まろうさぎさんが素敵な映画のレビューをしてくださいました。
補足説明も映画がより深く興味深く楽しめそうです。
まろうさぎさん、松山さん関連だけでなく、
素敵な記事をいつもありがとうございます。こころから感謝します。
まろうさぎさんの
「ミツバチの羽音と地球の回転」レビュー
樹さん
こんばんは!
今日、ようやく、樹さんが紹介してくださった「ミツバチの羽音と地球の回転」を見ることができました。
ぜひ多くの方に見ていただきたいし、知ってほしいし、考えてほしい映画です。
(できればテレビで放送してもらいたいくらいの内容ですが、
テレビだと前半部分でチャンネルを変えられてしまうかしら)
渋谷にあるお気に入りの映画館での上映で、40分ほど前に行ったら私が2人目の入場者で、
「あら、人気ないな」と思ったのですが、上映時間には30名ほどが集まって嬉しくなりました。
では、以下、レビューです。
樹さん、いい映画を紹介して下さって、本当にありがとうございました!
まろうさぎ
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「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画を見てきました。
これは、大雑把なくくりで言えば、原子力発電の建設に反対する祝島住人の姿を追ったドキュメンタリー映画です。
しかし、単なる反原発ドキュメンタリーと言うより、
私たちがこの先、どんなエネルギーを選択したいのか、それを考えるドキュメンタリーだと言えます。
私は以前「ザ・コーヴ」で、事実をありのままに映したと思えるドキュメンタリーも、
製作者の意図でいくらでも印象操作ができることを実感しました。
ですから、この映画も「反原発」の意図があることは明白です。
それをふまえた上で、映画を見て感じたことを書きたいと思います。
まず、祝島について
山口県祝島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、半農半漁で生活しています。
高齢化もすすみ、人口も減少しています。
その祝島から目と鼻の先、わずか4キロ先の田ノ浦に、原子力発電所を建設しようという計画が持ち上がって28年。
祝島住人は、粘り強く反対運動を続けてきました。
反対運動の先頭に立つ島民は、
「一日でも建設を遅らせること。それが島民の使命。
そのうちに、世論が原発反対になる、その日を待っている」と言います。
その一方で、原発推進派と反対派で島内はきっぱりと線が引かれてしまいました。
原発が出来たらどうなるか
原子力発電所を作る中国電力は、
「現在の第一次産業だけでは、島はやっていけない。原発が建設されれば、雇用もあるし、島が発展する。
また、島の方々が心配されているような環境破壊は“絶対に”おきない」と言います。
しかし、祝島住人は、枇杷(びわ茶)やひじきをインターネットで販売し、
何とか半農半漁の今の生活を維持し発展させようと努力を続けています。
海岸でとれる「ひじき」は注文が多いけれども、人手不足で応じ切れないほどなのです。
(映画で見るひじきが、非常においしそうで、ひじきが大好きな私は、ぜひ買いたい!とHPを確認したら、
やはり注文を一時中断していました)(注1 祝島市場HPのURLは文末)
また、島民の生活からでる生ゴミを豚のエサとし、その豚が地面を掘り返し、休耕田が再び田畑として蘇っています。
(子豚が16匹生まれるのですが、この子豚が超かわいい!!
思わず「いやぁ、かわいい〜〜」と映画館で小声で悶えてしまったほどかわいかった!!)
環境破壊について“絶対に”ないという中国電力(国)側の主張は、どう考えても“絶対に”信用できません。
夏に1度海水の温度が上がるだけで、釣り上げた魚は船内の生簀に放しても死んでしまうのに、
原発を冷却するための水には、塩素が含まれ、さらに冷却した分、排水される水は、周りの水温より7度も高いのだそうです。
塩素を含んだ海水が海に住む命を殺し、大量の排水が海域の温度を上げてしまうのは明白です。
さらに、風評被害もあるでしょう。
現在の名産の「ひじき」ですが、海岸で生えるひじきなのですから、
4キロ先に原発があると知って、いくら安全です!と言われても、買う気にはなれません。
しかも排水が海に流されていると知ったらなおさらです。
むしろ原発が第一次産業を壊してしまい、経済的に原発に頼るしかない生活を引き起こすということです
(第一次産業は生涯現役ですが、原発に勤めると定年があって、その先はどうなるの?)
さて、しかし、ここまでなら、率直に言って、
「祝島住人の生活を守るために反対運動しているだけで、私たちには関係ないわ。
原発がないと、この先どうやって日本はエネルギーを作ったらいいの?
今のところ使用可能な代替エネルギーはないし、
地球温暖化防止のため、CO2の排出がない原発を作るのは、仕方無いんじゃない」
という感想を持つ人もいるでしょう。映画を見ながら、そういう感想が私の頭をかすめたことも事実です。
この映画が訴えるのは、そこです。本当に「使用可能な代替エネルギーはない」のでしょうか。
映画は祝島から一転、スウェーデンの小さな「オーバートーネオ市」に飛びます。
ここでは風力発電と太陽光発電を使って地域自立型の社会を実現しています。
さらに牛の糞尿から出るメタンガスをエネルギーに変えているのです。
牛の糞尿を利用したりすることを、バイオマス・エネルギーと言います。
以下、「環境バイオマス総合対策推進事業(中国四国地域事業)」(奇しくも中国地方ですよ!)から引用します。
(注2 URLは文末に記載)
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、
一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼びます。
バイオマスの種類には1.廃棄物系バイオマス、2.未利用バイオマス、そして3.資源作物
(エネルギーや製品の製造を目的に栽培される植物)があります。
廃棄物系バイオマスは、廃棄される紙、家畜排せつ物、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材、下水汚泥等があげられ、
未利用バイオマスとしては、稲わら・麦わら・もみ殻等が、
資源作物としては、さとうきびやトウモロコシなどがあげられます。(引用終わり)
さらに「エネルギー源を選択できる」のがスウェーデンなのです。
つまり、風力など再生可能なエネルギーから生まれる電気を使うか、
石油から生まれる電気を使うか、を選択できるということ。
日本では、風力発電も、太陽光発電も、石油・原子力発電も電力は一括されていて、
電力会社も地域ごとに1社しかない独占状態です。
つまり、問題は2つ。
1つ目は、国単位で安定供給を図ろうとするから「代替エネルギーがない」と思ってしまうのです。
地域ごとにその地域に合ったエネルギーを自給する方法を考えれば、利用可能なエネルギーはいろいろある、ということ。
2つ目は、電力会社の独占状況を変えたくない(変えるのが怖い)のと
原子力発電を選択した国の方針を死守しようとする日本政府です。
スウェーデンのように「電力選択制」を導入すると、自分がどのエネルギーを使いたいのかを選択でき、
電力会社も「よりエコ」な電力開発に力をそそぐことになります。
石油・原子力以外に、利用可能なエネルギー(再生可能エネルギー)として
「太陽光」「風力」「バイオマス」「水力」「地熱」があります。
さらに映画内では「波力」も新たなエネルギー源として可能性があることを示唆していました。
日本は四方を海に囲まれています。山には川が流れています。そして火山国です。風も吹きます。日照時間はスウェーデンの2倍です。
本気になって利用する気になれば、エネルギー源があふれている国なのです。
祝島に戻って、映画の最後で、この映画の中心人物である30代の若者がこう言います。
「5年、原発の建設を中止する。
その間に、いくらいくらのエネルギー供給を自分たちで出来るようになれ!と言ってくれたら、
現状を変えることが出来るのに」と。
私たち一人一人の行動は、ミツバチの羽音のような小さな小さなエネルギーです。
でも、その小さなエネルギーが集まれば地球の回転に影響を及ぼすことが出来るのです。
今は具体的に何ができるのか、わかりません。
でも、「原発しかない」のは思いこみで「代替エネルギーがある」ということを知ることで、
私の中で「原発反対」の確固たる信念が出来たように思います。
なお、この文章を書くにあたって、少しインターネット散策をしたところ、面白いブログを見つけました。
「バイオマスからエネルギー from スウェーデン」というブログです。
現在スウェーデンの大学でバイオマス・エネルギー変換技術について研究している「うめけん」さんという方が書いています。
とてもわかりやすく面白かったので、あわせてご紹介したいと思います。
注1「祝島市場」
http://www5d.biglobe.ne.jp/~jf-iwai/itiba.htm
注2「環境バイオマス総合対策推進事業 地域に根ざした環境バイオマスに関する意識改革(中国四国地域事業)」
http://blog.livedoor.jp/bioenergyken/archives/51500513.html
注3「バイオマスからエネルギー from スウェーデン」
http://www.riswme.co.jp/biomass/about/index.html
映画『ミツバチの羽音と地球の回転』予告編
http://www.youtube.com/watch?v=Er-F8CiVtLo
ミツバチ通信01『鎌仲ひとみからのメッセージ』
http://www.youtube.com/watch?v=wE0XUmGp-pw
公式サイトはここから
劇場公開情報はここから
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まろうさぎさん、詳細で前のめりになっちゃうようなレビューをどうもありがとうございます。
>夏に1度海水の温度が上がるだけで、釣り上げた魚は船内の生簀に放しても死んでしまうのに、
>原発を冷却するための水には、塩素が含まれ、さらに冷却した分、排水される水は、
>周りの水温より7度も高いのだそうです。
冷却したあと、排出された水は温度が高いんだろうなあという、
ぼんやりとしたことしか考えていなかったので、
まろうさぎさんが教えてくださったこの事実に衝撃を受けました。
島が海と暮らしている、ということ、
字面では想像しにくいけれど、
予告編でも海の幸、島の山の幸などが描かれ、
彼らの訴えがとてもずっしりとこころに響きますね。
「祝島市場」で自然が豊かだからこそ、の素朴な品揃え、拝見もさせていただきました。
まろうさぎさんが張ってくださったこのリンクからは、
そこで暮らすひとたちの、日々の暮らしが見えてくるようです。
品切れ、が目立つのはこの島を愛するひとたちの数をも、物語っているようですね。
リンク先のブログも拝見しました。
環境問題については《総論》のような講演会を何度も聴きましたが、
本当に大切なのは、こんなふうに、実際に何が起きているか、
ひとがどんなふうにその問題と向き合っているか、ということなのではないかと思います。
そういう意味で、私も早くこの映画が観たいです。
(少し前にこの映画とは別に祝島の反原発運動を取り上げた映画があったけれど、観られなかったので)
(上映予定の劇場は「海炭市叙景」とか「COLIN love of the dead」とか、
「荒川修作ー死なない子ども」とかも上映の映画館でした!!)
人間が環境にたいして行うことに○はなくて、
大きな×と小さな×なんだと、
かつて講演会で聴いたことがあります。
いかにも、ですよね。
人間さえ、その営為のために自然を傷つけなかったら、
自然は持続可能であり続けたと思うのです。
スウェーデンの取り組みやひとびとの価値観も、先入観なしで見聞きしたいと思います。
まろうさぎさんはいつも感動や驚きなどを独り占めせず、
こうやっておすそ分けしてくださいます。
時間を費やして、新たに補足説明のために調べてくださるご苦労も厭わず。
本当にありがとうございます。
ひとりでも多くの方がこの映画をご覧になって、考えてくださるといいなと思います。
まずは私から、ですが。
まろうさぎさん、ありがとうございました。
まろうさぎさん、貴重なレビューありがとうございます。
私は日本で初めて原子力の火が灯った場所近くの出身で、現在も両親が住んでいます。
生まれた時にはすでにそこにあり、出身地を説明し易いなど馬鹿馬鹿しい理由もあり、
どちらかと言えば誇らしい気持ちでおりましたが、
10年ほど前に2名の方が亡くなる臨界事故が起きて、外出・登校禁止令や農作物にも大打撃、
身近な人たちが放射能漏れに怯えるという経験をしました。
そこはもう半世紀以上も前に出来た施設で、それなりに、国力の高揚や、
重要な研究の場としての大切な役目を担ってきたのだと思います。
近くにあり過ぎるがゆえに原発があるのが当たり前で、
恐ろしい思いをしたのにもかかわらず近頃では、CMを鵜呑みにして、
「地球温暖化防止のため、CO2の排出がない原発を作るのは、仕方無いんじゃない」と
私も思いつつありましたが、でももう時代は変わったのですね。
「電力選択制」、そんな考え方があるのですね。
あのような事故に遭う可能性のある人を増やすのはもうたくさんです。
話は違うのかも知れませんが、一軒がひとつの電力会社としか契約できないので
コンビニなどへの電気自動車用のコンセントの設置が進まないというニュースを聞きましたが、
そのような問題にも関連するのでしょうか。
何が出来るのか分からないのですが、まろうさぎさんのレビューで、
>「原発しかない」のは思いこみで「代替エネルギーがある」ということ
を「知った」ことがまず、とても大切だと思います。
樹さんの仰る通り、まろうさぎさんのおすそ分けのお心に、深く感謝いたします。
この映画は、樹さんが教えて下さらなかったら、興味をひかれても実際に見に行かなかった可能性が高かったので、本当によかったです。
ありがとうございました。
原発側の主張が断片的にしかないので、客観的に「公平」とは言えないですが、でも、「エネルギーを選択できる」という事実を知ったこと、それを実践している場所を知ったこと、そして、いろいろ調べるきっかけになったことで、私も自分の意見に裏付けが出来て(まだまだ勉強不足ですが)、意味のある映画でした。
ぜひご覧になって下さい!!
>さく蔵さん
コメントありがとうございます。
私よりずっと前から原発に向き合っていらしたのですね。「もう変えられないものとしてある原発」をどうするか、という問題なのだと改めて感じました。
電気自動車用のコンセントの話も、つながっていると思います。
政府がライフラインとしての電力安定供給のために「原子力」を主張するのは分かります。でも、地域ごとに賄う体制作りについて、真剣に検討すべき時期に来ています。
政府が50年前に決めた政策を死守するなんて、それこそ科学進歩の目覚ましい現代において、ナンセンスだと思います。