もう3年も経つのですね。ちょうど3年前の同じ日に「『春告草』なぜ草なの?」という題名で、梅の異名のことを記事にして投稿しました。
梅「思いのまま」(京都御苑 梅林)
京都府立植物園の園芸相談に寄せられた相談(質問?)で、以前の投稿では語源がわからないので、ご存じの方がいらっしゃいましたら教えてくださいと書いていたのですが、ひょんなことからその語源を知ることができました。ただ、知ってからもかなり年数が経過していて、ブログで紹介することを失念していましたので、ちょっと反省。
さて、その語源ですが、経巻や歌書・消息などの巻子本や冊子装からその一部を切り取って収集して帖に編集したものを手鑑と言い、そのひとつに「藻塩草」があります。この実物は京都国立博物館が保管し、国宝に指定されています。
以下の写真2枚は国立国会図書館が公開している写本ですが、この藻塩草に「梅」と分類された項(1枚目の写真)があり、赤枠で囲んだ部分からその内容が記載されています。
(国立国会図書館デジタルコレクションより転載。赤枠はブログ管理人が追加)
そして、春告草についての記載があるのは、この写本では次ページになり、梅の項の最後のほうになりますが、下の写真で赤枠で囲んだ部分に
み吉野の
春つげ草の花の色
あらぬ梢に
かかる白雲
と梅を詠んだ和歌が記載されています。
(国立国会図書館デジタルコレクションより転載。赤枠はブログ管理人が追加)
写本では枠内に「春告草 花の異名 みよしのの春つけ草の花の色あらぬ梢にかかるしら雲」とあり、これが語源であることがわかりました。
知っていれば何でもないことですが、知らないと何から取り掛かればよいのかもわからないですね。
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園芸相談では一番に園芸や植物に関する知識の豊富さを求められますが、ときには文学や文化、歴史(園芸史)に関わる内容の相談が寄せられることもあり、幅広い教養も持ち合わせていないとできない部分もあります。担当するたびに自分の教養のなさを恥じるばかりですが、相談を受けることでこちらも勉強になり、このときの相談も春告草の語源を調べるきっかけとなりました。
ご相談者様にもこの記事が届くことを祈りつつ、遅まきながらこの記事をもって再回答に代えさせていただきます。またご相談者様には、あらためて勉強になりましたことを感謝し、あわせて御礼の言葉もお贈りしたいと思います。
でも待てよ。これだと、梅を『春告草』と呼ぶ語源はわかったけれど、樹木に対して『草』を使う理由を示す回答になってないかも……。古代や中世の日本人が『木』『草』『花』をどのように捉えていたのか、もういちど調べてみないといけないかな?