研究職への道

研究職を目指す人のための情報交換。
研究室に関する情報などがあったらお知らせください

医学部再受験

2005年01月29日 12時47分55秒 | 学問・大学


 以前在籍していた研究室の院生(D1)から連絡が来た。中退して医学部を受け直すとのこと。中退理由は口にしなかった。

 近年、医学部を目指す研究者及び院生をよく目にする。彼らの転向の理由は主に、

  ①研究職に就くのが困難
  ②研究職への不適

である。①の理由で医学部を目指すことには賛成しない。パーマネントの職が見つかるまで、非常勤やバイトで糊塗する方がリスクが少ないと思われるからである。問題は②からの転向だが、これはリスクの高い賭けだ。医学部学士編入試験の倍率は20-100倍を誇る。多様な人材を募集と謳っておきながら、偏差値エリートしか受かっていないのが現状だ。一般入試から受けなおすのが近道であろう。医師になれば食いぶちに困ることはないが、素人が想像するほど裁量権のある職種ではないようだ。一般的な技能者に過ぎない。

 ②を減らすにはどうすればいいのだろうか。大学院を受験する前に研究職の実情を身をもって体験させるのが一番かと思う。学部3年生の段階で進学希望者には自由に研究室への出入りを許し、自分に不向きと分かったら就職へと転進させればいい。単なるお客様扱いするのではなく、テーマを持たせ、責任を感じさせるのも重要だ。





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翻訳に役立つGoogle活用テクニック

2005年01月25日 16時05分48秒 | 書評


 現在、Googleは30億ページ以上をカバーする巨大検索エンジンである。そのGoogleを生きた辞書として活用するためのテクニックが紹介してある。役に立つ活用法を幾つか見つけることが出来た。

 例えば、

  ①可算名詞と不加算名詞の判定・・・ヒット数により判定する。
  ②正しい表現かどうかの判定・・・フレーズ検索を活用。
  ③類似物(例:helmetとhard hat)の区別・・・イメージ検索を活用。
  ④最適な前置詞・形容詞の検索・・・フレーズ検索とワイルドカードを活用。
  ⑤用語の定義の検索・・・「inurl:glossary」又は「intitle:about」を活用する。
  ⑥こなれた対訳の検索・・・英和コーパスの活用。

である。特に③最適な前置詞・形容詞の検索法は特質ものである。現在活用しているライフサイエンス辞書プロジェクトも有用であるが、今後、英語論文を執筆する際には、このテクニックも併用するつもりである。

 この手のノウハウ本では、3行で纏まる内容を無理矢理100ページに引き伸ばしたものが多々見られるが、この本は良心的である。やや回りくどく、上級者には物足りないだろうが、一度目を通したらいかがだろうか。





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研究者の決意

2005年01月23日 03時23分49秒 | 学問・大学


 もう数年前の事であるが、東京大学のある研究室を訪問した時の話だ。一人の院生と談笑した。彼の研究テーマは、当時ホットな分野であるstem cellであった。

 彼は大学院に入学する前、脳神経外科医として数年間働いていた。そこで悟ったことは、当たり前だが「治せない症例は治せない」であった。それ故、治せないものを治したいと志し、研究の道へ転身したそうだ。担当教官が語るところ、彼はもう医者には戻らないと決意したそうだ。後の無い状態に追い込まない限り、世界レベルの研究は出来ないという信念からだ。この気迫は見習わなくては、と思った記憶がある。

 彼が筆頭著者の論文をCellで発見した今、あの時の決意は本心だったと実感した。

 
#stem cell・・・幹細胞
#Cell・・・生命科学のトップジャーナル





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職業免許

2005年01月21日 10時15分45秒 | 社会

 自身のHPで患者を中傷した耳鼻咽喉科の女性医師が諭旨解雇された。彼女は筑波大学に戻る見込みだそうだ。

 医療事故には様々な原因がある。「day」と「week」の理解が出来なかった埼玉医大医師のような無能が原因のもの。富士見産婦人科事件に代表される犯罪的なものなどがある。件の女性医師の例は、医療事故と言うよりも社会常識以前の問題である。医師である前に社会人として失格だ。自分に累が及ぶとは夢にも思っていなかったに違いない。しかし、この程度のことでは彼女が医師のギルドから追放されることは無い。医師ギルドには自浄能力が無いのだから。1971年から2001年までの間に医師免許取り消しを受けた医師はわずか36名に過ぎない。

 一定以上の医師の質を保証するギルド的なものは必要だろうが、医師社会のようなギルドでは、入会の際に人格面も評価すべきである。ところが、日本の医学部では18-20才の段階で10-30分程度の面接を行うだけであり、綺麗事を言ってお終いだ。もっとも、選ぶ側からして問題があればそれすら機能しない訳だが。入り口でうまく選抜が出来ないのなら、就業後に適正で選抜するしかない。そのためには修学期間短縮と入学定員増加が必要だ。就学年数を短縮すれば、適性が無かったばあいでも、他の職種への転身が容易だ。





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ウエット系以外の職種

2005年01月19日 08時40分17秒 | 学問・大学

 先日紹介した「博士号とる?とらない?徹底大検証!」の中に実験室外の職業として科学部新聞記者、科学評論家、弁理士等が紹介してあった。ウエット系以外の職種も気になるところだ。

 大学院修了者にとって科学部記者は適職であろうか?現実には、地方新聞社に科学部は殆ど存在せず求人自体も少数である。また、科学ニュースなどは大学広報からの垂れ流しである。とても専門知識が生かせる職場とはいえない。科学評論家にいたっては専任で身を立てている人物が何人いるのだろうか。この中で高度な専門知識を要求されるのは弁理士である。最難関の国家資格で要望される職務知識も多大だが得分もそれなりであろう。コストパフォーマンスが高い職業と言えるのではないか。

 ところで、実際の人気はウエット系に集中している。やはり、実際に手を動かして研究の醍醐味を味わうのは何事にも変えがたいのであろう。パテント・論文調査等の学術職に就いた友人が相次いで離職している話を聞くと彼らの心情を察してしまう。

#ウエット系・・・実際に動物・細胞を扱う生化学実験






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MRの実情

2005年01月17日 19時25分43秒 | 雑感


 昨年、某医学部の臨床系研究室を訪問する機会があった。ほんの5時間程しか滞在しなかったが、MRを6人も見た。

 MRとは医薬情報担当者のことで、簡単に言ってしまえば製薬会社の営業部員である。彼らの医師に対する猛烈営業振りはよく耳にする。実際も噂通りであった。彼らは助教授に面会の約束を取り付けていたのだが、助教授は彼らを無視して2時間も雑用をしていた。ここでは助教授の理非は問わない。彼は研究・教育・診察により多忙であるからだ。話を戻すと、その間MR氏は直立不動で待ち続けた。いくら高給でも私には耐えられない職種だと痛感した。
 
 近年MRの中には高学歴の人々が増えている。特に修士MRという薬学修士卒者が存在している。営業職を学術職と言い立てるつもりなのだろうか。理系の高等教育を受けた人材を営業に回すのは社会的損失である。日本の製薬会社の研究費は15年前はアメリカの半分程度だったが、現在はファイザー社の研究費が日本の製薬会社上位10社の合計よりも多いという有様だ。営業活動による目先の利益よりも、国を挙げて将来の研究分野に予算を注ぐべきだ。医薬品は国際市場で勝負する商品だから。





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博士号とる?とらない?徹底大検証!

2005年01月16日 02時51分19秒 | 書評

 副題に~あなたが選ぶバイオ研究人生~とある。バイオ系の高等教育を受けた人々がどの様な身の振り方をすべきかを分かりやすく解説してある。研究者を目指す人には良い指針となる。

 著書中の気になる記述を挙げておく。「大学院博士課程に入ったら博士号は絶対取らなければいけない。(略)博士号はジェッタイ取る。どうしても取る」、「90%の大学院生はとにかく、易しい研究室でお取りなさい(原文白ヌキ)」

 ほとんどの学生にとって必要なのは、高尚な研究哲学よりもこういう実践的なアドバイスだろう。





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文系大学院の世界

2005年01月15日 21時54分42秒 | 学問・大学

 文系大学院は理系以上に悲惨である。理系なら修士卒での企業就職は容易だが、文系ではそれすら難しい。文系大学院進学者のケーススタディ、これから人文系大学院へ進む人のためにを参考に挙げる。

 あるWebサイトで見た記憶だが、文系の世界では「東大大学院への進学を勧めるのは自殺幇助、それ以外の大学を勧めるのは殺人」とのことだ。これではまともに研究者を養成できないだろう。日本の経済学が「経済学」学と揶揄されるワケだ。


#「経済学」学・・・自分では研究せず、アメリカで研究された成果を紹介しているだけの状態の日本の経済学部を皮肉った言い方。





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中村修二教授の怒り

2005年01月15日 21時28分08秒 | 雑感

 過日中村修二氏の、いわゆる青色LED訴訟の和解が発表された。中村氏の貢献は5%と認定された。

 ここで私は和解提示額の多少については言及しない。職務発明について造詣が深い訳ではないからである。問題は研究者の人的異動が米国に比べて極端に少ないことだろう。その結果、企業での飼い殺し状態になり不利な立場を強いられてしまう。文系卒業者に比べて理系卒業者が冷遇されているのが日本の現状だ。中村氏も金が欲しくて研究していた訳ではない。金が目当てならベンチャーを創っていただろう。企業内で研究者の権限を強化するか人的異動の自由度を高めるシステムを作るのが理想だと思う。





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英語論文の読み方

2005年01月15日 06時23分28秒 | 学問・大学

 英辞郎の第二版が2月に発売される。英和収録項目が131万まで増強されたそうだ。


 私が院生の頃、英辞郎は存在せずインターネットも黎明期にあり、検索機能が乏しかった。英語論文を読む時には英和大辞典・岩波生物学辞典・理化学辞典を机一杯に広げて悪戦苦闘した。そんな折同僚から英辞郎を紹介された。目からウロコが落ちた瞬間だ。これさえあれば辞典類はいっさい要らず、しかも確実に分からない専門用語が翻訳できた。さらにgoogleの出現で専門書も必要が無くなりつつある。ITの進歩は情報格差を埋め、ほんのわずかな投資で自由自在に情報を収集整理できるようになった。研究者は最大の恩恵を受けている。





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崖っぷち弱小大学物語

2005年01月14日 21時15分36秒 | 書評

 著者は理系の世界的研究者であるが、専門外の社会科学についてはお粗末と言わざるを得ない。


 京都大学霊長類研究所は私も見学したことがあるが、優秀でモチベーションが高い院生が集まる研究所である。弱小大学とは集まる学生のレベルと学生に将来与えられるチャンスも格段に差がある。そのことを考慮に入れず批判してもしょうがないだろう。絶対に人類学者になる事が無い学生に向かって興味を持てと言っても持つわけが無い。自発的動機付けが可能かどうかぐらい分からないのか。

 結局著者が相手にしたのは上位数パーセントの学生のようだが、どんな大学でも上位5%はもともと優秀な学生だ。そうでない学生を教育するのが弱小大学教員の役割である。学習方法のハウツーから教えるべきだ。





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大学院教育

2005年01月14日 20時36分36秒 | 学問・大学


 大学院教育をテーマにした有名なWebサイトに大学院教育 その恐るべき実態がある。破滅が分かっていても、そうせざるを得なかったのが良く分かる。

 裏を取った訳ではないので断言はできないが、具体的で説得力のある記述である。これを読んだら博士課程進学は命賭けのギャンブルだなぁと感じてしまう。文系でも昨年、ロースクールが開講したがこれも酷い制度だ。最大でも3割しか司法試験に受からない。残りの7割は社会復帰が不可能だろう。有能な人材を潰す制度を態々作る文科省はいかがなものか。受け皿を作らないまま大学院拡充をしたツケを若い世代が背負わされている。





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研究室移籍の自由度

2005年01月14日 18時04分16秒 | 学問・大学

 日本の大学では研究室間の人材移動の自由度は殆ど無い。教授に破門されればホームレス人生決定である。

 昨年知り合っただけで3人の博士課程ドロップアウト組と会った。2人は教授に破門された。残りの1人は博士論文が通らず退学。彼らの人生は悲惨である。彼らの内2人は月給15万円のテクニシャン、あとの一人は塾講師のバイトとなった。このように、日本では一度教授に睨まれると人生終了である。

 博士課程に進もうとするばあいは、OBの就職先と博士号取得率を事前に調べるのが最低限の防御である。研究への興味は二の次でよい。研究室選びは慎重に!





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博士課程進学は自殺行為

2005年01月14日 03時53分24秒 | 就職活動

 ある大学のX線構造解析分野ではドクター取得までの平均在籍期間は4.5年間である。殆どの人が課程を修了したとき、30歳に手が届く。

 現在パーマネントの研究職に成ることは極端に難しい。それ故非常勤の職を転々としなくてはならない。博士まで進んで日雇いである。しかし、これはまだマシな例である。もし博士号が取れなかったら、その時点で社会復帰不可が決定する。実際に博士課程に進んだ友人の半分はドロップアウトした。職歴無しの30歳の人間を雇ってくれる会社は無いわけで、コンビニなどのフリーターしか道は残されていない。いや、奨学金という借金は残されるが・・・

 修士卒で研究職に進んだ自分としては、自殺行為と分かっていても博士課程進学を考えざるを得ない。博士号を持っていないと土俵にすら上げてもらえないからだ。引くに引けない状況に追い込まれた。





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薬学部6年制は崩壊への序曲

2005年01月14日 01時47分06秒 | 学問・大学

 薬学部が4年制から6年制に移行する。権威で医学部に対抗したいのだろう。しかし、顧客である学生には何のメリットも無い。

 薬学部卒のポスドクとこの話題で話したとき、彼はこれでは優秀な女子が薬学部に来なくなると言った。まさにその通りで、2年間の延長は負担以外の何者でもない。就職にも進学(研究)にも大きくマイナスである。

 現在、薬剤師の仕事はごく一部の病院勤務の薬剤師を除き、単なる単純労働と化している。ハサミで錠剤を切って袋に詰めるだけである。技術の進歩が薬剤師を職人から単純労働者に変えた。その現状を無視して教育の高度化を図るとは愚の骨頂である。優秀な学生は医学部に流れ、新卒の年齢上昇を理由に新規雇用も抑制されるだろう。まさに悪循環である。薬剤師は自分で自分の死期を早めることになるのではないか。薬剤師が生き残るには養成期間を2年に短縮して短大化するか、教育内容は理学としてその中に薬剤師養成コースを併設するが一番ではないか。





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