Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog第30回 キャブガスケット大失敗、米国排気規制事情、他 =小坂夏樹=Carb. Gasket Failure 

2015年12月23日 | マニュアル
=今回は、シーズンオフを決め込む諸兄にも面白そうな、雑多な情報も紹介したい=

エンジン不調原因

このところ不調だった私の主機=1号機の原因がやっと判明したようで、いつもの事だが恥を忍んで投稿したい。他人の不幸は蜜の味・・・・素人の苦労だが、他人の振り見て我が振り直せ・・・・他人の失敗は自分の参考になるかもしれない:


本年15年8月にオーバーホールしたのに10月の遠征で始動出来なかった本機を、再整備して今回12月の遠征に持参した。
始動は容易なのだが、入水すると数メートル動いた途端にエンストする。何度も繰返し、終いには陸上でも始動して数秒するとエンストしてしまう。この間、再始動には一旦チョークを掛けて始動音を聞き、それから改めてロープを引く必要が有った。
厄介なことに、自宅での状況と同じく、宿ではバケツの水中で簡単に始動し、問題が無い。

原因は燃料系に違いないと思われるのだが、急遽海岸の車上で予備のキャブレタに交換してもだめだ。そして取外したキャブには別段異常は無いようだった。

交換で取付けたキャブそのものも疑って改めて点検したが調整膜も、下側のポンプ膜にも問題なかった。





あれこれいじっている内に気が付いたのは、キャブとエンジン吸気口=マニフォルドとの間のガスケットだ。燃料ポンプを駆動する脈動圧の伝達孔が、液体ガスケットのはみ出しで塞がっていた。

第25回で紹介した如く、浸水を止めるためキャブ周りの吸気ポートからエルボまで、各ガスケットそのものに、更に液体ガスケットを塗布したが、それが厚過ぎてはみ出したものだろう。余りにもお粗末な作業をしたものだと反省しきりだ。


これが原因かと、この塊を取除き、さあ大丈夫と組付けたが、相変わらず始動してはすぐにエンストする。陸上では吹上がりも良好だが水中では相変わらず駄目。
プラグは新品に交換したが変化なし。

ここでまた点検すると、今度は更に愚か!にもガスケットを裏返しに取付けてしまっていた。この失敗は、作業を簡単に済まそうと、タンクを取外さず緩めて浮かせただけでキャブ取付ネジを抜き、隙間にガスケットをうっかり表裏逆に差込んだのが原因だった。
写真にある如く締め付けた孔の痕が残っている。なお、元の孔の縁が切れてしまったが、よく見るとその部分に薄膜状の液体ガスケットのはみ出しも残っている。


こんな風に裏返しで伝達孔は完全に塞がれていれば燃料ポンプは作動しない筈だが、それでも何度も始動し、吹上りもOKというのは私の理解を超えている・・・・
始動はするがじきにエンストする場合、こんな部分の点検もすべきだと痛感した。

ここまでの悪戦苦闘で2日も掛かってしまい、予備機も持参しなかったので、その間は衰えた体力で近場でちょっと魚突きをするだけだった。
遠征3日目にはやっと本機を使って出撃できたが、時々はボディボードに載せた状態でないと始動出来なくなり、不安で遠くへは行けない。

さて、最終4日目だが、またしても不調だ。始動性が悪い。そこでこれで駄目なら諦めだとばかり、再度プラグを新品に交換したところ急に復調し、快適な移動をすることが出来た。全く良くある現象だ。これだからプラグは“伝家の宝刀”として常に予備を持たねばならない。
調整ネジでアイドル回転はかなり高くし、この日は無理やり操縦したようなものだ。

ところで、現地で何度も慌てた作業を繰返した挙句、気が付けば片側のタンク固定ネジが無くなっていた。締付不足だったのだろう。海岸では取敢へず細紐でタンクを押へ使用したが、宿で始動試験を繰返した場所に落ちているのを見つけてほっとした。




遠征後のキャブとマフラ残滓などの確認
キャブレタは2日間しか海で使ってないので、取付部のガスケットに問題なく、赤矢印の脈動圧伝達孔周りもきれいだ。羹(あつもの)に懲りてなますを吹くではないが、液体ガスケットではなく、透明なボンドSUを表面に塗布してある。
ポンプ膜も流量調整膜も良好な状態だった。


現場で急いでいる時は次のようにタンクを取外さず、ネジを緩めて浮かせただけでも、キャブの取付ボルトを抜けばガスケットは抜き差し出来る。だが現地でそれをやった結果、上記の如く、裏表を間違って組み込んでしまったのだ。
間違いの無いよう、タンクは完全に取外してからキャブをいじったほうが良さそうだ。



なおプラグも今回は新品2つ目でやっとまともに使えたが、1日だけ使用したプラグはかなりきれいな状態だ。通常は1日使っただけで碍子部が汚くなるが、今回は私にしたら驚くほどきれいで驚いた。写真で解る通り熱価の低い BP2HS を使用したことも効いているかもしれない。


1日で駄目に?なった新品の同じプラグは海岸で紛失したらしく、状況解らず残念だ。



マフラ廃液・残滓を確認するには分解が必要で結構面倒臭い。
先ず長いボルトを抜くと、写真では既に一部拭取ってしまったが、かなりの残滓がくっついており、嫌な感じがする。



以前紹介した治具を使い、マフラを分解したところ、やはり、2日間使っただけにしてはかなりの残滓が内部に付着していた。その厚さはマフラ下部では5mm以上あった。上部にもかなりの量が附着しているので、ホース排気式に改造したこととは無関係と思う。改造で排出が巧く行かないなら、残滓は下部に溜まる筈だ。


水も数cc程残留していた 青枠内にこぼれている


周囲温度15℃程だが、横にするとゆ~っくり、どろ~りと残滓が流れ出る。


軟らかだ



マフラ後半部にも附着しており、排気孔から簡単には流れ出ない様だ。

なお、排気ホースは邪魔なので、切り取ってしまってある。擦れて傷んでいた口元を切取って再接続の積りだ。


この残滓にガソリンを注いで暫く揺すって捨てると、この写真の左側部分の如く、残滓が洗い流されている。


このことから、使用後はガソリンをマフラに注入し、暫く置いてからガシャガシャ濯いで排出すれば残滓は相当程度排出出来る。ただしこの時に燃焼室に逆流してしまうと感じが悪いので、全体の姿勢を考えながら揺らすべきだろう。まあ、プラグを外してあれば、逆流しても対処は簡単だ。
また、写真の通り固定ボルトに残滓が附着していたが、ボルト1本を抜いて見るだけで残滓の溜まり具合が簡単に判りそうだ。更にはその孔からパーツクリーナを吹込んだり、スポイトでガソリンを注入して内部清掃が出来そうだ。今後試してみたい。


これまでの作業によって、本機の一連の不調原因は、キャブレタ取付ガスケットの不良だったと結論付けた。勿論、更に自宅での点検は続ける。また、傷付いたピストンをそのまま組付けてあるので、これも近い内交換したいと考えている。

ガスケット失敗の項 終り



驚きの米国排気ガス問題
ふと、ネット検索していたところ、大変面白い情報を見つけた。

「アクアスクータは米国環境局EPAの排気ガス規制に適合しないので、現在販売ができない」というのだ。
輸入業者=R.S.W./D.I. Inc.(Aquascooter.com)が新品の販売をしていなかった理由が解った。 
元々、現行のキャブ HDA-233B型 は排気悪化を防ぐため L、Hネジを簡単には動かせぬ形状にし、特殊ねじ回しを専門業者だけに支給するという触込みだったようだ。しかし結局はそれぞれの製品に付属せざるを得なくなったらしい。それでも規制適合は巧く行かなかったということだろう。国内ではバイクの排気規制はあるが、小型エンジン機器の規制は私は知らない。   

ところが、それを解決するべくこの業者は、基準に適合する新規設計が可能かどうか、Northern Arizona University に研究委託をしたという。2014年から本年にかけて学生の研究主題として実施され、学内での発表も済ませている。

結果の信頼性は解らないが、結論としては2サイクルエンジンなら燃料噴射方式でないとEPAの規制に適合しない、或いは4サイクルエンジンでプロパンガスを使えば可能だ・・・・ということで、ホンダの25cc4サイクル汎用エンジンにLPG変換キットを組込んだ実験装置でデータを取っている。

こんな結果を参考にして、例えば当該業者がComer社に米国モデルを特注したりということが有得るのだろうか?数年後に本機の設計がガラッと変わることが有れば大変興味深い。
同大学のHPで一連の情報が発信されているから、
公式ページからAquascooter で検索すればCADによる構想意匠も見られる。
直接のURLはコピペで:
http://www.cefns.nau.edu/capstone/projects/ME/2015/Aquascooter2/PresAndReps.html



この項終り



その他情報

曳き紐位置
沈む=造波抵抗減る?

Blog第27回で曳航ロープの取付場所を変更した写真を投稿したが、その使用結果について:

尻曳きを使って、腕の力を抜いて運転してみたが、想定通り本機は少し沈んだ状態で進むようになる。スノーケルの取付ネジが5cm程水面下になっている。元々の排気バルブ式の場合は、余り沈めばバルブに掛かる水圧で排気抵抗が増えてしまう。しかし私のはホース排気にしてあるので、水圧には無関係だ。そして船で言うところの造波抵抗が減るから有利な筈だと考えた。更に、沈んでいれば空気を吸込難くなり、回転負荷の変動が少なく、滑らかな回転となる。

しかし、使い心地としては、私には何となく違和感があり、どうしたものかと迷いが続いている。
問題となったのは縛る時に感じたとおり、使った紐が細くブラブラして兎角あちこちレバーやらネジやらに引っ掛かることだ。これは針金にするなど、更に簡単に改造する積りだ。




アクセルレバーの改造
Blog第18回でアクセル固定金具は以前紹介したが、別の形式もYouTubeにあるので一応紹介:

これは手を離して運転可能だが、レバーをぶつけるとどうなるか?
Aquascooter AS650 CE ACCELERATOR LEVER
https://www.youtube.com/watch?v=0xJeB2-RSqA

こちらは自転車ブレーキレバーの流用 ワイヤが錆びない様注意が必要だ
Modifica acceleratore gas as650 supermagnum comer
https://www.youtube.com/watch?v=B0OSiQYl5Ts




キャブ解説動画
Walbro社の技師がキャブの解説をしている動画があった。同社で販売している専用工具の使い方も判る。
Walbro Carburetor Service
https://www.youtube.com/watch?v=cDaOcNrS6BM


国内の諸兄にも、有用な情報を更にネットで提供して戴きたいと切に願っています。


今後は2月に小笠原方面へ遠征の積りです。それまでは特段の情報が無ければ本Blogの更新は休みます。
以上


Blog第30回 キャブガスケット大失敗、米国排気規制事情、他 
終り =小坂夏樹=