ねこのにくきゅう

題詠100首と短歌のページ

刻 秘密

2006-09-06 | 拉致

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  刻




この都市と二重に存在する都市でだれかが刻んだ文字をみつけた(aruka)

乗りたればもう用のなき時刻表カバンに入れてバスに寛ぐ(西中眞二郎)

同姓の多き村なり墓石に桶屋鍛冶屋と家業刻まれ(原田 町)

5m先の肩幅に刻まれたフェザーをめがけ、クロールを攪く(たざわよしなお)

柔肌の石 刻まれた名の主の欠と落とを本音で述べよ(西宮えり)

泣きさうにところどころでなりながら刻まれてゆくあたらしい春(斉藤そよ)

喧嘩して仲直りして小刻みに君との距離が縮まつてゆく(今泉洋子)

知ることの誰もない子の名を白い紙に書いては刻んで流す(和良珠子)

時刻表読むのが好きなじいちゃんのしわを線路のように辿って(ケビン・スタイン)

秋になることのできない夏にいて遅刻のわけも聞けないままで(しょうがきえりこ)


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  秘密




まだ知らぬ子らの会話の端々の秘密と内緒の微妙な違い(上田のカリメロ)

夢に見し乙女の裸像美(は)しかりきわが末代の秘密とやせむ(船坂圭之介)

あちこちに秘密の本をかくしてた 世界によく似た小さな部屋で(aruka)

ため込んだ秘密を全部埋めるには三日三晩は穴掘りしなきゃ(富田林薫)

わたくしの宝石になる秘密です男のひともあんなして泣く(ハナ)

満月は今宵静かな共犯者 主犯は誰であるかは秘密(野良ゆうき)

ひとんちの庭にうずめたロウネンドひとつ秘密の場所がほしくて(おとくにすぎな)

快活にまはるはぐるまかたときも秘密めかないものであらんと(斉藤そよ)

秘密だといった時点で秘密ではなくなることを知る女子トイレ(にしまき)

雨ばかり降る町へゆき軒下に秘密そだてて暮らしましょうか(村上きわみ)

つながりを失う夜に読みかえすかつて秘密と呼んだ約束(内田誠)


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