リフトドライバーに挑戦!60才になったので新しい冒険をします。

ウィークエンドだけトライします。Driveしたらジャーナルを書きます。よろしくお願いします。

サンフランシスコの幽霊たちー2-

2023-05-16 10:03:25 | サンフランシスコの幽霊
サンフランシスコの真ん中に新しいラーメン屋さんができました。
凄く大きくてきれいで、ランチタイムには長蛇の列です。
私は長い列に並べるほど時間に余裕がありません。
通りかかるたびに行ってみたくてため息をついていましたが、ついにチャンスがやって来ました。
夕方のイベントが決まったので、ランチタイムに3時間程のお休みができたのです。

さっそく新しいラーメン屋さんに行きました。早めに行ったのに既に長い列ができています。
もしかすると1時間位待つのかもしれないと思いながらも物凄く美味しいらしいラーメンに思いをはせワクワクドキドキしていました。

あっという間に時がたち、店内に通され、注文しました。

回りを見ると店内のお客さんは皆嬉しそうにラーメンを食べています。

頭にハチマキをしてはんてんを着たウェイターさんが、お盆にラーメンをのせ私に近づいてきました。

嬉しくて、私はどんぶりを両手で持ち上げふーッと息を吹いてからスープをグイッと飲みました。

いえ、飲み干そうとしましたが、叫び声を上げて盛大に吐き出してしまいました。
周りの人はびっくりして見ています。
私は恥ずかしくていたたまれなくなりお店を飛び出しました。涙がボロボロこぼれました。
だって、それはめんつゆだったのです。 喉が驚いてスープの侵入を拒否し逆噴射したのです。

お店を走り出て隣の教会の中庭に入りました。小さな中庭ですが、木が生い茂り花々が見事に咲き乱れています。
そこは100年以上前からある古い教会で、昔はホテルに泊まれなかった外国からの渡航者が宿泊していたそうです。
中庭には色々な国の人達が残していった手作りの木彫りや石像が飾られています。
木に描かれたカラフルな絵画もあります。動物も並んでいます。

私はショックから立ち直れず、めんつゆで汚れた服のまま、まだ落ちてくる涙にグシャグシャの顔で、ベンチに座りました。

どこかヨーロッパ風の木彫りの前に花を置いて目を閉じている女性や、日本風の小さな石像、お地蔵さんの前に膝まづいている着物姿の女性もいます。
黄色と青が鮮やかなウクライナ風の模様が描かれた木の幹の前で、肩を抱き合うカップルもいます。
皆さん静かに頭を垂れジーッとしています。

私は落ち着いてからハッと気づき、隣のラーメン屋さんに料金を払っていない事を思い出し、中庭の出口に歩いていくと、
ラーメン屋さんのマネージャーらしき男性が立っていました。
Are you OK? Anything wrong? と心配そうにたずねてきます。
私は、(ラーメンのスープがめんつゆで … )と言えず、できるだけニッコリして I'm OK. と答えました。
後ろを向いて中庭を見ると、もう誰もいませんでした。


サンフランシスコの幽霊たちー1-

2023-05-09 03:03:11 | サンフランシスコの幽霊
サンフランシスコには幽霊がいます。 
恨みがましかったり、恐ろしい外見をしているとかではなく、何気なく日常を生きている幽霊です。

初めに見かけたのはアントワネットです。
時々行くフレンチレストランのランチタイムに現れました。
小さくて無名のレストランですが、フレンチなのでお値段は高めですが、シーズン毎に$10.00コースの日があるので、 
その時は長めのランチを楽しみます。

ある$10.00コースの日、一人で優雅なアペリティフを楽しんでいると、窓際の角席に一人の女性が座りました。
とても美しい女性です。
ウェイターがサッと近づきシャンパンをテーブルに置きました。特別細くて素敵なフルートです。
ウェイターはその後すぐ金色で透明な寒天と小さなバラの砂糖漬けを載せたランチプレートをシャンパンの横に置きました。

女性は細い指でキラキラ光る寒天をつまみ口に入れると、シャンパンを一口飲みました。
そして窓の外の街並みに目を向けています。

私はその女性にボーっと見とれました。
私のアぺりティフもコンソメジェリーでしたが、金色ではありません。
けれどその女性の真似をして指でつまみ口にいれ、スパークリングウォーターを飲みました。

女性は相変わらず素敵な姿勢で座り、窓の外を眺めています。

私は運ばれてきたアントレに夢中になり一瞬女性から目を離しました。
その1-2分の間に、女性は消えてしまいました。

テーブルに残されたランチプレートとフルートを片付けに来たウェイターに、
女性が食べていたきれいなアペリティフの名前をたずねると、ウェイターは私を見て微笑みウィンクをして無言のままキッチンに消えました。

デザートとコーヒーを終えてレストランを出る時出口で見送ってくれた別のウェイターに窓際の女性の事をたずねると、
「彼女も彼女のウェイターも昔の人です。あの席がお気に入りなんです。」と、教えてくれました。
「素敵な人ですね。」を私が言うと、elle n'est pas de ce mondeと答えました。

コーヒーとデザートを終えてレストランを出た後私はずっと夢心地でした。

仕事終わりはいつものようにWater Barへ直行です。
Water Barは、サンフランシスコに半世紀近く住んでいるきみこさんが経営するノン・アルコールバーです。
不思議な体験をするとWater Barへ行ってきみこさんに話します。

さっそくランチ時に見かけた美しい女性の話をすると、
「アントワネットとアンドレに会ったのね!」と、きみ子さんが嬉しそうに、羨ましそうに、言いました。
「有名人?」と聞くと、きみこさんもelle n'est pas de ce mondeと答えました。