Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第45回 AS650不調続きの原因は?=小坂夏樹=AS650 Troubles

2016年11月23日 | マニュアル
不安定な1号機
11月の遠征では2台有るAS650の内の主機たる1号機にすっかり翻弄されてしまった。
このところキャブ交換など整備をしても始動性が悪く、陸上でも何回もロープを引かないと始動しない。最近の遠征でも失敗続きの感がある。しかし一旦始動すればあとはOKというので、今回も持参した。
ところが海岸で始動を確認しておいて、さあ入水しようとまたロープを引いてもさっぱり掛からない。キャブレタのL・Hネジを調整したり、プラグを新品に交換したりしても同じ状態で、とうとう疲れ切り、初日の魚突きを諦めてしまった。

その日のうちにキャブレタを取外し、持参していた予備品に交換した。これで陸上では初めは手古摺ったが始動に問題なくなった。また排気ホースとスノーケルからの簡易ポンプでの加圧試験で漏れのないことも確かめておいた。

取外したキャブレタは内部もきれいで流量調整膜も異状無く感じたが、全体を清掃し、念のため純正品の新品の膜類に交換しておいた。このキャブで始動が困難というのは、何か他の原因があるのだろうかと不安だった。

ところが、2日目からもトラブルが消えない:入水直後の水面での始動は問題ないが、移動してしばらく経つと、浮かせておいても、あるいはボードに載せておいても、始動できない。それで何度も本機を載せたボードを曳いたり、自分も同じボードに半身を預けて泳ぎ帰ることになってしまった。こんな状態ではとても長距離移動は出来ず、漁獲も低調そのものだった。

プラグを見ても正常に見えるが、ひっくり返してロープを引いてみるとシリンダから多少の海水が出て来ることもあった。後で考えれば当然原因が有った筈だが、加圧しても漏れがないようなので、たまたま吸い込んだかなどと軽く考えていた。


さて、そのままの状態で家へ持ち帰った本機の修理だが・・・・
先ずプラグはきれいな様に見える


圧縮比が低下して始動が難しいのかと、計測すると11kg≒1MP以上あって問題ない



ふと、忘れていた浸水確認を思い出し、念のためひっくり返してロープを引くとなんと100cc程度?も水が出てきてびっくり。


それではというので、また簡易ポンプで加圧してみた。
するとまたまたびっくりで、キャブのアクセル軸から激しく泡が出てくる。このキャブは前回(Blog 42回)全く同じ問題で修理し、加圧試験もしておいたものだ。遠征中には漏れが確認できなかったが、どうなっているのだろう。

始動性が悪いからと、交換したキャブが浸水を起こしていた。無駄な作業を繰返してしまったようだが、加圧試験で判明しなかったのだから仕方がないか。


なお、空気タンクはOリング式に改造したスノーケルを使わず、キャップをはめたままにしたら、そこからも泡が出て、燃料タンク同様、キャップは信用できないと判る。


前回仲間の事例を紹介したように、スタータ/高圧部にも浸水の不安があるので、こちらも点検したところ問題ない。このケースの取り付けブラケットはひび割れが発生し、金属板で押えてあるが、その部分も問題ない



ということで、本体の簡易点検では問題はなさそうだ。

当然ながらキャブは再び交換した。と言ってもこのキャブは、上記の如く、今回の遠征初日に交換した物だ。現地でばらしてみて特段異常は無かったが、念のため流量調整膜とポンプ膜とを純正新品に交換しておいたものだ。それをまた組付けたということになる。
交換後には始動性を確認し、加圧して漏れの無いことも確かめた後、水中でしばらく運転した。


こうして、台上というか、ベンチテストでは問題無くなった。
しかしいざ海で使おうとするとダメということが当たり前の如く続いている。いったいどうしたらこの厄介な問題を解消できるのか??



さて、アクセル軸から浸水するキャブの修理だが・・・・・・

流量調整膜を含めてばらしたところ


分解しながら点検したがアクセル軸には特段異常が無く、どうしてここから浸水するのか解らない。パッキングゴムが不良なら、要交換だが、適当なOリングを探さねばならない。傷んだ感じではないので今回も清掃して、また注意しながら再組立てした。



流量調整膜はほんの数日運転したというか、悩まされただけなのに、かなり変形している。
これは最近購入したWalbro 純正品だ。


これら3枚は全て純正品だが、遠征先で取外した左端の物のみがしっかりした従来の形状だ。右の2枚は今までの印象とはかなり違って薄っぺらで頼りない。同社で部品の調達先を替えたのだろうか。或いは海賊品ということはないのだろうか?


更に左端に格安の互換品として購入した物を並べて比較した写真だ。互換品は右2枚の純正品と殆ど同じ物と思われるが、中央のカシメ形状が少し違っているだけだ。
今回取り外したのは右から2枚目だが、乾いてきたら少し歪が治ったようにも感じる。調整膜そのものによって始動性能が違うかもしれないと、以前から気になっている。


キャブ単体で水密試験をしようと、古い継手部品を取付け、反対側はゴム板と板で塞ぐという間に合せの冶具を作ってみた。


どうやらアクセル軸からは漏れがないようなので、今回のこのキャブレタ修理は一応完了とした。次に交換使用するときはしっかり水密検査をせねばなるまい。


以上の如く今回の不調原因は自らの注意不足と言える面もあり、今後の取扱を更に慎重にする必要があると思っている。しかし、魚突き遠征中に上記の如き作業はしたくないものだ。

常に不安は消えないので、次回の遠征では比較的安定している2号機を持参の積りだ。また、小笠原の様な長期に亘る場合は当然2台共用意することにしている。


Blog 第45回 AS650不調続きの原因は?  終り  =小坂夏樹=