です。自分はもう6年くらい行っていないのですが、徳島に居た時に行く部品屋といえばここでした。
 癖が強いと書きましたが、何がどう強いのか、というと、品ぞろえのベクトルが一方向でないのです。普通、こういう地方の部品屋さんというのは、そのお店の歴史によって無線関係のパーツが充実(例:電化センター)していたり、電気関係のお客さんを相手にすることが多いお店なら、コードやコネクタ類が充実していることがほとんどです。しかしエレパーツコーワに関しては、あらゆるジャンルのパーツが幅広く取り揃えられています。マイコン、コネクタ、半導体、IC、パソコンパーツ(コネクタ)、無線関係のパーツ等...挙げればキリがありません。いうなれば、規模こそ違えど大阪のデジットに似た品ぞろえ感があります。特にICの品ぞろえが非常に多かった記憶があります。6年前は、徳島県で唯一LMF501T(ワンチップラジオIC)の正規品が手に入るお店だったと思います。自分としては、行ってワクワクするお店です。

 自分が生まれて初めて行った部品屋さんです。明るく開放的な雰囲気が魅力的で、電子部品屋さんに対する特殊な印象を全く感じさせません。いわゆる千石電商やマルツパーツのような、チェーンの電子部品屋の雰囲気に似ていて、初心者でも入りやすいお店です。店員さんも親切で、聞いたことは優しく教えてくれます。自分は「電子工作マガジンのこの回路を作りたい」と、該当ページを見せると、一緒に部品を探してくれました。初心者の方にはうってつけの部品屋です。逆に言えば、ジャンクをあさったり、掘り出し物を探したりするようなコアなマニアには向いていないと思います。品ぞろえで言うと、なんでもオールマイティに揃っていますが、その中でも特にラグ板や基板、工具類の品ぞろえが豊富です。あと陳列が非常に丁寧になされているので、目的の部品がとても見つけやすくなっています。


 
 自分が行ったことのあるパーツ屋さんは以上になります。高知県はそもそも足を運ぶ機会がほとんどないので、電子部品屋にも行ったことがありません。大学生のうちに行ってみたいです。

 近年では、電子部品もインターネットですべて揃うようになり、無難な品揃えしかないイメージがある地方の電子部品屋など見向きもされないことが多くなりました。しかし電子工作をしたり、実際に仕事でもなんでもモノづくりをするときに最も大切なことは、モノに対するセンスを磨くことだと思います。これは電子回路でいえば、電子部品を実際に手に取って購入することが一番当てはまると思います。
 部品屋にいけば、目的の品以外にも多くのパーツを目にすることができます。「おお、この部品は教科書でしか見たことが無かったけど、こんな形をしているのか」という勉強にもなりますし、興味があれば1個数百円程度のものですから、買ってみて実験するのも良いです。こういうことを繰り返すうちに、電子回路に対する感覚が養われ、モノに対するセンスも必然的に磨かれていくと思います。それゆえに、自分はいまだに電子部品を購入する際に通販を利用することはほとんどありません。

 みなさんも、これを機に近くの電子部品屋を調べて、行ってみてはどうでしょうか?あ、もちろんコロナがおさまってからね。