熊本県川柳研究協議会(熊本川柳研)

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自由律の歴史

2021-06-15 07:25:39 | 川柳一般

〔自由律川柳合同句集1〕昭和十六年一月一日發行 編者 伊良子擁一 發行者 石川捨次郎

序を觀田鶴太郎が書いている。同集の後半にある鈴木小寒郎の「自由律川柳小史」にその歴史を知ることができる。河東碧梧桐などの自由律俳句時代との関連もみられる。大正七年「街灯」創刊以来、第二期といわれる作品群である。自由律川柳は意外にも古い歴史があり、活発に詩性が詠まれていたことがわかる。すべては戦前の情勢により姿を消した。現在は川柳雑誌「風」(編集・発行 佐藤美文)が十四字に力を入れて発行されている。

上記の本は平成5年3月に、〈現代川柳 点鐘の会〉の墨 作二郎氏によって500部限定の復刻版が出された。下記句はそれより抄出。漢字は新漢字に直した。(楊子)

 

「たまむし」作品(昭和3年4月創刊 81号まで発行)

くすぐられるからわらつてやる    道田葉平

かなしい漫画となる顔だ風よ吹け   澄田羅門 

雨あがる蝉のぬけがら        黒木鵜足

 

「手」作品(昭和8年~昭和13年)

鮮人の子を泣かしてふとあたりの視線に怯え  松丘町二

心のすみに押しかたづけたもののぅづき    松盛琴人

蛍脚を縮めて死んでゐた           堤 比古

       

「紫」作品(昭和9年)

わたくしの汽車の影が菜の花      梅田千秋

友へのポストで月をみてきた      橋本魄堂

 

「川柳ビル」作品(昭和5年ごろ)

生きて行くそこに水溜がある      渡邊極堂

石投げても投げても青空が残つてる   橋本白史

捨てられた畳の、あきぞら       宮田豊次

 

「川柳風呂」作品(昭和10年創刊~昭和14年)

しんみりした話が火鉢の火埋める    吾郷夢迷

ひとりぐらしの火吹竹ふく       米江庄介

 

「視野」作品(昭和10年~昭和14年~)

要塞地帯のとんびの輪である      觀田鶴太郎

なにごともない水が煮える       鈴木小寒郎

静かさ、餅がぷすんと焼けた      大野了念

 

「卷雲」作品

器を忘れよと透明のカラクリ       小笹あさの

痴行の汚點に秋風の嫉み         小西貞子

 

「柳詩」作品(昭和8年)

こやつ電球となつて真空を掴み得てゐる  川上為男

鎖をとかれた坑口から冬へ這い出る    廣岡義明 

下記写真3枚は復刻版から。