朝起きてみると、新聞受けの横で、かまきりが、往生をしているのでありました。かまきりのあの、鋭く青い澄み切った羽の色もなく、くすんだ茶色の番傘のような色をして、足を天井に突き伸ばして、あわれあわれ、かまきりは、一人静かに死んでいるのでありました。
正月の朝に、このような死と出会ったことに、私はこのうえもない喜びを感じました。幾千幾万の夜を越えて、幾千幾万の朝を越えて、この人の世に生まれたものには、畢竟、厳粛なる死があるのみであります。死は終わりではなく、生のあらたな出発であるということに気づくまでに、50幾星霜もの歳月がかかりました。
かまきりの死も、人間の死も、同じように見ることのできる力・・・。重い軽いを忖度することなく、厳粛なるものであることの認識。磔刑に処せられ、十字架上に登ったときの、基督の末期の眼を獲得できるまで、私たちは、無明長夜の永い旅を歩み続けねばならない・・・。(年頭所感として)
正月の朝に、このような死と出会ったことに、私はこのうえもない喜びを感じました。幾千幾万の夜を越えて、幾千幾万の朝を越えて、この人の世に生まれたものには、畢竟、厳粛なる死があるのみであります。死は終わりではなく、生のあらたな出発であるということに気づくまでに、50幾星霜もの歳月がかかりました。
かまきりの死も、人間の死も、同じように見ることのできる力・・・。重い軽いを忖度することなく、厳粛なるものであることの認識。磔刑に処せられ、十字架上に登ったときの、基督の末期の眼を獲得できるまで、私たちは、無明長夜の永い旅を歩み続けねばならない・・・。(年頭所感として)