
疑惑
桜の名所は数々あれど、近くの道明寺天満宮も素晴らしいが、知り合いに会うのが嫌だったので、凛は、大川端の「桜ノ宮公園」に優を誘おうと思った。
近くに造幣局があり、毛馬あたりから大川沿いにかけての桜は見事だ。
帝国HOTELでお茶をしてもいいし、近くにエスプレッソの美味しい店もある。
「そうだわ そうしましょう」
凛は、優の携帯番号をおした。
凛は優に携帯電話をしたが、携帯からは、「おかけになった電話は、電波の届かない所にいらっしゃるか、電源を切った状態・・・」の空しい声しかしない。。
凛は、自分でも会ったばかりの人に電話をかけるなんて。。と少し悔いていた。
それにしても、ここはたくさんの人がサクラを見に来ていて、人の波に流されながら、一滴の水のように凛は流されていった。
押し流されながら凛は歩いていると、目の端になんか見覚えのある人がハチマキしてる姿が飛び込んだ。
「あれ? あの人は?? 優?」
凛が見た先には、お好み焼きの屋台だった。
凛は自分の目を疑った。何故なら、お好み焼きの屋台にいるハチマキ姿の人は、優に他ならなかったから。
優は凛に見られてるとは知らずに、
「おいしぃよ! このお好み焼き!!買ってけ!どろぼ~ 」
などと、かなり大声で叫んでいたのであった。
凛は思い切って近づいて
凛「優さん お好み焼き一枚ください 」
優「あっ!凛さん。 どうしてここが。。。」
凛「たまたまここに来ていて。。。優さんの携帯に電話したんだけど、繋がらなくって。。。」
優「ごめん。見ての通りこの姿でね 」
凛「優さんのお仕事って・・・」
優「ちょっと訳があって。。。また今度話するよ。今日は見ての通り忙しいから。。」
凛「うん。わかったわ。また会えるよね。連絡頂戴ね。」
凛はそう言い残すと足早に去っていった。
優さんってどんな人なんだろう?もっと彼の事を知りたいと思った。
桜の花は二人の頭上で咲き誇っていた。
帰り道、凛は考えた・・・
何故、あそこに優はいたのだろう・・・・・
訳って ・・・・・
見上げると、夜桜が暗い空に神秘的とも言えるほどに咲き誇っていた・・・
「きれい~ 」こんな路を優と歩きたい、と思った・・・
そして・・・
何故か、優の事ばかり考えている自分に顔を赤らめた。
一方、優は・・・
「何故、こんな時に会ってしまったのだろう 」
もっと、ロマンティックなデートをさりげなく演出するつもりだった・・・
とそこへ・・・黒塗りの車が・・・
「もう、お帰りの時間でございます、お坊ちゃま」
「わかった。。。」
優は、黒いスーツの紳士が開けたドアから車に乗り込んだ・・・
大久保執事「坊ちゃま、いたずらは、もうこれくらいにして下さい
大久保の寿命が持ちませぬ」
優「爺、わかったよ。でも 僕の気持ちも分かったくれよ。あの大きな屋敷の中にいると息が詰まりそうになるんだ。だから。。。時々こうして 世間の空気を吸いたくなるんだ」
大久保執事「坊ちゃまのお気持ち よくぞんじております。しかし、旦那様の目を盗んで、こうも遊ばれては・・・わたくしの立場が・・・」
優「わかった、わかった、だから小言は、それくらいにして・・・爺見てごらん。造幣局のさくらが 満開だ!」
大久保執事「本当に 見事なさくらですなあ~」
優「爺は、このさくらを見て 思い出す事はないのかい!?」
大久保執事「え”っ!? さくらですか!?」
優「さくらの季節に恋をした事とか。。。ないの!?」
大久保執事「さくら・・・ですか?ああっ・・・あれは、。。。坊ちゃま、何をおっしゃるのですか?そんな事あるわけ・・・ないでごさいますよ 」
優「そうかい!?なんだか顔が赤いよ」
大久保執事「ぼ、ぼ、坊ちゃま~ 」
優「爺、僕はね、つい最近電車の中でとても可愛い人とめぐり合ったんだ。その人とさくらを見に行く約束をしてね、だから、今夜はその下見に来たんだよ。でも、お好み焼きの屋台に興味が 湧いて、つい、お好み焼きのオヤジに頼み込んで 焼かせてもらってたんだ。でも、そこを偶然彼女に見られてしまってね。爺、どうしょう~」
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