〔自由律川柳合同句集1〕昭和十六年一月一日發行 編者 伊良子擁一 發行者 石川捨次郎
序を觀田鶴太郎が書いている。同集の後半にある鈴木小寒郎の「自由律川柳小史」にその歴史を知ることができる。河東碧梧桐などの自由律俳句時代との関連もみられる。大正七年「街灯」創刊以来、第二期といわれる作品群である。自由律川柳は意外にも古い歴史があり、活発に詩性が詠まれていたことがわかる。すべては戦前の情勢により姿を消した。現在は川柳雑誌「風」(編集・発行 佐藤美文)が十四字に力を入れて発行されている。
上記の本は平成5年3月に、〈現代川柳 点鐘の会〉の墨 作二郎氏によって500部限定の復刻版が出された。下記句はそれより抄出。漢字は新漢字に直した。(楊子)
「たまむし」作品(昭和3年4月創刊 81号まで発行)
くすぐられるからわらつてやる 道田葉平
かなしい漫画となる顔だ風よ吹け 澄田羅門
雨あがる蝉のぬけがら 黒木鵜足
「手」作品(昭和8年~昭和13年)
鮮人の子を泣かしてふとあたりの視線に怯え 松丘町二
心のすみに押しかたづけたもののぅづき 松盛琴人
蛍脚を縮めて死んでゐた 堤 比古
「紫」作品(昭和9年)
わたくしの汽車の影が菜の花 梅田千秋
友へのポストで月をみてきた 橋本魄堂
「川柳ビル」作品(昭和5年ごろ)
生きて行くそこに水溜がある 渡邊極堂
石投げても投げても青空が残つてる 橋本白史
捨てられた畳の、あきぞら 宮田豊次
「川柳風呂」作品(昭和10年創刊~昭和14年)
しんみりした話が火鉢の火埋める 吾郷夢迷
ひとりぐらしの火吹竹ふく 米江庄介
「視野」作品(昭和10年~昭和14年~)
要塞地帯のとんびの輪である 觀田鶴太郎
なにごともない水が煮える 鈴木小寒郎
静かさ、餅がぷすんと焼けた 大野了念
「卷雲」作品
器を忘れよと透明のカラクリ 小笹あさの
痴行の汚點に秋風の嫉み 小西貞子
「柳詩」作品(昭和8年)
こやつ電球となつて真空を掴み得てゐる 川上為男
鎖をとかれた坑口から冬へ這い出る 廣岡義明
下記写真3枚は復刻版から。