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日米核密約の存在をあらためて浮き彫りにする二つの文書について報じた3月31日付「しんぶん赤旗」の記事を紹介します。
資料として二つの文書を掲載しています。
核密約はこうして結ばれた
五八~六〇年日米交渉の内容をしめす新たなアメリカ外交文書について
日本共産党元衆院議員
不破 哲三
2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」
※前の記事からの続きです。
資料として二つの文書を掲載しています。
日本共産党の不破哲三前議長が、30日の記者会見で示した見解と米側極秘電報は次のとおりです。
〈資料〉
第一の文書―日米交渉第一日(五八年十月四日)の会談状況を知らせるマッカーサー大使の電報
一九五八年十月二十二日
東京・米大使館発、マニラ・米大使館あて電報
極秘
配布限定
マニラ ボーレン大使あて
(写真)第一の文書(58年10月22日)
貴下あての関連国務省電報1096で、(貴下にあてて九月十三日の国務省電報771で送られた)〔事前〕協議の定式は、十月四日の交渉第一回会議で、一括提案の一部として、私から岸と藤山に提示された。その提案には、条約草案、〔事前〕協議の定式(フォーミュラ)、その定式についてのわれわれの解釈の説明が含まれていた。その解釈は、国務省・国防総省共同の交渉訓令に従ったもので、その訓令は以下のとおりである。
「米軍とその装備の日本への配置に関する日本側の要請に応えるため、適切な時点で、われわれの定式を持ち出して、合意を追求すること。交渉の過程では、以下の諸点についてのわれわれの理解への確認を求めること。(A)米軍とその装備の日本への配置は核兵器にのみあてはまること、(B)核兵器を積載している米軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、〔事前〕協議の定式の対象にならないこと」。
私は岸と藤山に、合意した解釈をどうしたら最もよく記録に残せるかについて、彼らの意見を尋ねた。現在の見通しでは、協議の定式そのものはおそらく合意覚書あるいは交換公文として公表されることになろう。合意した解釈は、おそらく秘密にされることになろうが、〔事前〕協議の定式が実際に何を意味するかについて双方が公に説明するさいの根拠として役立つことになるだろう。
裁判権については、貴下あての国務省電報924にある通り、十月四日の会合で岸と藤山にわれわれの提案を示した。
外務省の実務関係者からは一括提案のなかのいくつかの点について説明を求められたものの、岸も藤山も、十月四日の協議でも、その後の機会にも、われわれの提案のどの部分についても、中身のある応答はまったく聞いていない。今日、第二回目の会合があるので、そこでなんらかの反応を聞くことができるかもしれない。貴下の交渉にとり関心のあるこれら二点について、今後の進展のすべてを貴下に伝えてゆくつもりだ。
どちらの問題についても、米日両政府間に合意ができたと判断できる段階に達するまでは、これらの問題をフィリピン政府と論議したり知らせたりしないことが、強く要請される。若干の“ギブ・アンド・テーク”もあるかもしれないので、交渉の進展方の厳重な秘匿がきわめて重要だ。とくに、最初の草案がわれわれの側から提示されたという事実がぼやかされることが、永遠にないことを願っている。日本側とのいかなる合意の最終結果も、それが日本で好意的に受けとられるなら、共同の協議、共同の草案作成の成果として、押しだすべきだろう。貴下が、このメッセージならびに関連のメッセージを、本当に知る必要のある人たちだけに限定して配布するだろうことを、あてにしている。
第二の文書―合意成立(五九年六月二十日)当時の交渉経過を伝える マッカーサー大使の報告電報
一九五九年六月二十日
東京・大使館発 国務長官あて
第2745号
(写真)第二の文書(59年6月20日)
前日、私が藤山に手渡しておいた包括(パッケージ)提案への反応をつかむため、昨夜、藤山に会った。藤山は、この問題を岸と論議した、と述べた。私は、この提案は、単一のパッケージであって、まるごと全体を受け入れるか拒否するかすべきで、個々の項目ごとに処理するわけにはゆかないものだ、と伝えておいたので、藤山は、岸がこのパッケージの内容のすべてのポイントを受け入れた旨、私に伝える権限を与えられていた。ただし、岸が受け入れがたいと感じている形式上の一点があった。それは、公表用の〔協議の〕定式(フォーミュラ)の最後の部分に、「その時点における全般的な状況にてらして」という言葉が付け加えられていることだった。
藤山は、〔岸〕首相が、この文言を付け加えたことで、公表用の定式全体を多義的な〔どうにでもとれる〕ものにすると、強く感じていると述べた。それは、われわれが現実には〔事前〕協議の義務を負っていないという主張にすぐ行き着くだろうし、そのような主張は、社会党との関係だけでなく、一般世論との関係でもある種のもっともらしさを持つだろう。藤山は次のように述べた。岸も藤山も、われわれが、文章の前の方の部分で言われていることを最後の節で取り消そうなどと考えていないことは理解している、しかし、そうした印象は必ずや作り上げられて、〔改定安保〕条約と〔事前〕協議の定式を世論が受け入れるのをはなはだしく妨げ、岸内閣にとって重大な困難を生みだすだろう。「その時点における全般的な状況にてらして」という文言は、実際には本質的な問題ではないから、われわれがそれを削除することに合意するなら、私〔マッカーサー〕が提示したパッケージ提案を基礎にして問題を解決することができる、岸はそのことを私に知ってもらいたいと望んでいる。
第六条〔新安保条約の〕については、藤山は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」という言葉で始まるわれわれの最後の提案を、岸も藤山も受け入れる、と述べた。
「その時点における全般的な状況にてらして」の文言を〔事前〕協議の定式に挿入することは、私が強く主張したことだったから、私は藤山に、岸の意見を至急ワシントンに伝え、本日中にワシントンの反応を彼に知らせるよう望んでいる、と述べておいた。今朝になって、国務省電報1975の第一パラグラフで認められた通り、私は藤山に、われわれは上記の文言の削除に同意する、と伝えた。これによって、条約、〔事前〕協議の定式および討論記録についての合意は完了した。
上記に照らして、いまやわれわれは岸と藤山とのあいだで以下に関して完全な合意に達した。(A)新しい相互協力・安全保障条約、(B)公表用の〔事前〕協議の定式を含む交換公文、(C)その定式を説明する討論記録、(D)〔日米〕合同委員会の諸決定の有効性の継続などに関する交換公文、(E)ラスク・岡崎公式議事録の有効性継続に関する交換公文(東京・大使館電報2744号)。
藤山の説明によれば、上記の諸問題に関しわれわれのあいだでの合意は存在するが、日本政府の最終同意の前に、これらの問題は新しい党指導部と内閣で論議され承認されなければならない。もっとも藤山も岸も、大きな困難を想定してはいないとのことである。
マッカーサー
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日米核密約の存在をあらためて浮き彫りにする二つの文書について報じた3月31日付「しんぶん赤旗」の記事を紹介します。
資料として二つの文書を掲載しています。
核密約はこうして結ばれた
五八~六〇年日米交渉の内容をしめす新たなアメリカ外交文書について
日本共産党元衆院議員
不破 哲三
2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」
※前の記事からの続きです。
資料として二つの文書を掲載しています。
日本共産党の不破哲三前議長が、30日の記者会見で示した見解と米側極秘電報は次のとおりです。
〈資料〉
第一の文書―日米交渉第一日(五八年十月四日)の会談状況を知らせるマッカーサー大使の電報
一九五八年十月二十二日
東京・米大使館発、マニラ・米大使館あて電報
極秘
配布限定
マニラ ボーレン大使あて
(写真)第一の文書(58年10月22日)
貴下あての関連国務省電報1096で、(貴下にあてて九月十三日の国務省電報771で送られた)〔事前〕協議の定式は、十月四日の交渉第一回会議で、一括提案の一部として、私から岸と藤山に提示された。その提案には、条約草案、〔事前〕協議の定式(フォーミュラ)、その定式についてのわれわれの解釈の説明が含まれていた。その解釈は、国務省・国防総省共同の交渉訓令に従ったもので、その訓令は以下のとおりである。
「米軍とその装備の日本への配置に関する日本側の要請に応えるため、適切な時点で、われわれの定式を持ち出して、合意を追求すること。交渉の過程では、以下の諸点についてのわれわれの理解への確認を求めること。(A)米軍とその装備の日本への配置は核兵器にのみあてはまること、(B)核兵器を積載している米軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、〔事前〕協議の定式の対象にならないこと」。
私は岸と藤山に、合意した解釈をどうしたら最もよく記録に残せるかについて、彼らの意見を尋ねた。現在の見通しでは、協議の定式そのものはおそらく合意覚書あるいは交換公文として公表されることになろう。合意した解釈は、おそらく秘密にされることになろうが、〔事前〕協議の定式が実際に何を意味するかについて双方が公に説明するさいの根拠として役立つことになるだろう。
裁判権については、貴下あての国務省電報924にある通り、十月四日の会合で岸と藤山にわれわれの提案を示した。
外務省の実務関係者からは一括提案のなかのいくつかの点について説明を求められたものの、岸も藤山も、十月四日の協議でも、その後の機会にも、われわれの提案のどの部分についても、中身のある応答はまったく聞いていない。今日、第二回目の会合があるので、そこでなんらかの反応を聞くことができるかもしれない。貴下の交渉にとり関心のあるこれら二点について、今後の進展のすべてを貴下に伝えてゆくつもりだ。
どちらの問題についても、米日両政府間に合意ができたと判断できる段階に達するまでは、これらの問題をフィリピン政府と論議したり知らせたりしないことが、強く要請される。若干の“ギブ・アンド・テーク”もあるかもしれないので、交渉の進展方の厳重な秘匿がきわめて重要だ。とくに、最初の草案がわれわれの側から提示されたという事実がぼやかされることが、永遠にないことを願っている。日本側とのいかなる合意の最終結果も、それが日本で好意的に受けとられるなら、共同の協議、共同の草案作成の成果として、押しだすべきだろう。貴下が、このメッセージならびに関連のメッセージを、本当に知る必要のある人たちだけに限定して配布するだろうことを、あてにしている。
第二の文書―合意成立(五九年六月二十日)当時の交渉経過を伝える マッカーサー大使の報告電報
一九五九年六月二十日
東京・大使館発 国務長官あて
第2745号
(写真)第二の文書(59年6月20日)
前日、私が藤山に手渡しておいた包括(パッケージ)提案への反応をつかむため、昨夜、藤山に会った。藤山は、この問題を岸と論議した、と述べた。私は、この提案は、単一のパッケージであって、まるごと全体を受け入れるか拒否するかすべきで、個々の項目ごとに処理するわけにはゆかないものだ、と伝えておいたので、藤山は、岸がこのパッケージの内容のすべてのポイントを受け入れた旨、私に伝える権限を与えられていた。ただし、岸が受け入れがたいと感じている形式上の一点があった。それは、公表用の〔協議の〕定式(フォーミュラ)の最後の部分に、「その時点における全般的な状況にてらして」という言葉が付け加えられていることだった。
藤山は、〔岸〕首相が、この文言を付け加えたことで、公表用の定式全体を多義的な〔どうにでもとれる〕ものにすると、強く感じていると述べた。それは、われわれが現実には〔事前〕協議の義務を負っていないという主張にすぐ行き着くだろうし、そのような主張は、社会党との関係だけでなく、一般世論との関係でもある種のもっともらしさを持つだろう。藤山は次のように述べた。岸も藤山も、われわれが、文章の前の方の部分で言われていることを最後の節で取り消そうなどと考えていないことは理解している、しかし、そうした印象は必ずや作り上げられて、〔改定安保〕条約と〔事前〕協議の定式を世論が受け入れるのをはなはだしく妨げ、岸内閣にとって重大な困難を生みだすだろう。「その時点における全般的な状況にてらして」という文言は、実際には本質的な問題ではないから、われわれがそれを削除することに合意するなら、私〔マッカーサー〕が提示したパッケージ提案を基礎にして問題を解決することができる、岸はそのことを私に知ってもらいたいと望んでいる。
第六条〔新安保条約の〕については、藤山は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」という言葉で始まるわれわれの最後の提案を、岸も藤山も受け入れる、と述べた。
「その時点における全般的な状況にてらして」の文言を〔事前〕協議の定式に挿入することは、私が強く主張したことだったから、私は藤山に、岸の意見を至急ワシントンに伝え、本日中にワシントンの反応を彼に知らせるよう望んでいる、と述べておいた。今朝になって、国務省電報1975の第一パラグラフで認められた通り、私は藤山に、われわれは上記の文言の削除に同意する、と伝えた。これによって、条約、〔事前〕協議の定式および討論記録についての合意は完了した。
上記に照らして、いまやわれわれは岸と藤山とのあいだで以下に関して完全な合意に達した。(A)新しい相互協力・安全保障条約、(B)公表用の〔事前〕協議の定式を含む交換公文、(C)その定式を説明する討論記録、(D)〔日米〕合同委員会の諸決定の有効性の継続などに関する交換公文、(E)ラスク・岡崎公式議事録の有効性継続に関する交換公文(東京・大使館電報2744号)。
藤山の説明によれば、上記の諸問題に関しわれわれのあいだでの合意は存在するが、日本政府の最終同意の前に、これらの問題は新しい党指導部と内閣で論議され承認されなければならない。もっとも藤山も岸も、大きな困難を想定してはいないとのことである。
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■関連キーワード
核密約
核兵器廃絶
核密約はこうして結ばれた
五八~六〇年日米交渉の内容をしめす新たなアメリカ外交文書について
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2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」