Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第21回 エアタンクとスノーケル改造&また水没整備=小坂夏樹=Modify Air Tank & Snorkel

2015年05月31日 | マニュアル
2015年5月は離島への遠征が台風で流れ、その後も黒潮大蛇行による冷水塊で魚突きは出来ず、作業結果の紹介だけの月例ブログとなってしまった。


1、エアタンクの改造

魚を突き、さあ始動という時にいつも気になるのは、その間に浮かべていた本機に浸水していないかと言う事だ。初期の経験だが、前部がいつもより沈んでいて、タンクの大量浸水に気付いたことがある。そのまま始動ロープを引けばエンジン内部に浸水するところだった。このような浸水が、外からすぐ確認できればトラブルをかなり減らせるのではないだろうか。

そもそもエアタンク/燃料タンクを透明素材で、所謂スケルトンに製造してくれれば浸水を始め色々な意味で非常に安心感がある。スタータ部も同様だ。そこで、ふとした思い付きでエアタンクにのぞき窓を付けることにした。
エアタンクの素材はABSか塩ビか何か?私には解らないが、常用しているエポキシでは接着が難しい。しかし最近多用しているボンドSUを試したところ、うまく出来ることが分かった。そこで、耐ガソリン性を考慮してポリカーボネート板をタンクに開けた丸穴にはめ込んで接着することにした。失敗したら・・・・粘着テープで塞いで今迄通り使うつもりだ。


見易いように大きく切開きたいが、そのせいでタンクに歪が出ても困るので、今回は20φの穴を開けた。内側に梁などの無い場所を選んである。小さ過ぎて内部が見え難そうだが、必要なら大きくしたり、数を増やすことも考えたい。
また、浸水時に判り易いようなるべく低い位置に開けてしまったが、窓材を接着することを考えると、中央にした方が安心だ。


ポリカーボネートの4ミリ板を40φに切り取り、ベビー旋盤で窓部の20φを残して薄く削った。それをタンクのカーブに合せるべく、火で焙って少しカーブさせ、ボンドSUで接着した。
強く押へて接着すると後で剥がれる方向に力が掛かると思い、ふわりと、多量のボンドで浮かせたような接着だ。接着剤は薄く使うのが鉄則だが、この弾性材なら大丈夫ではないかと思っている。今のところ接着はうまくできたが、海での耐久性は判らない。

試作だからと自分に言い訳しながら、見た目は考えず、補強と耐衝撃の目的で、常用している発泡両面ゴムテープを貼付てみた。



これですぐに海での使用感を試す予定・・・・本年は黒潮大蛇行が続いて伊豆七島は冷水塊に覆われていたが、5月も末に来てやっと脱したようなので、この直後の遠征に期待が出来る。

なお、もっと大きくしっかりした窓にするために、楕円形などに穴開けすれば、内側に枠を入れたりということが出来る。そうすればシールと窓を接着・ネジ止して安心できるものが出来るだろう。そんな形なら歪も抑へられるから、タンク上部を大きく透明構造にして構わないかもしれない。




2、スノーケルの改造

スノーケルが緩んでエアタンクへ浸水することが時々ある。その対策としてイタリアでOリングを介した改造スノーケルが提唱され、既に販売もされているので、私も真似をしようと準備中だ。スノーケル接続口の内側にOリングが接触することで水密となるので、縁が凸凹と傷付いても大丈夫そうに見える。
私の初見は PescaSubApneaのフォーラムに fa.bio氏 の名前で投稿された、3重にOリングを噛ませたもので、こんなに厳重にするのかと驚いたものだった。無断で紹介してしまうと:


これに対し最近は簡略化したものが紹介されている:
例えば、以前紹介した Lorenzo 氏の Youtube動画 「Aquascooter Lorenzo77」の2分2秒目に、彼の手作り品が紹介されている。
(https://www.youtube.com/watch?v=i8rhoGB7qJg)



それと思しきものを2015年5月現在 Aquascooter Land という業者ページの ACCESSORI=アクセサリの部で販売している。
(http://www.aquascooterland.it/featured_products.php)
しかし止めネジは自分でオリジナルのスノーケルから取外すかキャップのみ部品で購入して改造するのだという。

余談だが、この業者のページは最近新設したようで、現在のところ海外販売はしない積りか、外国住所では売買登録ができない。また、上記の Lorenzo氏の動画を開くと 元アドレス?として Aquascooter Land のアドレスが表示されているので、それ自体が同氏も係ったある種PR目的の動画なのかもしれない。



試作

さて私も試作・・・・真似して作ろうと考え、まずスノーケルの構造とエアタンク捻込口を見ると、こんな状態になっている。

このスノーケルは当初からキャップが抜けてきてしまうものだが、今回の検討には好都合だった。

ゴムパッキングが固くて薄いものなので、ねじ込んだ時にタンク口との密着があまり良くない。
このパッキングを柔軟性のある、密着性の高い材料に交換するだけでも浸水の可能性が減少するかもしれない。
また、パッキングの嵌っていた部分を少々改造するだけでOリング防水式への改造が出来そうな気もする。

タンク口=スノーケルねじ込み部の構造

これはタンク口をノギスで測ったもので、精度は高くないので、現物合わせで作業する。
(CADソフトは恥ずかしながら使いこなせてないので、速く出来る手描で表示)


元々の素材と同様な、塩ビパイプを削るか、そうした部材を接着すればすぐ作れそうだが、適当な材料が見当たらない。
結局、仲間に貰った手持の真鍮棒を削って作ることにした。これでは始めから過剰品質だろうし、材料がひどく無駄になるが、まあ素人仕事はこんなもの。太い丸太を削って爪楊枝を1本作るような気分だ。
形としては、パイプに鍔をつけてそれをエアタンクキャップで締め付けるだけだが、Oリングはどう選定したらよいやら、身近に尋ねる人もなく、計算方式なども知らないので、市販品の太さと内外径を調べて何種類か購入することになってしまった。


無垢材を削り、後で貫通孔を開けることにした。
鍔は30φ 下部はタンク孔に合せて24φ、上部はキャップを通すために22φとした。長さは適当に手持材に合せたもの。上部にスノーケル延長パイプを嵌める積りで削ったのだが、延長パイプの根元内径は約21φなので、あとでそれに合わせてまた削ることになってしまった。

なお、スノーケルを支えるのは、鍔をキャップの締付でタンク口に押付ける力だけなので、下部のパイプをこのように長くする意味はない。今回は単に上記の例を真似たもので、また場合によっては、2番目のOリングを下部に嵌めることを考えた次第だ。



キャップは既存のスノーケルから外したものだが、中心の孔は22φで、内側に縁が設けてあるから穴を拡げて大きくすることは避けた。





計算間違えで購入してしまったP-21という、太さ2.4mm 内径20.8mm のOリングにシリコーングリスを塗り、試しに嵌めてみる。



少し抵抗があって丁度良い感じにキャップで締付が可能


キャップを外してみると、ぴったり納まり、これでいけてしまうではないか・・・・・



しかし、Oリングはタンクの口より低い位置にあるので、これでは上下の押えが効かない。やはり正しいサイズはこれではないと判る。
太さが3.5mmのもので内径18~21mmのOリングが必要で、それに合わせて21φ程度のリング溝を付けることが必要だと目星を付けた。

別案としては、鍔の下側を更に削って段差を付け、タンク口の中に1mm程侵入するようにすれば、Oリングを押えることが出来そうだ。




Oリングの調子を見た上で肉抜をして仕上げる。
何の訓練も受けたことのない素人作業なので、笑われそうだ。
こんな非力なベビー旋盤でも特殊鋼を使ったチョキ銛を作ったりと便利に使用している。



写真上:何度か試し削りして、21.5ミリ径 x 3.5ミリ幅のOリング溝とした。
写真下:仲間に試用してもらう分も作っていたのだが、うっかり旋盤のダイアルを進め過ぎてしまい、仕上げの削り過ぎでオシャカになってしまった。真鍮は軟らかいので削り過ぎに要注意だ。




線径3.5ミリ内径20ミリのOリングを嵌めてどうやらタンク口にきっちり合う。



上部は22φから21.5φに削り、購入時に付属していたスノーケル延長パイプを差込んで弾性エポキシで接着 
ぴったり合わせるには、パイプを加熱しながら差込んでしまえばよい。かなり大雑把に作業したが、しっかり固定できた。


出来上がり 

AS650に取付け、空気圧を掛けてテストした限りでは、漏れはないようだ。ただ、キャップが上下に動ける余裕を殆ど作らなかったため、Oリングの交換などはやりにくい。次の機会には改善を要する。

以上の改造で、Oリングの耐久性と機械的な適合性を、この直後の遠征で確かめる積りだ。あまり無理に押込んだ状態だと取付口が広がったり、割れることもあるのではないかとの心配もある。


(こんな改造に手間取ってしまったが、今になって水道配管用の塩ビパイプ+ソケットなど接続部材を接着して削れば、鍔もOリング溝もあっという間に完成しそうな気がしている。)




3、また水没後の整備




離島に住む仲間が、大きめと言っても15kg級のカンパチにスーパーマグナムを引き込まれて水没してしまった。かねてよりブギボードや大きめの浮きを併用するよう勧めているのだが、2リットル程度のボンテン=浮力は2kg=しか使わないから、うっかりロープを手離せばすぐに引き込まれてしまう。

以前紹介した、「軍艦島」の写真家柿田清英氏は、スノーケルの根元に水道用のバルブを取付ていた。余裕があればバルブを閉じて魚突きをすれば安心だろう

マニュアル通り排水処置をして水槽での運転をし、問題無としてその後も2回使用したが、だんだん調子が悪くなり、2週間経ったところで様子を見たのだという。

このスーパーマグナムはキャブの整備をしたあと14か月間、週末の土日にほぼ必ず1時間程度使用したので、約100時間運転した計算になる。


以下仲間の整備作業を紹介する:

本機をばらしてみたところ、
スタータ・高圧部には浸水無し
クランク室に少し水分
クランクのカウンターウエイト錆
ベアリングは大端部、小端部共に問題無し
シリンダ内壁のニッケルメッキ部にぽつぽつと1~2mmφの剥がれあり触ればざらざらする
プロペラシャフト側メインベアリング~プロペラのグリスは水分で白濁気味で、プロペラシールから海水が浸入していたらしい
チョークバルブの弁



調子が悪くなった原因はクランク室の水分かと考えられるが、シリンダ壁のめっきの剥がれは圧縮漏れが生じて出力が減少する可能性大なので気になる。海水では錆び難い筈だが塩の結晶で傷付いたのだろうか。




この写真を見るとカウンタウエイトに、海水に浸かっていた塩結晶と錆が発生している。随分急速に錆びるものだと驚いた。
メインシャフトは錆びているわけでなく、分解時にグリスが付着しただけ。



シリンダ内壁は(後ピン状態で)見辛いが、斑点状の剥がれがある



ベアリング/シール類だが、写真左が前側で元のグリスが残留している。右が後側=プロペラ側のもので残留グリスの状態がかなり違う



プロペラ側のベアリングなどのグリスは海水が混ざって白濁(現実には薄茶色)した状態だ。2重のプロペラシールの間も同様なのでプロペラシャフトから浸水していると思われるが、クランク室からメインシール経由で浸水した可能性も否定はできない。シャフトも錆びてざらついている。

こんな状況を見ると、正常に使へる場合も特にプロペラシャフトからの浸水は疑った方が良さそうだ。分解掃除は適宜実施した方が良い。


高圧部は問題なし。

キャブレタは1年以上使ったにも拘らず、流量調整膜(ダイアフラム)もポンプ膜も見たところ問題なく、ごみの清掃のみで再使用した。

点火プラグは当初からデンソープラチナプラグを使ってきたが、写真はパーツクリーナを噴射掃除しただけの状態
下の新品と比べると中心電極は変わらないが、接地電極が痩せているのが解る。





再組立

部品は、ベアリングはコンロッド大端部以外は全部新替した。全部国内で安価に入手できるものばかりだったが、プロペラベアリングの内輪だけは同じものが見当たらず、傷んでいたが旧品をそのまま使った。前にも触れたが、大端部ベアリングの交換は至難の業??と感じられ、クランクシャフトセット(assembly)としての新替が普通らしい。
オイル/ウオーターシールは特に傷んでいた訳ではないが交換した。




以前圧縮比を計測したことがあり、新品状態のスーパーマグナムは1.1MPa(≒11kg)以上だった。今回の再組立後は この写真の様に1MPa表示されたが、これはシリンダ内にたっぷりオイルを入れて測ったもので、現実に始動させた後は0.9MPa(≒9kg)台と予想通り低下している。



圧縮低下はシリンダ内壁が荒れていたりすれば当然だろう。但しロープを引いた時の手応えは変わらない印象だ。


なお、本機のエア/燃料タンクは燃料量が良く見えるAS600形のものと交換してある。色が褪せて益々観易くなった。




念の為に当時比較のために計測した、別の仲間が使用中のAS650では 0.7MPa(≒7kg)であり、スーパーマグナムはやはり高圧縮になっている。




整備が済んだこのスーパーマグナムは好調で、圧縮比が低下して力が弱くなったような印象は無いという。
 



Blog第21回「エアタンクとスノーケル改造 & また水没整備」 終り


次回は6月末または7月初めの投稿予定で、今回の改造品の実使用結果も紹介する予定です。 以上

150608 誤字訂正しました = 小坂夏樹 =