京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

楊貴妃の美貌に譬えられた名前を持つ花

2018-06-06 11:57:30 | 雑学・蘊蓄・豆知識
今日、近畿地方も梅雨入りしたようですね。

晴天が続いた梅雨入り前の先週末、清浄華院の河原町通側にある山門近くの花壇でビヨウヤナギが咲いていました。



こちらも同じく先週末に、娶妻結地蔵尊で知られる祐正寺の境内で咲いていたビヨウヤナギ。



ビヨウヤナギは中国原産のオトギリソウ科の半常緑の小低木で、日本には約300年前に渡来した品種です。近縁のキンシバイ(金糸梅)に比べると雄しべの花糸が長いのが特徴的でしょうか。

さて、タイトルの答えはこのビヨウヤナギです。漢字では「未央柳」と書き、この「未央」とは前漢時代に首都長安の南西部に造られ唐代には宮廷の内に入った宮殿である「未央宮(びおうきゅう)」のことで、ビヨウヤナギの読みも本来は「ビオウヤナギ」だったそうですね。そして「未央柳」とは、この未央宮にあった柳のことで、玄宗皇帝の御代に起こった安史の乱が平定された後のこと、蜀に逃れていた玄宗皇帝が長安へ戻った際、乱によって絞殺された愛する楊貴妃のことを思い出す風景を、詩人の白居易(白楽天)が『長恨歌』で「未央の柳」と彼女の美貌を譬えて詠んでおり、日本ではその故事にあやかって葉が柳に似て美しい花を咲かせる本種に名付けたのが由来だそうです。またビヨウヤナギと呼ばれるようになってからのことだと思いますが、このような経緯から漢字では「美容柳」とも書かれることがあります。なお原産地の中国では、ビヨウヤナギのことは「金絲桃」というようです。

ところで、その白居易が詠んだ『長恨歌』の該当箇所を引用すると、

 帰来池苑皆依旧
 
 太液芙蓉未央柳
 
 芙蓉如面柳如眉
 
 対此如何不涙垂


とあります。帰ってくると池も苑もすべて昔のままで、太液池の蓮の花も未央宮の柳もある。蓮の花は楊貴妃の顔に、未央宮の柳は楊貴妃の眉に思えて、涙が垂れるのを抑えられないと詠まれています。
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