今回行われた公開国際シンポジウムの目的は、
障がいのある方の地域生活を支えるため、
特に、当事者の権利を尊重したサービスを行うために、
本人の真の気持ちを引き出す工夫や、本人・家族への
情報伝達のあり方を検討することでした。
そこで参考例として紹介されたのが、アメリカ
カリフォルニア州の、障害者に対する本人中心の支援システム、
援助付生活(SLS)と、個別支援計画(IPP)です。
SLSは、日本でいうグループホームとは全く異なります。
自分で自分の生活のあり方を決められるという権利を尊重し、
本人の希望に沿った具体的な目標と、必要なサービス提供の
計画を立て、その支援をうけながら、社会で自立した生活を
送るというもの。 これらの過程で機能しているのがIPPです。
カリフォルニアでのこのシステムのキーワードは、
・自己選択
・自己決定
・権利の尊重
自分で選べる、決めることが出来るという権利を
与えられることで満足感が得られ、将来への希望がもてたり、
生活への意欲が生まれ、様々な問題が解決されてもいます。
簡単な説明ではありますが、ざっとここまで読んでみると、
自己選択・自己決定はいいけど、意思の疎通が困難な
重度の障害者には反映できないんじゃないかという
疑問がでてくることでしょう。 そこが、日本とアメリカの
大きな違いなんだなぁと、今回一番考えさせられた部分でした。
考え方や理想は日本もアメリカも同じなのですが、
それに向き合う意欲や姿勢、徹底性が全く違う。
日本は、最初から「無理」と決め付けそこから全く前に進まない。
けれど、アメリカではあらゆる方向からアプローチを試み
少しでも本人の真の気持ちを引き出せるよう工夫を重ねています。
その部分の機能を果たしているのが、IPP(個別支援計画)
なわけですが、IPPについてもう少し詳しく紹介します。
IPPは、個人と支援機関との合意文書となります。
IPPには、その人の目標や希望及び、サービスと支援の内容が
書かれており、支援機関はその人を助けて目標を達成できるように
します。 IPPの内容を決定する際には、本人、家族、
本人を知っていて大切に思っている人、本人が希望し必要とする
サービスを確保するという約束ができる人(サービスコーディネーター)
などが集まって会議が開かれ、合意がなされます。
合意した内容は、本人が理解できる形でIPPに書かれます。
会議の際に、必要な情報を本人に伝達する際も、当然本人が
理解できるような方法を用いますし、本人の本当の気持ちを
引き出すために、観察や様々なアプローチを試みながら
慎重にIPPの作成は進められます。
これらのことがスムーズに行われるためには、当然それにかかる
費用が大きな問題となってくるわけですが、カリフォルニア州の場合、
州全体の予算が厳しくても、SLSのための予算は守られている
とのことでした。 家賃の高騰の方が大きな問題のようです。
自立支援法で福祉のお粗末さを証明してしまっている
日本に比べ、カリフォルニアの夢のような支援体制は、
うらやましくてため息ばかりでてしまいます。
このすばらしいシステムの確立にアメリカは17年の
歳月を要したそうで、それを聞くとまたため息。
しかし、理想形(SLSやIPP)が成功例として機能している
というのを知ることが出来たのは大きな希望であり、私たちには
そのお手本があるわけで、日本の社会や習慣に合うようアレンジ
しながらうまく取り入れる努力をすれば、もっと短い期間で、
より理想の形で彼らが社会で自立した生活をおくることが
できるようになるであろうと期待してやみません。
追記
今回のシンポジウムでキーワードとなった、
「自己選択・自己決定・権利の尊重」 … これらの言葉を聞いて、
パッと思い出すのはハルヤンネさんです。彼女は随分前から
自閉症児の支援の際の大切な要素としてこれらのことを掲げており、
私もそれにとても共感し実践していたので、今回の事例が、
その部分を大事にして成功したシステムであることが
とてもうれしく思いました。 やっぱ彼女ってただものじゃない。