倉敷民商事務局員・禰屋町子さんの第1回公判が4月25日、岡山地裁でありました。
満員の傍聴席を背にして、禰屋さんは「私は無罪です」と、裁判官に主張しました。
禰屋町子さんの公訴事実に対する意見
五輪建設の法人税法違反について私は無罪です。脱税の手伝いなんかしていません。五輪建設が脱税しようとしていることを知らないまま、法人税の申告を手伝っただけです。
税理士法違反についても無罪です。私のどのような行為が税理士法に違反しているのか理解できません。
昨年5月、法人税法違反で捜索が行われた後、私は五輪建設の関係者に会うことも、連絡をとることもしませんでした。法人税法違反で起訴されている五輪建設の役員2人が逮捕されていないのに、なぜ私が逮捕され、長い間身柄を拘束されなければならないのでしょうか。
民商は、自主記帳、自主計算、自主申告を通してきました。1人で悩まず、みんなで知恵を出し合い、励まし合い、支え合う団体です。
今回私に対する逮捕、勾留、起訴は民商に対する弾圧としか考えられません。
弁 護 人 意 見
清水善朗弁護団長
禰屋さんは法人税法違反につき無罪です。
禰屋さんは五輪建設が脱税しようとしていることを知らないままに申告を手伝っただけです。
税理士法違反についても無罪です。なお、税理私法違反の事実については、弁護人からの求釈明の申立に対して検察官から釈明があれば、より具体的に認否します。
そもそも、民主商工会(以下「民商」という)は、戦後の重税反対運動のなかで、中小業者の営業と生活を守るために、全国各地でつくられました。全国組織としては、各地の民商が中心となって、昭和26年、全国商工団体連合会(以下「全商連」という)が結成されました。また岡山県レベルでは岡山県商工団体連会があり、倉敷民商もその一員です。民商活動の大きな柱として、憲法に立脚した納税者の権利の確立があります。わが国では、申告納税制度が採用されています。これは国民主権の下における納税制度として、憲法に基礎を置いている制度です。このことから、自主記帳、自主計算、自主申告という納税の基本が導かれます。民商は中小業者の自主的団体としてこれらを推進しています。
アメリカ、カナダなどの先進国では、納税者の基本的権利が認められ、具体的に「納税者権利章典」ないし、「納税者権利宣言」が制定されています。これらの宣言により、行きすぎた税務行政の排除、あるいは納税者の救済制度が設けられています。しかし、日本にはこのような権利宣言がありません。先進国でこうした権利宣言がないのは日本だけであると言われています。1991(平成3)年、全商連はアメリカとカナダに調査団を派遣し、日本における納税者権利憲章の制定を目指す活動を展開してきました。こうした国際的な活動は高く評価されています。
民商は、最近では消費税増税反対を強く訴えています。民商の活動は、税金問題だけではなく,国民生活に関わる幅広い分野、例えば、まちづくりや地域の活性化、福祉や防災、貧困対策、原発廃止など様々な分野に及んでいます。いまや民商は、わが国における民主主義運動の重要な一翼を担っています。
貧困・格差といった言葉に象徴されるように生きていくことが困難な社会になっています。しかし、消費増税や生活保護費の削減など困難を国民に強いる政治が行われています。
かねてより税務当局は、納税民主主義を旗印とする民商を敵視してきました。本件捜査は、こうした民商に対する組織的攻撃を企図するものにほかなりません。
2013(平成25)年5月21日広島国税局は五輪建設に対する法人税法違反の疑いで倉敷民商事務所と禰屋さんの自宅を捜索し、法人税法違反と関係のない民商会員の帳簿や申告書を押収しました。検察は、この法人税法違反と関係のない資料をもとにして、禰屋さんを含む倉敷民商事務員3人が税理士法違反で起訴しました。
検察は、五輪建設の役員2人の身柄を放置したまま、3人の事務員に対して長期の身柄拘束を続けています。
確定申告と消費増税を控えた、1月21日に二度目の捜索を行い、引き続いて3人を逮捕勾留起訴しているという経過からも民商に対する弾圧であることが明らかです。
以上
検 察 官
検察官は、「税理士ではない」とし、五輪建設株式会社の脱税ほう助と、同社ほか4法人から依頼を受け、「法人税の確定申告書等22通を作成し、もって税理士業務を行った」などとしています。