現代川柳選1『月の子』新子自選集 から
昭和62年発行の「有夫恋」が話題をよんで時実新子がブレイクしたのはご存知のとおり。この本はその9年も前の昭和53年に発行されたもの。書かれた年代ごとに5章に分かれている。昭和4年生まれの新子が川柳をはじめた25歳~34歳のころから48歳までの句が載っている。圧倒的な湿り気に溺れそうになるが、正直に真直ぐに書くことが新しかった時代だ。次の8句は最初の章「四時の汽車 昭和二九年~三八年」から引いた。
靴音が近づき胸を踏んで過ぎ
恋成れり四時には四時の汽車が出る
凶暴な愛が欲しいの煙突よ
劣等感一途に烏賊のわたを抜く
ガーベラの赤企みを休ませず
切手の位置に切手を貼って狂えない
その上にまだ同情という侮辱
よく笑う妻に戻って以来 冬
写真は本の奥付
なお、この本は田口麦彦氏が所有していたものらしい。熊本市上通の舒文堂から購入した。新子さんが亡くなったのは2007年3月10日もうすぐ15年になる。(Y)
切手の位置に切手を貼って狂えない
この2句が特に佳いと思いました!
俳句投句のほうもよろしくです。