1971年上梓
あまりにも重い内容なので、途中で挫折しそうになりましたが、読み始めるとサスペンスのようで切迫感があって一気に読了。
エンディングもショックでしたし。
かなり以前、「草の花」で知った作家で、そのときも暗かったような・・
登場人物は3名。人生に対して甘々な傍観者の相馬君、虚無の化身である画家の素子さん、そして平和そのものの綾ちゃん。分かりやすいよね、この3人をあわせると一人の人間に内在するすべてが出来上がる。傍観者は、あくまでも無関心、どんな悲痛な出来事が世界で起こっても生きていけます。だけど、真理を追究する人は・・死ぬしかありません。
ここまで極端なことはないにしても少なからず私たちの内には、二律背反ってものがあるわけで。どっちにしたって人生は列車に似て、ただ死という目的地にしか進めないし、「忘れてはいけない、でも忘れてしまうものだ」という矛盾の中で生きていくんですよね。ダラダラと。
ちなみに、作中の時代設定は、広島の原爆投下から5年くらい経たあたりで、平和運動とか水爆実験反対とか流行ってて、一方で素子さんのように被爆した人たちが、どう生き、どう死ぬかみたいなかんじで描かれています。