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せせらぎ
逆光に釣り上げられて束の間をせせらぎの上(へ)に魚が歪めり(春畑 茜)
ゆるされて今流れ出す雪解けの海へと向かうせせらぎを聞く(ドール)
わさび田へ続く水辺のせせらぎをたゆたう草に心憩いて(佐田やよい)
せせらぎの中にあっては蟹・魚 生まれ死んでく流されながら(島田久輔)
先生の声もノートを取る音もせせらぎと化す春の教室(ぱぴこ)
春色に爪染めて今日せせらぎにらららと歌えばるるると流る(黄菜子)
色紙で作る紫陽花さみしがる人はせせらぎでさえ溺れる(和良珠子)
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医
中庭の金魚の池がまず暮れて鈴木小児科医院しずまる(水須ゆき子)
家族以外馴れないウサギを獣医師に見せれば顔をそっと背ける(新野みどり)
深海の魚は動かず 真夜中の医局の隅に浮くあばら骨(ひぐらしひなつ)
それだけを覚えていようと見つめてた やたらと白い医務室の壁(癒々)
峠ふたつ越えし町より群青の影つれてくる馬医とその妻(村上きわみ)
医務室のベットで君はまごころを抱えるように眠り続ける(内田誠)
水は澄む 外科医の赤いくちびるがひとの運命を軽く告げても(和良珠子)
延命を望まぬ祖母を正しいとうなづく医者がヒトに見えた日(わたつみいさな。)
分類上医薬品にもなれぬまま神の名をもつ薬用ミューズ (青山みのり)
脈をとる医師の指先感じつつまぶたの裏の夕焼けを見る(春村蓬)
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